私(岡田)は春に初めての妊娠がわかり、来年の春の入園に向けて「保活」を始めました。認可保育園に入るには順位をつけて希望の保育園を書き、自治体に申し込みます。
この時、選考の基準となるのが、“ポイント”や”指数”と呼ばれる世帯の持ち点。持ち点が高いほど保育園には入りやすくなります。わが家は何点なのか? 区のホームページで調べると、「夫婦がフルタイム就労」で40点、「育休中」で2点など、合計で44点。この点数で入園が選考されます。
保活で見えた「情報格差」
今月1日、発表された待機児童数は全国で2万6000人。厳しい状況が続く中、少しでも入園できる可能性を高めようと懸命に「保活」に励む保護者が多いと思います。しかし、初めての保活で感じたのは深刻な「情報格差」でした。
(ネットワーク報道部記者 岡田真理紗 飯田暁子)
(ネットワーク報道部記者 岡田真理紗 飯田暁子)
私(岡田)は春に初めての妊娠がわかり、来年の春の入園に向けて「保活」を始めました。認可保育園に入るには順位をつけて希望の保育園を書き、自治体に申し込みます。
この時、選考の基準となるのが、“ポイント”や”指数”と呼ばれる世帯の持ち点。持ち点が高いほど保育園には入りやすくなります。わが家は何点なのか? 区のホームページで調べると、「夫婦がフルタイム就労」で40点、「育休中」で2点など、合計で44点。この点数で入園が選考されます。
この時、選考の基準となるのが、“ポイント”や”指数”と呼ばれる世帯の持ち点。持ち点が高いほど保育園には入りやすくなります。わが家は何点なのか? 区のホームページで調べると、「夫婦がフルタイム就労」で40点、「育休中」で2点など、合計で44点。この点数で入園が選考されます。
私は44点
私(岡田)は春に初めての妊娠がわかり、来年の春の入園に向けて「保活」を始めました。認可保育園に入るには順位をつけて希望の保育園を書き、自治体に申し込みます。
この時、選考の基準となるのが、“ポイント”や”指数”と呼ばれる世帯の持ち点。持ち点が高いほど保育園には入りやすくなります。わが家は何点なのか? 区のホームページで調べると、「夫婦がフルタイム就労」で40点、「育休中」で2点など、合計で44点。この点数で入園が選考されます。
この時、選考の基準となるのが、“ポイント”や”指数”と呼ばれる世帯の持ち点。持ち点が高いほど保育園には入りやすくなります。わが家は何点なのか? 区のホームページで調べると、「夫婦がフルタイム就労」で40点、「育休中」で2点など、合計で44点。この点数で入園が選考されます。
書き留めたノート
では、自宅の近くの保育園は何点で入れるのだろう?
区のホームページで探しましたが情報が見つかりません。そこで平日に時間を取って役所の窓口に行きました。窓口で聞くと、前回、保育園ごとに最低、何点あれば入れたのか、その一覧表を見せてくれました。
区のホームページで探しましたが情報が見つかりません。そこで平日に時間を取って役所の窓口に行きました。窓口で聞くと、前回、保育園ごとに最低、何点あれば入れたのか、その一覧表を見せてくれました。
しかしスマホで写真を撮るのはダメとのこと。仕方なく保育園ごとにすべてノートに手で書き写すことにしました。眺めてみるとほとんどが44点。さらに点数が高いところは46点。これを知らずに点数が高い園を希望すると「保育園落ちた」になるところでした。
私は窓口で情報を入手できましたが、平日に仕事を休みにくかったり子どもが小さく外出できなかったりと、役所に行くのが難しい人は情報にアクセスできないと感じました。
私は窓口で情報を入手できましたが、平日に仕事を休みにくかったり子どもが小さく外出できなかったりと、役所に行くのが難しい人は情報にアクセスできないと感じました。
さて同点の場合は?
