インディースタジオSOMGは8月29日、Steamで販売中のアドベンチャーゲーム『Strangers in a Strange Land』にアップデートを実施し、バグ修正などのほかに、Steamの規約を遵守するためにゲーム内の表現を修正したと発表した。
本作の主人公は18歳の大学生ビリー。彼は兄弟や婚約者、そして義理家族と共に継父が購入した農園を訪れるが、そこで奇妙な出来事に遭遇する。ゲームはポイント&クリック形式のアドベンチャーゲームで、いくつかのパズルを解きながら、その農園で密かにおこなわれているよからぬ計画の謎に迫っていく。と、ここまで聞くとごく普通のゲームのようだが、本作は性的なシーンを含む“エロティック・スリラー・アドベンチャーゲーム”であると謳い、18歳未満はお断りだとしている。
今回修正された表現は上の画像のような場面で、これまではすべて露になっていたところ「CENSORED(修正済み)」という“パッチ”が当てられるようになった。そしてSOMGは、従来のフルヌード表現を望むプレイヤーのために、外部サイトでの“無修正化パッチ”の配布を開始している(もともと“CENSORED”されていた部分も解禁となるのかどうかは不明)。1.8GBのZipファイルをダウンロードしてゲームフォルダに展開し、ニューゲームでゲームを始めるとパッチが適用される。注意点として、無修正化パッチ適用の有無に関わらず、これまでのバージョンでのセーブデータはロードできないとのことだ。
弊誌では先月、ホームパーティーシミュレーター『House Party』での事例を取り上げたが、本件はそれとよく似た状況だ(関連記事)。『House Party』もゲーム内の性的表現の修正をValveから求められ、修正アップデートと、無修正化パッチの外部サイトでの配布をおこなった。ただ、『House Party』は修正をおこなうまで販売停止措置を受けたが、『Strangers in a Strange Land』はこれまで継続して販売していたようだ。なにが両者への対応を分けたのかははっきりしない。
また、これも『House Party』の際に言及したが、Steamでは性的表現を含んでいても問題なく販売されているゲームが存在し、中には以前の『Strangers in a Strange Land』のように女性の乳首が露出しているものもある。ただ両者の違いは明確で、たとえば『The Witcher 3: Wild Hunt』のストア概要を見ると性的表現に関する説明は一切ないが、『House Party』や『Strangers in a Strange Land』では明言されている。もちろん18歳未満の子供に対する注意喚起ということもあるだろうが、それが逆にゲームのアピールとして機能している側面は否めない。SOMGは使用しているゲームエンジンのフォーラムに本作の発売を報告する際に、「Game includes lots of Nude/Sex scenes.(ゲームにはたくさんのヌード/セックスシーンが含まれています)」とSteamストアの表記よりも強調しており、アピールしたい要素の一つであったことがうかがえる。
Valveの、性的表現を“売り”にするゲームは認めないという立場は一貫しているようだが、一方で別の問題も見え隠れしている。つまり「過激な性的表現を含んでいても、黙っていればお咎めなしなのか?」ということだ。もちろん、明らかにポルノゲームである場合は事前あるいは事後に差し止められるだろうが、『House Party』や『Strangers in a Strange Land』の場合はどうだろうか。『House Party』を手がけるEek! Gamesは、同作はパズル要素やユーモアのある会話がメインのゲームプレイだと主張しており、『Strangers in a Strange Land』もゲームプレイの大半はヒントを探してパズルを解くアドベンチャーゲームだ。もし仮に、これらのゲームが性的表現を含むことをストアで特に言及していなかった場合、Valveは修正を求めただろうか。また、Eek! Gamesは『House Party』への抗議・批判がValveを動かしたのではないかと強い調子でコメントしていた。もしそうであるなら、規約を恣意的に運用していると言わざるを得ない。今回のような事例が積み重なってくると、いずれ抜け穴を突くようなゲームが登場し、Valveは対応に頭を悩ませることになるかもしれない。