
以前、bashスクリプトをテストする仕事に取り組んだことがあります。最初、Pythonユニットテストを使うことにしましたが、プロジェクトに外部技術を持ち込むのは気が進みませんでした。そこで、仕方なく、悪名高いbashで書かれたテスト用フレームワークを使いました。
既存ソリューションの概要
手に入るソリューションを探してGoogle検索しましたが、選択肢はほんの少ししかありませんでした。そのうちいくつかについて、詳しく見ていきましょう。
重要になるのは、どんな基準でしょうか?
- 依存関係:
bassのテスト用フレームワークを選ぶときに、python、luaなどのシステムパッケージも一緒に引きずり込むのは嫌ですね。 - インストールの難しさ:継続的な開発の実装とTravis CIでの継続的な統合も仕事の1つだったので、私にとってインストールにかかる時間と手間数が妥当だということは、重要でした。理想的な選択肢はパッケージマネージャで、許容できる選択肢は
git clone、wgetです。 - ドキュメンテーションとサポート:アプリケーションは複数の異なるUnixディストリビューションで実行できなければならないので、テストは、さまざまなプラットフォーム、シェル、それらの組み合わせを含めてどこででも、アップデートの速さに合わせて正常に働かなければならず、しかも、コミュニティやその他のユーザの経験から離れてのテストは望ましくありません。
- 何らかの形でのフィクスチャと、(少なくとも!)
setup()関数とteardown()関数が利用できること。 - 新しいテストを記述するための妥当な構文:
bashの世界では重要な必要条件です。 - 慣習的な結果:テストを行った回数、何が成功して何が成功しなかったか、(必須ではないが、望ましくは)何が起こったか。
assert.sh
最初に目にとまった選択肢はassert.hという小さなフレームワークでした。なかなか良いソリューションで、インストールと使い方が簡単です。最初のテストを記述するためには、test.shというファイルを作成する必要があります(下の例はドキュメンテーションから引用しました)。
- . assert.sh
- # `echo test` is expected to write "test" on stdout
- assert "echo test" "test"
- # `seq 3` is expected to print "1", "2" and "3" on different lines
- assert "seq 3" "1\n2\n3"
- # exit code of `true` is expected to be 0
- assert_raises "true"
- # exit code of `false` is expected to be 1
- assert_raises "false" 1
- # end of test suite
- assert_end examples
ファイルを記述したら、それを実行できます。
- $ ./tests.sh
- all 4 examples tests passed in 0.014s.
その他には、次のような利点があります。
- シンプルな構文と使い方
- 優良なドキュメンテーションと使用例
- 条件付きと条件無しのテストスキップが可能
- フェイルファスト(fail-fast)や全実行(run-all)が可能
- (フラグ-vを使えば)エラーの詳細を表示可能。初期設定では、どのテストが失敗しているか通知されません。
しかし、重大な欠点もいくつかあります。
- この記事の執筆時点では、Githubに「ビルド失敗」という赤いアイコンがあり、恐怖を感じました。
- このフレームワークは簡単な部類に入るように見えましたが、各テストのためにデータを準備して完了時に削除するための
setup()とteardown()のメソッドが欠如しています。 - ある1つのフォルダから全てのテストを実行させることはできません。
結論:基本的なshellスクリプト用のシンプルなテストを書く必要があるなら、お勧めできる良いツールです。複雑な仕事には向いていません。
shunit2
shunit2のインストールはassert.hほど簡単ではありません。私は適切なリポジトリを見つけることができませんでした。Google Codeにいくつか、Githubにも少数のプロジェクトがあり、3年から5年前にいろいろな段階で放置されています。さらに、svnリポジトリもいくつかあります。したがって、どのリリースが最新で、どうやってダウンロードするのかを知ることは不可能です。でも、それは大した不便ではありません。
テストはどのようなものでしょうか? 次の例は、ドキュメンテーションからの引用です。
- testAdding()
- {
- result=`expr 1 + 2`
- assertEquals \
- "the result of '${result}' was wrong" \
- 3 "${result}"
- }
これを実行させます。
- /bin/bash math_test.sh testAdding
- Ran 1 test.
