ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスは、ちょっと変わった調査を試みた。広告写真企画のアマナ、SMBC日興証券の協力を得て、上場企業がウェブサイトに社長や役員の顔写真を掲載しているかどうかと株価の関連を分析した。
株式時価総額が100億~1000億円の中小型株を対象に、2012年末から17年3月末までの株価の動きを調べたところ、興味深い結果が出た。
社長の顔写真をサイトに掲載していない企業の株価パフォーマンスの悪さが目立ち、そうした企業群の単純平均は全体より14%以上も相対的に値下がりしていた。逆に役員の顔写真を出している企業の株価は値動きがよく、平均を70%強上回った。
「写真の少ない企業は情報公開に消極的な傾向がある」。レオスの藤野英人社長は指摘する。不祥事企業を後から調べると、社長の写真を掲載していなかった例が目に付くという。写真の多寡は、その会社の人材が誇りを持っていきいきと働いているかの指標となり、藤野社長はアニュアルリポートでも写真を数える。
腕利きのファンドマネジャーやアナリストは、経営者の力量や企業文化から成長のにおいをかぎ取ってきた。機械による運用が広まり、業績の数値を瞬時に株価が織り込んでしまう時代だからこそ、投資家は「非財務情報」への感度が、企業は開示のあり方が問われている。
非財務情報のなかでは、企業の強さの秘訣とも言えるビジネスモデルが重要視されている。ゲーム大手、カプコンの開示は投資家の間で評価が高い。
同社は、向こう5年間に大型タイトルをどう投入するかを示す「60カ月マップ」と、2000人の開発陣をどのプロジェクトに配分するかの「52週マップ」の概念図を公表している。2つのマップを使いながら、毎年、安定したタイトルの投入を目指す。
これまでは大型タイトルの発売時期によって収益が変動しやすく、投資家の悩みの種だった。収益構造の転換が着実に進んでいるか、「2つのマップを使って経営陣と対話ができる」(フィデリティ投信の三瓶裕喜ヘッドオブエンゲージメント)。
ニューヨーク大学のバルーク・レブ教授らは、著書「ジ・エンド・オブ・アカウンティング」で、利益や資産など財務情報が株価に与える影響度は1980年代までの8~9割から5割程度に下がったと分析した。米アップルやアマゾン・ドット・コムなど、研究開発費が利益を圧迫しやすく、設備より知的財産が重要なIT(情報技術)企業が伸びるにつれて低下が顕著になった。
企業の環境や社会への働きかけをみるESG投資。高いパフォーマンスにつながるか決定的な分析はまだないが、企業を新たな目線で捉えようとする動きは止まらない。企業の実力を測る物差しは常に進化する。