公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類がありますが、とりあえず「65歳になると年金が受け取れるものだと思っている」。程度の知識しか年金について知らない。という方は案外少なくないものです。
それは、本人が悪いという側面もあるかもしれませんが、なにより年金制度が複雑怪奇であり、日本年金機構のサイトも難しい文字ばかりで読むのも大変。というのが原因として挙げられるでしょう。
そこで、公的年金である「国民年金」と「厚生年金」について、できる限り分かりやすく簡単に説明をしたいと思います。
目次 [非表示]
公的年金の1階は国民年金・2階は厚生年金で成り立っている
まず、公的年金がなぜ1階、2階と呼ばれるのかと言うと、誰もが受給する権利を持つ国民年金が1階部分となり、国民年金よりも受給できる人が減る厚生年金が上に乗っかるイメージを分かりやすく伝えるために1階、2階という呼び方をします。上記の図がそれを示したものになりますのでご確認ください。
それでは、国民年金と厚生年金がそれぞれどのような仕組みなのか出来る限り分かりやすく簡単にお伝えしたいと思います。
国民年金とは
国民年金の保険料はどのくらいの期間納付するのか
先ほどお伝えした通り、国民年金を満額受給するためには20歳から60歳までの期間を滞りなく納付する必要があります。一方、満額受給でなくても国民年金は受給することが出来ます。国民年金の受給資格は平成29年8月より10年間納付した方でも満額とはなりませんが、国民年金を受け取ることができます。
平成29年7月末までは25年間納付しないと国民年金の受給資格を得ることができませんでしたが、平成29年8月より10年間保険料を納めることで受け取りができるように改正されています。また、厚生年金も同様に25年から10年の保険料納付で受給できるように改正されています。
国民年金の保険料はいくら?
国民年金の保険料は、平成29年度で16,490円となっています。この金額は毎年変わりますが、年々緩やかに増加していますが平成29年3月の値上げで固定となりますので、当面は保険料が増えることは無いでしょう。(物価連動により多少の増減は発生する)
国民年金の保険料の推移は以下の図をご確認ください。
国民年金が受け取れる時
一般的な65歳時点で支給される国民年金を「老齢基礎年金」と呼びます。何も問題なく保険料を納めていれば65歳で誰でも受給することができます。また、65歳前でも国民年金を受け取れる場合がありますので国民年金の3つの種類をお伝えします。
- 65歳時に受け取れる「老齢基礎年金」
- 障害者になった場合に受け取れる「障害基礎年金」
- 加入者が死亡した場合に遺族が受け取れる「遺族基礎年金」
2番と3番の状態になった場合は、65歳を前にしてでも国民年金が受け取れますので覚えておきましょう。ただ、「遺族基礎年金」は子供を支えることを目的にしていますので、18歳未満の子供がいない方は支給されません。詳しくは「遺族年金の仕組み|受給金額はいつまでいくら貰えるのか?」をご参照ください。
国民年金が受け取れる時 | 受け取れる国民年金の名称 | 受け取れる人 |
加入者が65歳になった時 | 老齢基礎年金 | 加入者本人 |
加入者が障害者等級1級または2級の認定がされた時 | 障害基礎年金 | 加入者本人 |
年金加入者が死亡した時 | 遺族基礎年金 | 遺族(子のみ) |
国民年金はどのように納付したら良い?
国民年金は20歳以上の方であれば誰もが保険料を納付する義務があります。会社員の方であれば給与から天引きされます(厚生年金として)。それ以外の方は、口座引落、銀行、郵便局、コンビニで国民年金を納付することが可能です。
おすすめの納付方法としては「国民年金をクレジットカード払いにするとお得なの?割引率を徹底比較」でもご紹介しましたが、「2年前納」でクレジットカード払いが割引率が高く非常におすすめです。
また、納付方法が異なるだけですが、呼び方が「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」と変わりますので、自分自身がどれに該当しているのか把握するようにしましょう。
名称 | 対象の方 | 国民年金保険料の納付方法 |
第1号被保険者 | 学生、フリーター、無職の人、自営業などの方 | 納付書もしくは口座振替でご自身で納めます |
第2号被保険者 | 会社員や公務員など厚生年金に加入している方 | 厚生年金保険料として給与天引きにて納付されます |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の配偶者であり、扶養家族の方 | 保険料の本人負担なし |
厚生年金とは
厚生年金とは、会社員の方や公務員の方を対象にした公的年金で法人企業は従業員が1名でもいる場合は強制加入する必要があります。前段の図解でも説明している通り厚生年金に加入している方は国民年金にも加入していることになります。給与明細などを見ていただければ「厚生年金保険料」という名目で給与から天引きされていますので自分が年金を支払っているのかは一目瞭然でしょう。
厚生年金の保険料はどのくらいの期間納付するのか
厚生年金は一般的に企業に属してから支払いが発生しますので企業にお勤めの間支払いをしていると考えましょう。そのため22歳から仕事を始め65歳で定年退職した場合は、43年間厚生年金保険料を納めたことになります。(会社によって異なる可能性があります)
制度上の最大加入期間は、義務教育の終了タイミングである15歳から厚生年金の保険料を納められる70歳までが最大期間となります。
厚生年金の保険料はいくら?