私は44点で、ほかの希望者と同点でボーダーラインに並ぶ可能性が高いことがわかりました。その場合、「同一点数の場合の優先順位」という12の項目が決められていました。
実際に差がつくことが多い項目はどれなのか。窓口で聞くと、まず差がつくのが「認可外保育園などに預けてすでに復職している」というもの。そして、そこで差がつかなかった場合は「居住年数が1日でも長い世帯を優先する」という項目でした。
でもこの項目はことし4月に設けられたもので、これを知らずに、「保活」直前で引っ越してきた人は不利になります。
実際に差がつくことが多い項目はどれなのか。窓口で聞くと、まず差がつくのが「認可外保育園などに預けてすでに復職している」というもの。そして、そこで差がつかなかった場合は「居住年数が1日でも長い世帯を優先する」という項目でした。
でもこの項目はことし4月に設けられたもので、これを知らずに、「保活」直前で引っ越してきた人は不利になります。
国の調査でも「情報収集 大変」
実は国の調査でも「保活の情報収集の大変さ」が指摘されていました。去年7月に発表されたもので、回答したのは保活を経験したおよそ5500人。このうち「保活で苦労や負担を感じた」人はおよそ4700人。
どんな点に苦労や負担を感じたかについて、最も多かったのは「役所に何度も足を運ばなければならなかった」、次いで「情報の収集方法がわからなかった」です。
自由記述には「案内の書類を読んでも注意書きが多すぎて自分が何点なのか確信が持てない」といったものがありました。“情報があったとしても内容がわかりにくい”という意見です。
どんな点に苦労や負担を感じたかについて、最も多かったのは「役所に何度も足を運ばなければならなかった」、次いで「情報の収集方法がわからなかった」です。
自由記述には「案内の書類を読んでも注意書きが多すぎて自分が何点なのか確信が持てない」といったものがありました。“情報があったとしても内容がわかりにくい”という意見です。
注意書きがわからない
保活で同じような思いをしたのが都内に住む西本佐保さんです。5歳と3歳の2人の子どもがいます。「保活の書類は注意書きが多く、とにかくわかりにくい」と言います。
初めての保活は5年前。0歳児なら入れるだろうとみていたのが甘かったという西本さん。途中で、自宅周辺がまさに激戦区と気付きました。慌てて自分たちの点数を計算しようと書類を見ましたが、「○○の場合のみ加算する」「○○の場合は加算対象外とする」「ただし○○の場合は○○で認定する」など、注意書きのオンパレード。自分の計算が正しいのか自信が持てませんでした。
また何点で入園できたのか、公表されていないので、西本さんも区に問い合わせ、入園できた点数の一覧表を作りました。この時の保活では、結局認可保育園に入れず、その反省から3年前に2人目を出産する時には、妊娠中から新しい基準表を熟読。認可外の保育園に預けているとポイントが加点されることがわかり、入園の前の年に認可外の保育園に子どもを預ける“作戦”を取り、なんとか入園できました。
西本さんは「個人の情報収集能力に任せるのではなく行政がもっと情報を示してくれたら」と話していました。
初めての保活は5年前。0歳児なら入れるだろうとみていたのが甘かったという西本さん。途中で、自宅周辺がまさに激戦区と気付きました。慌てて自分たちの点数を計算しようと書類を見ましたが、「○○の場合のみ加算する」「○○の場合は加算対象外とする」「ただし○○の場合は○○で認定する」など、注意書きのオンパレード。自分の計算が正しいのか自信が持てませんでした。
また何点で入園できたのか、公表されていないので、西本さんも区に問い合わせ、入園できた点数の一覧表を作りました。この時の保活では、結局認可保育園に入れず、その反省から3年前に2人目を出産する時には、妊娠中から新しい基準表を熟読。認可外の保育園に預けているとポイントが加点されることがわかり、入園の前の年に認可外の保育園に子どもを預ける“作戦”を取り、なんとか入園できました。
西本さんは「個人の情報収集能力に任せるのではなく行政がもっと情報を示してくれたら」と話していました。
情報公開格差
では実際、保活の大激戦区の東京23区でこうした情報がどこまで公開されているのか、調べてみました。まず「同じ点数で並んだとき、どの世帯を優先するか」についてです。
「この基準で順番に決定します」と公表しているのが18の区。「以下の基準から総合的に判断します」と順番を公表していないのが5つの区でした。
次に「保育園ごとの最低入園点数の公開」です。
11の区がインターネットで公開。「窓口に来たり電話で問い合わせた人にだけ教えている」のは8つの区。また、問い合わせがあっても伝えていないという区も4つありました。
