金融庁が主要行に立ち入り検査へ、顧客本位の取り組み点検-関係者

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Signage at Financial Services Agency's headquarters in Tokyo.

Photographer: FRANCK ROBICHON/EPA
  • 聞き取り調査や支店の接客状況見て評価-対話通じて改善求める
  • つみたてNISA開始前に顧客本位の姿勢を確認へ

金融庁が国内の主要な銀行などを対象に、顧客本位の投資商品を提供しているかどうかに焦点を当てた立ち入り検査を実施する方針であることが5日、分かった。聞き取り調査のほか、事前通告の上で支店での接客の様子を評価することなどを検討している。

  未発表であることを理由に匿名で語った関係者によると、検査では、各行が公表している顧客本位の業務運営方針が現場でどう運用されているか把握する。メガバンクなど主要行のほか、地銀にも対象を広げる可能性がある。取り組みが十分でない場合は対話を通じて改善を求めるほか、好事例は同庁が公表している金融レポートなどで紹介することを検討する。来年1月に個人を対象とした積み立て型少額投資非課税制度(つみたてNISA)が始まるのを前に、各行に取り組みを促すのも狙い。

  金融庁は個人の安定的な資産形成を促す安倍晋三政権の戦略で「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるため、下地作りを担ってきた。2015年には、顧客本位を掲げたフィデューシャリーデューティー(受託者責任)として「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関が徹底を図る」と行政方針に明記。金融機関が策定する「取り組み方針」については、今年3月に同庁がガイドラインを公表し、金融商品などについて顧客が理解できるよう分かりやすく情報提供するなどの7原則を掲げた。

  これまで、同庁は、金融機関の商品販売姿勢を再三批判してきた。金融庁の森信親長官は4月の日本証券アナリスト協会での講演で「顧客本位を口で言うだけで具体的な行動につなげられない金融機関が淘汰(とうた)されていく市場メカニズムが有効に働く環境を作っていくことが、われわれの責務」だと述べている。

  金融庁の広報担当者に取材を試みたが、現時点でコメントは得られていない。

  3月の発表資料では、主要行など18行を分析し、ガイドライン策定前に自主的に「フィデューシャリー宣言」を行った銀行を含め依然、顧客本位の運営とは言えない現状を指摘。運用が振るわずとも毎月配当するため元本が減るリスクがある「毎月分配型」が売れ筋投信の9割を占めていることや、投信の販売額と解約・償還額がほぼ同額で残高増に貢献していないことなどを問題視した。6月末時点で銀行や保険会社、証券会社など469事業者がガイドラインに沿った方針を策定している。

つみたてNISA

  つみたてNISAは、既存のNISAが年間上限120万円、非課税期間5年なのに対し、同40万円、期間20年と細く長い投資を促す制度設計になっている。さらに、対象商品は金融庁が決めた販売手数料ゼロ、低信託報酬など顧客のコストを極力抑えた投資信託・ETFのみとなる。

  同庁は投資初心者に向いているのは地道に投資を続けられるつみたてNISAのような商品と考えており、検査を通じてこうした考えを浸透させる意向。金融機関にとっては妙味が少なく、3月時点でつみたてNISAの基準を満たしていた投信は約50本と公募株式投信全体の1%未満だったが、7月の調査では制度開始までに少なくとも120本が適合する見通しとなった。

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円全面高、北朝鮮情勢警戒でリスク回避再燃-対ドルで1週間高値

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Bloomberg
  • 9日の建国記念日に向け北朝鮮報道に敏感な状況続きそう-CIBC
  • 豪ドルはGDP期待で一時上昇、豪中銀声明発表後に売られる場面も

東京外国為替市場では円が全面高となり、対ドルで1週間ぶり高値を付けた。北朝鮮が9日の建国記念日前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射する可能性が報じられ、リスク回避に伴う円買いが再燃した。

  ドル・円相場は5日午後3時39分現在、前日比0.3%安の1ドル=109円37銭。朝方は109円83銭まで円売りが先行する場面も見られたが、徐々に円買いが強まり、ICBM発射の動きに関する報道が伝わると109円21銭までドル安・円高が進んだ。

  CIBC証券金融商品部の春木康部長は、109円台前半から108円台にかけては国内勢のドル買い意欲も強いとみられ、「実需の買いなどが確認されればドル・円は戻しやすい」と指摘。もっとも、9日の建国記念日に向けて警戒は残っており、北朝鮮に関する報道に対しては「敏感な状況が続きそう」と話した。

  北朝鮮が4日、ICBM級のミサイルの移動を開始したと、韓国紙アジア経済が匿名の情報当局者を引用して伝えた。9月9日の建国記念日前にICBMを発射する可能性が高いという。

  リスク回避の動きが続く中、円は主要16通貨全てに対して上昇。日経平均株価は続落し、下げ幅は100円を超えた。また、安全資産とされる金価格は上昇し、米債利回りは時間外取引で低下している。

  SBI証券IFAビジネス部の相馬勉部長は、北朝鮮情勢は今後の展開に確信が持てず、「何かあればドル売り・円買いになるので、ドルロング(買い持ち)ではいられない」と指摘。外為どっとコム総研の神田卓也取締役調査部長は、「ドル・円がここで下げ止まるとは言い切れない」とし、みんなが様子見姿勢を強めている状態で、一気にドル売り・円買いが入ると「どうしても108円台は見えてくる」と話した。

  ユーロ・円相場は1ユーロ=130円台後半から一時130円02銭まで円買いが進行。一方、ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.1900ドル前後で方向感に乏しい展開だった。

  オーストラリアドルは4-6月の純輸出の国内総生産(GDP)寄与度が予想を上回ったことを受けて対米ドルで一時1豪ドル=0.7985ドルと2営業日ぶり高値まで上昇。その後伸び悩み、オーストラリア準備銀行(中央銀行)の声明発表後には売りが強まる場面も見られた。

  豪中銀は5日、市場の予想通り政策金利を過去最低の1.5%に据え置くことを決定。声明では豪ドルの上昇は生産、雇用の見通しに対して重しになるとの見解を改めて示した。ブルームバーグ調査によると、6日発表の4-6月の豪GDPは前期比0.9%増と1-3月の0.3%増から伸びが加速すると予想されている。

  

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