厚生年金の保険料は所得によって大きく異なります。この基準を定めるのが「標準報酬月額」と呼ばれるもので、毎月の給与や残業代、交通費が報酬に含まれます。「標準報酬月額」毎年4月、5月、6月の平均より算出することになります。
厚生年金の保険料は「日本年金機構」に掲載されておりますが、平成29年度9月からの保険料の計算式は「標準報酬月額×18.3%÷2」にて算出できます。「÷2」というのは、企業と本人で保険料を折半するため割っております。
平成29年8月までの厚生年金保険料は「18.182%」でしたが、9月1日より「18.300%」に引き上げされました。国民年金同様に今回の引き上げで厚生年金保険料の上限に達しましたので、今後は保険料が上がることはないでしょう。詳しくは「厚生年金の保険料が18.3%に引き上げ|どうなる未来の年金事情」をご参照ください。
厚生年金が受け取れる時
厚生年金も原則は、65歳から年金受給が開始されますが、国民年金同様に、加入者が障害者となった場合と死亡した場合は65歳を待たずに支給を開始することができます。それぞれ確認してみましょう。
- 65歳時に受け取れる「老齢厚生年金」
- 障害者になった場合に受け取れる「障害厚生年金」
- 加入者が死亡した場合に遺族が受け取れる「遺族厚生年金」
2番と3番の状態になった場合は、65歳を前にしてでも厚生年金が受け取れますので覚えておきましょう。また、「遺族厚生年金」は妻である配偶者も受給することが可能です。
厚生年金が受け取れる時 | 受け取れる厚生年金の名称 | 受け取れる人 |
加入者が65歳になった時 | 老齢厚生年金 | 加入者本人 |
加入者が障害者等級1級、2級、3級の認定がされた時 | 障害厚生年金 | 加入者本人 |
年金加入者が死亡した時 | 遺族厚生年金 | 遺族(妻・子) |
国民年金と厚生年金の受給額はいくら?
国民年金を20歳から60歳までしっかりと納めた場合の満額受給額は、平成29年度で77万9300円となります。詳しくは「平成29年度|国民年金(老齢基礎年金)の満額支給は年額77万9300円」をご参照頂ければと思いますが、平均的な支給額は国民年金(老齢基礎年金)が月額55,244円、厚生年金(老齢厚生年金)が月額147,872円となっています。
公的年金の平均支給額の詳細は「2017年最新|年金支給額の平均は国民年金5.5万円・厚生年金14.7万円」をご確認ください。
障害年金と遺族年金の受給額はいくら?
「障害厚生年金」や「遺族厚生年金」は、国民年金の「障害基礎年金」と「遺族基礎年金」と合わせて受給することが可能(受給資格を満たしている場合のみ)です。それぞれ「障害年金」と「遺族年金」がいくら受給できるのかは、個人の状況によって異なりますので、詳しい金額を知りたい方は、「国民年金と厚生年金の違いとは?意外と知らない年金の種類を解説」をご確認ください。
国民年金と厚生年金の受給資格は最低10年間保険料を納めること
国民年金と厚生年金を受給するためには、最低10年間の年金保険料を納める必要があります。
あれ、保険料納付期間は25年ではなかった?
と、思う方も多いと思いますが、平成29年8月1日より保険料納付期間が25年から10年に短縮されたのです。もちろん、満額受給ではありませんので、20歳から60歳までしっかり年金保険料を納めた方に比べると受給額は少なくなりますが、それでも受け取れる方が広がったとも言えるでしょう。
種類 | 受給資格 | 加入できる期間 |
国民年金 | 10年以上年金保険料を納めること | 20歳から60歳 |
厚生年金 | 中学卒業から70歳 |
厚生年金は仕事を始めた時に加入しますので、事実上労働できる、中学卒業から加入することは可能です。また、最大の加入期間としては70歳と決められておりますのでそれ以上加入することはできません。とはいえ、厚生年金を70歳まで納める方も少ないでしょうから60歳まで保険料を納めるのが一般的です。
まとめ
国民年金と厚生年金の仕組みを分かりやすく簡単にお伝えしました。まずは、本ページに記載されている情報を最低限理解した上で加入者が「障害者になった場合」や「亡くなってしまった場合」はそれぞれ「障害年金」と「遺族年金」について調べるようようにしましょう。