なぜ公表しないのかについては、「入園できた人の点数から、ひとり親世帯などの家庭環境が類推できてしまうから」と、個人情報の保護を理由に挙げる区がほとんどでした。
なぜ公表しないのかについては、「入園できた人の点数から、ひとり親世帯などの家庭環境が類推できてしまうから」と、個人情報の保護を理由に挙げる区がほとんどでした。
情報格差は無駄なコスト
保活に関する情報公開について、保育行政の研究をしている日本総研の池本美香主任研究員は「情報収集に力を割けるかどうかで入園に関わる格差が生まれている。自治体は、窓口に来てほしいと安易に言う前に、誰が見てもわかる資料をインターネットで公開することにコストをかけるべきだ」。そして「“同じことを何度も説明する職員の時間”と、“窓口を訪れないといけない人の時間”、それが無駄なコストになっているという認識が必要」とも話していました。
誰にでも平等に、そしてわかりやすい情報を
待機児童が2万人を超える中で、どの世帯の子どもが入園できるのかの選考基準は自治体によって異なり、さらには同じ自治体でも年度ごとに基準が変更されている実態があります。正確な情報もつかみづらく、情報格差を生んでしまう状況では、不確かな情報に振り回され、必要以上に疲弊している保護者も多いのではないかと感じました。
家庭と行政、両者ともに無駄な負担を減らすためにできることがあるのではないでしょうか。
家庭と行政、両者ともに無駄な負担を減らすためにできることがあるのではないでしょうか。
News Up 保活で見えた「情報格差」
今月1日、発表された待機児童数は全国で2万6000人。厳しい状況が続く中、少しでも入園できる可能性を高めようと懸命に「保活」に励む保護者が多いと思います。しかし、初めての保活で感じたのは深刻な「情報格差」でした。
(ネットワーク報道部記者 岡田真理紗 飯田暁子)
私は44点
書き留めたノート
では、自宅の近くの保育園は何点で入れるのだろう?
区のホームページで探しましたが情報が見つかりません。そこで平日に時間を取って役所の窓口に行きました。窓口で聞くと、前回、保育園ごとに最低、何点あれば入れたのか、その一覧表を見せてくれました。
区のホームページで探しましたが情報が見つかりません。そこで平日に時間を取って役所の窓口に行きました。窓口で聞くと、前回、保育園ごとに最低、何点あれば入れたのか、その一覧表を見せてくれました。
しかしスマホで写真を撮るのはダメとのこと。仕方なく保育園ごとにすべてノートに手で書き写すことにしました。眺めてみるとほとんどが44点。さらに点数が高いところは46点。これを知らずに点数が高い園を希望すると「保育園落ちた」になるところでした。
私は窓口で情報を入手できましたが、平日に仕事を休みにくかったり子どもが小さく外出できなかったりと、役所に行くのが難しい人は情報にアクセスできないと感じました。
私は窓口で情報を入手できましたが、平日に仕事を休みにくかったり子どもが小さく外出できなかったりと、役所に行くのが難しい人は情報にアクセスできないと感じました。
さて同点の場合は?
私は44点で、ほかの希望者と同点でボーダーラインに並ぶ可能性が高いことがわかりました。その場合、「同一点数の場合の優先順位」という12の項目が決められていました。
実際に差がつくことが多い項目はどれなのか。窓口で聞くと、まず差がつくのが「認可外保育園などに預けてすでに復職している」というもの。そして、そこで差がつかなかった場合は「居住年数が1日でも長い世帯を優先する」という項目でした。
でもこの項目はことし4月に設けられたもので、これを知らずに、「保活」直前で引っ越してきた人は不利になります。
実際に差がつくことが多い項目はどれなのか。窓口で聞くと、まず差がつくのが「認可外保育園などに預けてすでに復職している」というもの。そして、そこで差がつかなかった場合は「居住年数が1日でも長い世帯を優先する」という項目でした。
でもこの項目はことし4月に設けられたもので、これを知らずに、「保活」直前で引っ越してきた人は不利になります。
国の調査でも「情報収集 大変」
実は国の調査でも「保活の情報収集の大変さ」が指摘されていました。去年7月に発表されたもので、回答したのは保活を経験したおよそ5500人。このうち「保活で苦労や負担を感じた」人はおよそ4700人。
どんな点に苦労や負担を感じたかについて、最も多かったのは「役所に何度も足を運ばなければならなかった」、次いで「情報の収集方法がわからなかった」です。
自由記述には「案内の書類を読んでも注意書きが多すぎて自分が何点なのか確信が持てない」といったものがありました。“情報があったとしても内容がわかりにくい”という意見です。
