今日は大好きだった祖母のことを少しだけお話したいと思います。
これは母がまだ小学生だった頃の話です。
祖父が若くして胸の病で亡くなったのは、祖母がまだ三十過ぎたばかりの頃でした。
当時、家族は子供達が五人、それにお舅さん、お姑さんの八人家族でした。
祖父が病に倒れ亡くなってからは、八人家族を祖母がひとり働きながら大黒柱となって支えていたそうです。(のちに中学を出た母と祖母のニ人で家族を養うことになります)
しかも、お舅さんは全盲だったこともあり、いろんなことがとても大変だったと想像できます。
家族を支え、毎日、食べていくのが精一杯だっだそうです。
ある日のこと、ある一人の男性が祖母の家の前に膝を抱えて座り込んでいたそうです。
物乞いの人でした。
祖母が話しかけました。
「こんばんは…どうかされました?」
「すみません…。少しでいいのでご飯を分けてもらえませんか…。」
ボロボロの身なりの男性は、申し訳なさそうにそう言ったそうです。
「なにも食べていないのですか…ちょっと待っていてください」
祖母はすぐにそう言って、台所の方になにかを取りに行きました。
しばらくして祖母が玄関先まで戻ってくると、手には温かいご飯とお味噌汁が。
それも、きれいなお茶碗ときれいなお椀に入った温かいご飯とお味噌汁です。
申し訳ないと思ったのでしょうか…
その男性は自分の身なりがとても汚れていることを気にして
そのご飯を持って、外に出て食べようとしたそうです。
「そんなところで食べずにどうぞ、うちの中に入って座って食べてください」
祖母はそう言って、その人を家に招き入れました。
そして、周りを気にせず、安心して食べてもらえるように気を配ったそうです。
その男性は今までそんな風に接してもらったことはなかったのでしょうね。
「すみません…すみません…」と何度も言いながら
美味しそうにご飯を食べた後、とても感謝をして出て行ったそうです。
その光景をずっと見ていた子供達は言いました。
「お母さん、どうして物乞いの人にあんなきれいなお茶碗を使ったの? どうして温かいご飯をあげたの? あの人、ひどく汚れていたのに…」と。
祖母は言ったそうです。
「そんなことを言うもんじゃない!あなた達が同じ立場だったらどう思う?きれいなお茶碗で温かいご飯が食べたいでしょう…みんな同じ気持ちになるでしょう…」
「冷やご飯をあげろと言うのなら、あなた達がそれを食べたらいい。」
「外で食べろというのなら、あなた達がそうしてみなさい。それがどういうことなのかわかるから…」
「………。」
子供達なりに理解したのでしょう…それ以上は誰もなにも言わなかったそうです。
祖母は偏見をもたない人でした。
いつでも笑顔で全てを受け止めてくれるとても温かい人でした。
そして、物静かで多くを語らず、凛とした強さのある人でした。
その後、その男性は二度と家に尋ねてくることはなかったそうです。
人の温かさに触れたその人はもしかしたら、生きる希望を持つことができたのかもしれません。
真相はわからないのですが…そうであってほしいと思います。
空のように大きくて温かい心を持った祖母
辛く大変な時でも笑顔を絶やさなかった祖母
私はそんな祖母のことが今でもずっと大好きです。
祖母は生涯、女性であることに誇りを持った人でもありました。
私もいつかそんな強くて優しい祖母のような女性になりたいです。
九月は祖母が亡くなった月、ふと祖母を思い出し、とても恋しくなりました。
もう秋ですね…。
もうすぐこんな景色が観れますね(^ ^)