嘆く農民と赤茶けた水の池、中国汚染地帯を歩く

繰り返される環境破壊

2017年9月5日(火)

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天津市佟家荘村の汚染された池

 村のはずれにあるため池はさびた鉄のように茶色くにごり、池の端には玉虫色に光る油のようなものが浮かんでいた。

 ここは中国天津市のはずれにある佟家荘村。天津の中心部からはクルマで1時間ほどだが、周囲にはのどかな農村の風景が広がる。

 この村が注目されるようになったのは今年春のことだった。民間の環境保護団体の調査で天津市や隣接する河北省で汚染された池が複数あることが明らかになった。佟家荘村の池もその1つだ。

深刻な環境汚染に悩む中国の首都

 日本を含む先進各国が地球温暖化による気候変動の影響を受ける一方で、経済成長が著しい新興国は、かつて日本も経験した人為的要因による環境破壊に苦しんでいる。中でも中国は急成長の代償として環境汚染の面でも世界有数の大国となっている。

 首都・北京や同市とともに経済圏を形成している天津や河北省は、深刻な大気汚染に悩まされている。最近はやや改善しているとはいえ、冬場ともなれば、わずか数メートル先も見えないほどのスモッグで覆われる光景はテレビなどで見たことがある人も多いだろう。

 WHO(世界保健機関)が公表している世界約3000都市の大気汚染状況のデータを基に、微小粒子状物質PM2.5の数値が大きい都市のランキングを作成すると、上位50都市のうち8つが中国の都市だった(ちなみに国別で最も多いのはインドで22都市だった)。この8都市は省都である石家荘市などいずれも河北省の都市だった。

 水や土壌についても大気と同様、河北省や天津での汚染が以前からたびたび問題になってきた。だが、経済成長を優先する地方政府やモラルに欠ける企業経営者の問題もあって改善の歩みは遅かった。水処理膜などが専門の王暁琳・清華大学教授は「中国政府も問題を認識しており、ここ数年は対策に本腰を入れている」と話す。だが、今でも佟家荘村のような問題が頻発するのが、中国の環境汚染の現実だ。

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「環境 vs 人類」の目次

「嘆く農民と赤茶けた水の池、中国汚染地帯を歩く」の著者

小平 和良

小平 和良(こだいら・かずよし)

日経ビジネス上海支局長

大学卒業後、通信社などでの勤務を経て2000年に日経BP社入社。自動車業界や金融業界を担当した後、2006年に日本経済新聞社消費産業部に出向。2009年に日経BP社に復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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