どんな点に苦労や負担を感じたかについて、最も多かったのは「役所に何度も足を運ばなければならなかった」、次いで「情報の収集方法がわからなかった」です。
自由記述には「案内の書類を読んでも注意書きが多すぎて自分が何点なのか確信が持てない」といったものがありました。“情報があったとしても内容がわかりにくい”という意見です。
注意書きがわからない
保活で同じような思いをしたのが都内に住む西本佐保さんです。5歳と3歳の2人の子どもがいます。「保活の書類は注意書きが多く、とにかくわかりにくい」と言います。
初めての保活は5年前。0歳児なら入れるだろうとみていたのが甘かったという西本さん。途中で、自宅周辺がまさに激戦区と気付きました。慌てて自分たちの点数を計算しようと書類を見ましたが、「○○の場合のみ加算する」「○○の場合は加算対象外とする」「ただし○○の場合は○○で認定する」など、注意書きのオンパレード。自分の計算が正しいのか自信が持てませんでした。
また何点で入園できたのか、公表されていないので、西本さんも区に問い合わせ、入園できた点数の一覧表を作りました。この時の保活では、結局認可保育園に入れず、その反省から3年前に2人目を出産する時には、妊娠中から新しい基準表を熟読。認可外の保育園に預けているとポイントが加点されることがわかり、入園の前の年に認可外の保育園に子どもを預ける“作戦”を取り、なんとか入園できました。
西本さんは「個人の情報収集能力に任せるのではなく行政がもっと情報を示してくれたら」と話していました。
初めての保活は5年前。0歳児なら入れるだろうとみていたのが甘かったという西本さん。途中で、自宅周辺がまさに激戦区と気付きました。慌てて自分たちの点数を計算しようと書類を見ましたが、「○○の場合のみ加算する」「○○の場合は加算対象外とする」「ただし○○の場合は○○で認定する」など、注意書きのオンパレード。自分の計算が正しいのか自信が持てませんでした。
また何点で入園できたのか、公表されていないので、西本さんも区に問い合わせ、入園できた点数の一覧表を作りました。この時の保活では、結局認可保育園に入れず、その反省から3年前に2人目を出産する時には、妊娠中から新しい基準表を熟読。認可外の保育園に預けているとポイントが加点されることがわかり、入園の前の年に認可外の保育園に子どもを預ける“作戦”を取り、なんとか入園できました。
西本さんは「個人の情報収集能力に任せるのではなく行政がもっと情報を示してくれたら」と話していました。
情報公開格差
では実際、保活の大激戦区の東京23区でこうした情報がどこまで公開されているのか、調べてみました。まず「同じ点数で並んだとき、どの世帯を優先するか」についてです。
「この基準で順番に決定します」と公表しているのが18の区。「以下の基準から総合的に判断します」と順番を公表していないのが5つの区でした。
次に「保育園ごとの最低入園点数の公開」です。
11の区がインターネットで公開。「窓口に来たり電話で問い合わせた人にだけ教えている」のは8つの区。また、問い合わせがあっても伝えていないという区も4つありました。
なぜ公表しないのかについては、「入園できた人の点数から、ひとり親世帯などの家庭環境が類推できてしまうから」と、個人情報の保護を理由に挙げる区がほとんどでした。
なぜ公表しないのかについては、「入園できた人の点数から、ひとり親世帯などの家庭環境が類推できてしまうから」と、個人情報の保護を理由に挙げる区がほとんどでした。
情報格差は無駄なコスト
保活に関する情報公開について、保育行政の研究をしている日本総研の池本美香主任研究員は「情報収集に力を割けるかどうかで入園に関わる格差が生まれている。自治体は、窓口に来てほしいと安易に言う前に、誰が見てもわかる資料をインターネットで公開することにコストをかけるべきだ」。そして「“同じことを何度も説明する職員の時間”と、“窓口を訪れないといけない人の時間”、それが無駄なコストになっているという認識が必要」とも話していました。
誰にでも平等に、そしてわかりやすい情報を
待機児童が2万人を超える中で、どの世帯の子どもが入園できるのかの選考基準は自治体によって異なり、さらには同じ自治体でも年度ごとに基準が変更されている実態があります。正確な情報もつかみづらく、情報格差を生んでしまう状況では、不確かな情報に振り回され、必要以上に疲弊している保護者も多いのではないかと感じました。
家庭と行政、両者ともに無駄な負担を減らすためにできることがあるのではないでしょうか。
家庭と行政、両者ともに無駄な負担を減らすためにできることがあるのではないでしょうか。