コンビニやアパレルの慣習にも要注意
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慣習になっている自腹にも、 違法になるケースがあります |
パターン4の
「備品、商品などの買い取り・負担」は、スタッフが業務上必要な備品を買い取らせるケースです。適切な手続きを踏んでいる場合、これ自体は違法ではありません。
具体的には、「労働契約を結ぶ」際に、労働条件の一部として、「負担させるべき食費や作業用品その他に関する事項」を労働者に明示することが必要です(労働基準法第15条、同施行規則第5条第1項第6号)。契約時に、「制服代は自己負担。辞める際は買い取り」などと伝えておけばいいのです。
後で「言った・言わない」の水掛け論にならないためにも、
労働条件通知書 や就業規則などの書面に明記しておきましょう。さらに、「就業規則を明示した証拠」を残しておくのがポイントです。
以上のような適法な手続きがあれば、スタッフに費用負担を求めることができます。ただ、それも「常識の範囲内」という前提があってこそ。スタッフが必要な分だけ、通常価格から割り引いた商品を販売すれば、福利厚生の一部として適法と判断される可能性はあるでしょう。しかし、アパレル業界でよく聞く「高額な服を毎月買い取らせる」のはアウト。
買い取り、つまり自腹はスタッフの完全な「自由意志」があって初めて成立します。ただ、この「自由意志」を客観的に証明するのは極めて難しい。このため、スタッフからの申し出がない限り、自社商品を販売するべきではありません。
また、常識を超える量の自社商品の販売は会社による強要が疑われます。強要に該当する場合、もし書面による確認書や契約書などがあってもその自腹は無効です。ブラックバイトとして非難されかねません。
自腹の強要は犯罪行為
ここまでの説明でおわかりだと思いますが、スタッフに自腹を切らせることは、よほどのことがない限り法律違反。さらに「自腹」の請求は往々にして違法、刑事処分を伴う犯罪行為になることも念頭に置き、自腹に頼らない経営や現場運営を心がけましょう。
これまで「自腹」の事態で企業側に悪影響が見られなかったのは、労働者側が拒否したり退職したりしにくい環境だったから。景気回復によって現場の人手不足がさらに進めば、企業には困難なシナリオが待ち構えています。
バイトスタッフの供給源となる若年層は、スマホからSNSや検索エンジンを駆使して、バイト先に関する情報をスピーディーに収集・拡散します。もし「自腹」を強要すれば、「ブラックバイト」としてSNSを通じて瞬時に広まり、まとめサイトなどバイラルメディアによって炎上することも……。
一度立ってしまった悪評は長く残り、その企業は求人に苦戦することになりかねません。最悪の場合、店長や求人担当者が「自腹」で現場の人手不足を穴埋めすることにもなりかねません。悪夢のシナリオを避けるためにも、バイトスタッフの「自腹」について正しい知識を持ち、慎重な対応を心がけましょう。
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