東京都品川区西五反田2-22-6
戦前、花街として数多くの芸者が行き交った町、五反田
今ではすっかり高層ビルが立ち並び、かつての面影はありませんが、大崎橋から目黒方面に目を向けるとひと際目立った建物がひっそりと佇んでいます。
昭和の匂いをどこかに残したその旅館は、海喜館(うみきかん)。
うっそうとした木々が入り口奥の建物を隠し、そこだけを見るとあたかも横溝正史の金田一耕助シリーズにでもでてきそうな不気味な雰囲気を醸し出しています。
植木が剪定されていないためか、成長しすぎて道路との境界のモルタル塀を傾かせています。一部は完全に塀がくずれてしまっていて、近寄らせないような処置も施されています。
こんな場所があの五反田にあるのかと思ってしまいますが実際にあるから面白い。
てっきり廃業しているのかと思いきや、東京都環境衛生協会に旅館として会員登録されています。女将は海老澤佐妃子さん。昭和50年に相続したそうです。
http://www.tokyo-kankyo.or.jp/?cat=4&paged=51
実はいま、不動産業界ではこの海喜館を巡って、大きな詐欺事件が発生したのではないかと一大騒動になっているのです。
大手の積水ハウスがこの物件を購入しようとし、売買代金70億円のうち63億円を支払ったところ、購入相手と連絡が取れなくなってしまったという事件です。
積水ハウスプレスリリース
当社が分譲マンション用地として購入した東京都内の不動産について、購入代金を支払った にもかかわらず、所有権移転登記を受けることができない事態が発生いたしました。
本件不動産の購入は、当社の契約相手先が所有者から購入後、直ちに当社へ転売する形式で 行いました。購入代金の決済日をもって、弁護士や司法書士による関与の下、所有者から契約 相手先を経て当社へ所有権を移転する一連の登記申請を行ったところ、所有者側の提出書類に 真正でないものが含まれていたことから当該登記申請が却下され、以降、所有者と連絡が取れ ない状況に至りました。
http://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2017/08/02/20170802.pdf
事件の経緯
売買契約が4月24日、その決済が6月1日。この日に代金の9割を支払い、残り1割はおそらく留保金扱いにして、所有権移転登記が完了したのを確認して1割払う約束だったのでしょう。
通常は登記移転を確認してから払う残金のほうを多めにしておいたほうが買い手からは安心感がありますが、この商談の場合、おそらく売り手の立場が強く、積水ハウスはどうしてもこの土地を欲しかったので、仮登記もできたため不利な条件を飲んだものと思います。
いずれにせよ、売り手が本当の所有者ではなく、仮登記もなぜかできてしまった点から売り手の地面師の巧妙な手口がわかります。おそるべし。
それにしてもこの海喜館。旅館としても実は営業をしているのですが、予約がなかなか取れないことで有名です。というか経営者がおそらく客をできるだけ泊めたくないという雰囲気のようです。
実際に宿泊した方のブログ
http://hanaiti.fc2web.com/060501.html
写真を拝借しました。朝食つきで6300円/泊のようです。
写真を見る限りかなり昭和感あふれるレトロな感じです。
こういう旅館は残しておくのもいいかもしれませんね。不動産会社の法律研修で使うのも一案かもしれません。