- OK
このフレームワークは、このクラスなりのいくつかの独自機能を誇ります。
- コード内にテストスイートを作成可能です。この機能は、ある種のプラットフォームまたはシェルのためのテストがあるときには便利です。この場合、
zsh_やdebian_などの自分専用の名前空間を使うことができます。 - 各テストについて実行できる
setUp関数とteardown関数、テストセッションの最初と最後に実行できるoneTimeSetUpとoneTimeTearDownがあります。 - さまざまなアサートを幅広く選択でき、
${_ASSERT_EQUALS_}を使ってテストが失敗したラインの数を入力することが可能。ただし、ラインのナンバリングがサポートされているシェル(bash(>=3.0)、ksh、pdksh、zsh)でのみ有効です。 - テストをスキップすることができます。
それでもなお、下記のような非常に不利な点がいくつかあったことで、結局は選択肢から消えました。
- プロジェクトがほとんど放置されています。
- 上記の点から、何をインストールすべきかの判断が困難。直近のリリースは2011年のようです。
- 機能の数が過剰気味。例えば、等式の確認に、
assertEqualsとassertSameの2つの方法が存在します。信じられません。 - フォルダから全ファイルを実行することができません。
結論: 本格的なツール。十分柔軟にセットアップでき、プロジェクトに不可欠なパーツになり得ます。しかし、shunit2プロジェクトそのものが構造を欠いているのは怖いので、もう少し探してみることにしました。
roundup
最初にこのフレームワークに惹かれたのは、rubyのSinatraの作者が書いたものだったからです。また、誰もが知っているmochaに似たテスト構文も気に入りました。ファイル内でit_から始まる関数は全てテストとみなされ、デフォルトで実行されます。面白いことに、全テストがそれぞれ独自のサンドボックス内で走るので、余分なエラーを避けられるのです。下記は、ドキュメンテーションにある事例です。
- describe "roundup(5)"
- before() {
- foo="bar"
- }
- after() {
- rm -f foo.txt
- }
- it_runs_before() {
- test "$foo" "=" "bar"
- }
出力の事例は紹介されていません。自分でインストールして確認しなければならず、実際それほど良いものではありません。しかし、プラスの面もあります。
- 各テストがそれぞれのサンドボックス内で実行されるのは、非常に便利です。
- 使い方が簡単です。
git cloneと./configure && make経由でインストール可能。加えてローカルディレクトリにインストールできるので、$PATHを編集するだけで済みます。
とはいえ、かなりの欠点もあります。
- 全テストに対する共通関数のソースを作成できません(本当に正確に言えば、不正をすれば可能)。
- フォルダから全ファイルを実行することができません。
- ドキュメンテーションは
TODOマークだらけ、ここ数年開発が進んでいません。 - テストをスキップできません。
結論: 全くの平凡なツールで、良いとは言えずとも、それほど悪くもないといったところです。その機能はassert.shをより幅広くした感じです。どのような時に使えるでしょうか。assert.shを使ってみて、後はbefore()やafter()さえあれば、と思う場合には向いているかもしれません。
bats
言ってしまいましょう、最終的に私はこのフレームワークを選びました。気に入った点はたくさんあります。何より、優れたドキュメンテーションです。使用事例やセマンティックバージョン管理。そして、batsを使っているプロジェクトのリストを特に挙げたいと思います。
batsは、「内部の全てのコマンドがコード0を返すなら、テストは完了したとみなす(set –eがするように)」というアプローチを取っています。以下がbatsに書かれたテストの例です。
- #!/usr/bin/env bats
- @test "addition using bc" {
- result="$(echo 2+2 | bc)"
- [ "$result" -eq 4 ]
- }
- @test "addition using dc" {
- result="$(echo 2 2+p | dc)"
- [ "$result" -eq 4 ]
- }
そして出力は次のとおりです。
- $ bats addition.bats
- ✓ addition using bc
- ✓ addition using dc
- 2 tests, 0 failures
--tapフラグを使えば、Test Anything Protocolに対応するテキストでテスト情報を取得できます。おびただしい数のプログラムへのプラグインを、Jenkins、Redmine、SublimeTextなどで見つけられます。
独特のテスト構文以外にも、batsには興味深い特徴があります。
runコマンドで、まずコマンドを実行し、その結果とテキスト出力をテストできます。その際は、専用の変数、$statusと$outputを使います。loadコマンドで、共通のコードベースをロードできます。skipコマンドで、必要な時にテストをスキップできます。setup()関数とteardown()関数で、環境を調整したり、後にクリーンアップするように設定したりすることができます。- 特定の変数が完全に揃っています。
- フォルダ内で全テストを実行できます。
- コミュニティが活発です。
batsの利点をたくさん挙げてきました。欠点については、私が指摘できるのは1つだけです。
batsは正当なbashからはほど遠いこと。テストは、異なるシバンを使って.bats拡張子を持つファイル内に書く必要があります。
結論: 欠点なしに近い高品質なツール。強く勧めます。
結果
このリサーチは、私の個人的なプロジェクト、git-secretのために質の良いテストを書く試みとして行いました。その主な目標は暗号化されたファイルをgitリポジトリに保存することです。チェックしてみてください。