swoセーフティウイングス大阪・公式ブログ(遠見貴時・白バイ芸人とみー)

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日産シルビア(SILVIA)・・・「女神」に由来する名を与えられた日産自動車最後のFRライトウェイトスポーツカーである。最終モデルであるS15型が排ガス規制により惜しまれつつも平成14年夏に生産中止となり、初代シルビア(CSP311型)より始まった37年の歴史に幕を閉じた。S15型の最上級モデルであるspecRはSR20DET型エンジンを搭載し、6400回転で250psを発生。

 少し前の話になるが、真夜中の首都高を走る飛び抜けて早い一台のクルマの噂が首都高関連のホームページを賑わしていた。車種は日産S15型シルビアspecR。車体色はパールホワイトで、女性ドライバーらしいということが話題を呼んでいたのだ。通り名は「首都高の女神」。彼女を見かけた走り屋が追いかけてもすぐ見失うほど速いため、ほとんど伝説に近い存在になっていた。以前から一度首都高を走ってみたかったので、彼女を見たいという気持ちがきっかけになり首都高を走ろうと決心がついた。心の中では、運が良ければそのシルビアが走っている姿を見ることができるだろうと思っていたのだろうか。卒業した後、東京に行くつもりだったので大都会の雰囲気を知るいい機会となるだろうと思った。大学が夏休みに入ったある日僕の住む群馬を出発。東京に向かった。

 首都高にはサーキットや、峠、普通の高速道路にはない特別な魅力があるという事をクルマ友達から聞いていたので、それを自分自身で走ってみて確かめたかった。その為だけに、峠ではそこそこ早いスプリンタートレノ(AE111)から長距離高速移動に適したスカイラインGTsターボ(ECR33)に乗り換えたのだ。
 発進時はボディが重い為か、ゆるやかでおとなしい性格であるが、アクセルを踏み込むとまさしく暴力的な加速性能を発揮する。例え100Km/hからであっても余裕の加速性能をもつ。ちなみにこのスカイラインの「RB25DETT」と呼ばれるエンジンは直列6気筒ターボであり、排ガス規制で生産が中止された。そして現在は「V35」と呼ばれるノンターボV6エンジンになっている。(このエンジンを搭載されたスカイラインには「牙」がなく高級車路線を走ってしまった。)
 東京に到着したのは昼過ぎだった。私は銭湯で入浴した後、食事を取り、ネットカフェで仮眠して首都高走行に備えた。起きたのは夜の11時、クルマに乗り込みエンジンをかけて首都高に向かった。
 料金所を通過して、一気に加速、環状線左周りに合流した。そこにはもう「一般車」はほどんとおらず、明らかに走りを意識したクルマばかりだった。シビック、インテグラ等の前輪駆動車の姿は見えず、RX-7、スカイライン、スープラ等の後輪駆動車が目立っていた。環状線でバトルするクルマや、湾岸線で最高速トライアルをするクルマも何台か発見できた。しかし私はそのどちらにも興味はなかった。ただ首都高をやや低速でクルマを流し、首都高の魅力を見出したかったのだ。
 環状線を一周して気づいた事は、高速道路にしては、カーブ、アップダウンがきつく、地下や地上を出たり入ったりを繰り返す特徴がある事だ。しかも走っていると周りの無機質な壁やビル群が首都高を走るクルマに迫るような感覚になる。
 二周目、三周目でコースを覚え、四周目以降で走ることそのものに集中できた。
その後、首都高新環状線左回りに入り、レインボーブリッジが姿を現す。柱の光が美しく輝いていた。それは単なる「道路」の領域をはるかに越えており、ブリッジを通過することそれ自体が芸術性をもち、さらにはなんらかの儀式を意味するかのようである。ここで私は完全に首都高の虜になってしまった。眠さを忘れるほど興奮してしまい、「もっと走れ」と誘惑する。しかし私はここで冷静になり、自分自身が疲れていることに気が付いた。また、スカイラインの油温計もかなり高めの表示がでていた。エンジンにも自分自身の体にも良くないので辰巳パーキングエリアで休むことにした。パーキングエリアに到着すると、そこはピット状態で走るためのクルマだけでなく、整備専用車両も何台か発見できた。クルマがかなり多く停まっており、人がたくさんいたのでやっとのことでエリアの端の方でクルマを停めて休む場所を
見つけることができた。トイレを済ませて、洗面所で歯を磨いた後、少し仮眠することにした。そして目を閉じた。しばらく時間が経ったが、目を閉じても眠れないのだ。あのレインボーブリッジの輝きが忘れられない。目に焼きついてしまってそれが離れないのだ。これが首都高の魔力なのか。もう一度は走りたくなった。そして今走ればもしかして奇跡が起こり、伝説のシルビアに会えるかもしれない、とも思った。これは一種の恋の感覚に近いものがある、いやこれが恋そのものなのかもしれない。とにかくエンジンをスタートして少し暖気運転。アクセルを吹かしエンジンが快調であることを体で感じ取り、ミッションを一速へいれる。ゆっくりと確実に僕のスカイラインは動き出し、パーキングエリアを出た。最初の左カーブの抜けて、初めてアクセルを全快にした。その時メーターは140km/hを越えていた。アクセルを少し緩め、そしてハンドリングにすべてを集中した。
 一瞬のミスも死につながる緊張感が張り詰める中で、サイドミラーに映る非現実な景色。
 ナトリウムランプが流星群のように映る恍惚空間。ただ走るだけで芸術家になれる気がした。眠らないネオンの都会の中で、スピードをあげて走る。ただ聞こえるのはエンジンのうねりとマフラーの咆哮。
 
