●高崎「suiran」
西口に出て空中歩廊から北側に下り、線路沿いを心掛けて北に進み、ビルの間を歩いて行く。二つめの交差点で西に進路を採り、ひとつ大きな通りを越すと、街は日常的に古びて来る。『田町交差点』を越え『鞘町交差点』に至ると、もはや時代と街から取り残された巨大アーケード商店街『中央ぎんざ』が、異空間となって大きな口をパッカリと開いている。道幅は広いが人影は疎らで、開いているお店も半分以下の心ざわめく光景が、北に長く長く続いて行く。キョロキョロしながら『中央銀座3番街』~『2番街』と順調に遡って行くと、アーケードの切れ目手前左手に、長らく高崎の街に教養と娯楽を提供して来たと思われる、古色を帯びた新刊書店『天華堂書店』を発見。岩波文庫&新書を多く取り揃えた真っ当な街の本屋さんであるが、目的はここの二階にあり、そのお店の木の立看板が表にしっかりと出されている。「suiran」は、北関東エリアの雑貨店やファッション店で、そのお店に合った古本を揃えて委託販売を行っているのだが、一月からこの書店の二階を間借りし、倉庫兼事務所兼店舗を開設したのである。つまりは、新刊書店二階の古本屋さん!左側の入口から入り、左壁に張り付いた古いががっしりした階段で二階へ。踊り場で右に折れ、広いフロアにたどり着くと、空いた造り付けの本棚と白布が目立っている。以前は売場だったのだろうが、今は半ば倉庫のような空間。しかし表から見て左奥角に、しっかりと壁棚に本を揃え、白木の長いテーブルを赤いリノリウム床に置いたスペースがあり、そこが目指す「suiran」であった。座ってパソコンに向かっていた加瀬亮タイプの青年店主が「いらっしゃいませ」と白い歯をこぼす。「ここが古本屋さんなんですか?」と問うと、さらに笑顔を輝かせ「はい、そうです!」。実は「suiran」さんとは、以前東川口の委託販売店のひとつを訪れた時(2012/10/07参照)に、メールをいただいたことがあったので、早々と名乗りを上げることにする。すると彼はおもむろに立ち上がり、後ずさり、口を押さえ、驚愕!そのリアクションに、恐縮です!壁棚には、ちょっと古めのセレクト文庫・新書・児童文学・美術・音楽・旅・紀行・冒険・山岳&登山・日本文学・海外文学が、緩やかに混ざり合って並ぶ。テーブルでは、大判美術本や絵本がフレームラックに挿さっている。水準のラインは設定されているが、在庫と委託販売から戻って来た本が融合している模様。時に古書と変な本あり。実業之日本社「マッチ棒クイズ/栗田常雄」を購入しつつ、高崎と言う街での古本屋稼業について、ちょっとお話し。この地で若い人たちに、ブックオフとはまた違った価値観で、古本に触れる喜びを知ってもらいたいこと。この間借りしている書店も含め、本をコミュニケーションツールとして、群馬の人々とつながって行くことなど…。焦らず、ゆっくり、地道にと、笑顔を絶やさずそんな志を、うらぶれた書店の二階で、蛍光灯の光の下で聞き入る。長く楽しく活動を続けられることを願い、再訪を誓って辞去。階段を下り、一階の書店で交通新聞社新書「思い出の省線電車/沢柳健一」を購入し、微力ながら大家さんにも小さなエールを送る。
●高崎「文京堂」
ここまで来たからには、当然他の古本屋さんも巡るつもりでアーケードから脱出し、明るく新しい商店街を南へ歩く。確かこの辺りの横道に一軒…おや?新しい古本屋さんが…違う!「文京堂」(2009/02/07参照)がお店を建て替えたんだ!と大いに驚く。新建材の住宅兼店舗で、一階のピロティガレージ奥に、以前よりだいぶ小さくなったお店が、ちんまりと存在している。店頭には雑誌ラックがあり、中央に小さな100均文庫&ノベルスの箱が二つ置かれている。店内は整頓されてはいるが、本が溢れ気味な楽しい状態。左右は造り付けの壁棚で、腰高の薄い平台付き。真ん中には背中合わせの棚が一本置かれ、こちらも平台が付属している。左右の通路は、奥の帳場前でも入口側でもちゃんと行き来が可能になっている。そして帳場では、動かぬ老店主がご健在!相変わらず座禅瞑想中の如き、俗世間から離脱した佇まいを見せている。左壁は戦争・実用・映画・日本文学・みやま文庫・高崎&前橋&群馬郷土本が並び、奥の帳場脇には本の山によって手の届かぬ官能文庫&エロ棚が見えている。平台には未整理本や様々な単行本が混在し、その下には大判本がズラズラと収まっている。向いはミステリ&エンタメ・ノベルス・日本文学・時代劇文庫を揃え、反対側に一般文庫・新書・岩波文庫、それに平台にアダルト雑誌を備える。右壁はコミック・宗教・歴史・自然が並んでいる。古い本はほとんどないが、雑本的で安値なので、大いに探す楽しみあり。あっという間に四冊の単行本を抱え込むと、老店主は大玉のそろばんで計算し、八曜社「明日に向かって走れ/吉田拓郎」偕成社「黒猫/原作ポー 大林清」ポピュラーブックス「白妖鬼/高木彬光」大陸書房「林与一の霊運をつかむ術」(霊界と時代劇界を絡めた素っ頓狂な本!)を計750円で購入する。ご店主、いつまでもお元気で、古本屋稼業を続けて下さい!
「みやま書店」(2009/02/07参照)にも行ってみるが、残念ながら今日はお休み。それにしても、古い書店の二階に出来た新しい古本屋さんと、新しく店舗を建て替えた古い古本屋さん…古い皮袋に新しい酒が入り、新しい皮袋に古い酒が入ったと言うわけか…。様々なカタチで、今日も愛しい古本屋さんは、生き延びているのである!
素晴らしい来店コメントありがとうございます。当店の雑多な本の並び方がこのような種別で並べてあるとは、息子の私がわかっておりませんでした。勉強になりました。
さて、父も齢90歳を超え、大玉のそろばんを使っても釣銭勘定がままならなくなりました。今までたくさんのお客様に助けられて店を続けてこられましたが、そろそろ潮時かと考えています。
この投稿を今日見つけたことに驚いています。たまたま店名で検索してみただけなのに、当店を囲む方々がいらっしゃることに気づかせていただき本当に感謝いたします。
これからも、たくさんの古本屋さんを訪問してあげてください。
ありがとうございました。。敬具