 そして環状線から湾岸線へ入りしばらくすると輝きを発するレインボーブリッジが見えてきた。そしてしばらく走ってブリッジの上に差し掛かる丁度その時、ルームミラーに美しい閃光が走った。同時にマフラーの爆音も聞こえた。「何だ?」と思いサイドミラーで確認しようと右を向こうとした時はすでに抜かされてしまったが、あれは間違いなく白のシルビアだ。真っ赤なテールランプの輝きを揺らめかしながら、大変な速度で走っていた。少なく見積もっても200km/hは出ている。この目ではっきり見てやるぞ。瞬きしている時間はない。自分のできる最高の走りをした時、彼女はきっとなんらかの反応をしてくれるはずだ。5速から4速に落とし、一気にアクセルを踏み込んだ。ターボが過給する音と共に体がシートに叩きつけられる。レッドゾーンまで回転を引っ張った時は既にスピードメーターを振り切ってしまった。それでも彼女との差は開いていくばかり。ブリッジを抜けた2つ目のカーブあたりで完全に彼女を見失ってしまった。「だめだ、速すぎる。異常な速さだ・・・。」一瞬の彼女との出会いに我を忘れてしまった。でも彼女の後ろ姿を見れたので目的は達成したのだ。噂が本当だったことを確認でき、どことなく満足感が溢れた。

 しばらく走ってそして湾岸線から新環状線を経て、再びパーキングエリアに戻った。もう一度クルマを停める場所を探して、クルマを停めると急に睡魔が襲ってきた。それから先は覚えていないがなぜか幸せな気持ちで眠れた。
 そして朝が来た。目を覚ますと辺りはトラックと商用車ばかり。深夜とはまったく別世界だ。これが首都高の朝、大都会の風景なのだ。空気も自動車の排気ガスで汚く、濁っているように思えた。現実世界に戻された僕自身の中には、どことなく祭りの後のような空しさが残っていた。
 昨晩の夜のことは睡眠不足のためか、はっきりとは覚えていないが、もう一度走りたい、そしてもう一度彼女に会いたい、という気持ちだけは強く残っていた。
  目覚めに缶コーヒーでも飲もうかと思い、自動販売機に向かった。すると一人の青い整備服を纏った女性がいた。そして彼女は財布からお金を取り出そうとした時、クルマのキーを落とした。私が拾ってあげて見てみるとそれにはシルビアの刻印があった。「どうぞ、これシルビアのキーですね」「はい。ありがとうございます。」物静かそうな女性は言った。「昨日私のスカイラインを抜かしませんでしたか?白のS15で。」まさかとは思ったが尋ねてみた。「え?」彼女の表情が突然変わった。彼女は言った。「たまに走っているんですよ。レインボーブリッジを走るのが好きなんです。何か別の世界にいる気分になるんです。」この時僕は彼女に完全に一目惚れしていたのかもしれない。「クルマを見せて頂けませんか?」と尋ねると彼女は頷き、屋根付のトラックが止まっている所に案内してくれた。なんとトラックのリアに昨日見た白いS15シルビアが隠すように積載されていた。明らかにサーキット仕様のチューニングが施されていた。「このクルマは病気で亡くなった恋人のクルマなんです。生きていた頃は、よくこのクルマで首都高をデートで走っていました。」彼女は少し悲しそうに言った。「でもネットで話題になってますよ。このクルマ。」「ええ、でも今日会って話したことは秘密にしておいてくださいね。そろそろ仕事の時間なので行きます。」と言い、彼女はトラックの運転席に乗り込んだ。「勿論秘密にしておきます。またいつか会えますか。」と尋ねると「ええ。走った後はこの時間に、この場所にいると思います。さよなら。」と言い残して、彼女は行ってしまった。
 その日の昼前に帰宅した時、こう思った。「また走りにいこう。そしてもし次会えたなら自分の気持ちを告白してみよう。」と。パーキングエリアを後にして、首都高から一般道路に降りる時、なぜか切ない気持ちになった。そして大都会の大渋滞の中、私は家路についた。
 
 その日から約一ヵ月後、彼女の交通事故による死亡記事を見た。
首都高湾岸線で全損事故、即死だったらしい。首都高の魔力によって女神になった彼女は、首都高の魔力に取り付かれて犠牲になった。もしあの時、彼女に恋する気持ちを告白していたなら、彼女は死ななかったかもしれない。そして走ることをやめるように説得できたかもしれない。でも会ったその日に自分の気持ちを打ち明ける勇気なんて僕にはなかったのだ。アクセルを踏む時にも、ブレーキを踏む時にもベストのタイミングがある。恋する気持ちを打ち明ける時のタイミングを僕は逃してしまったのかもしれない。
 
東京の会社に就職した僕は今夜も真夜中の首都高に走りに行く。
もう会えることのない首都高のシルビア(女神)に再び会えることを信じて。

 首都高・・・、それは奇跡は起こり夢が叶う、禁じられた最後の楽園だから。
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