当ブログにお越しいただき、ありがとうございます。シリーズで続けていた短歌の作り方の連載記事ですが、基礎編は今回で最終回です。今回は、お手本になる短歌を10首ご紹介したいと思います。
短歌作りが上手になるためには、よい短歌にたくさん触れることも大事です。また、自分がお手本にしたいような好きな短歌を見付けるのも、作り方の参考になるのでとてもいいですよ。では、早速ご紹介していきたいと思います。
お手本の短歌ご紹介
俵万智さんの短歌
思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ
落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し
潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる
約束のない一日を過ごすため一人で遊ぶ「待ち人ごっこ」
~『サラダ記念日』
俵万智さんの短歌は、身近なものから発想を得ているものが多く、作歌の参考にしやすい短歌が多いと思います。言葉も口語(普段の話し言葉)で書かれていて分かりやすいです。文語(古典の様な言葉)が苦手な方にもちょうどよいのではないでしょうか。お手本にしやすいと思いますので、ちょっと多めに引用しておきますね。
分かりやすい言葉を使っていますが、取り上げている題材は、普段気が付かなかったようなところに焦点を当てているものが多く、細やかな感性を磨きたい方にも、ちょうどいいのではないでしょうか。
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今野寿美さんの短歌
どうしてもつかめなかった風中の白き羽毛のやうなひとこと
~『花絆』
だまし絵に騙されてゐるいつときが思ひのほかの今日のしあはせ
~『星刈り』
今野寿美さんは「りとむ」という短歌結社を創設した方です。1952年生まれと、経歴実力ともに大御所に入るような歌人かと思います。少々文語が入りますが、今野寿美さんも割合に分かりやすい言葉で表現される方なので、お手本にちょうど良いと思い、引用させていただきました。
引用させていただいた短歌からも感じられますが、優しさと透明感を感じるような短歌が多いように思います。感性も「お手本にしたいな」と感じる歌人の一人です。
男性の歌人の作品もいつくかご紹介しておきます。
佐佐木幸綱さんの短歌
君は信じるぎんぎんぎらぎら人間の原点はかがやくという嘘を
~『直立せよ一行の詩』
噴き出ずる花の林に炎えて立つ一本の幹、お前を抱く
~『夏の鏡』
佐佐木幸綱さんは先ほどご紹介した俵万智さんの師匠に当たる方です。勢いの感じられる歌が多いことで有名です。また、1938年生まれとこちらも超大御所の方なのですが、同じ時代の歌人たちと比べて口語を使用する短歌が割合に多いと思います。そのため、直球勝負で力強く伝わってくる短歌が多く、文語を使用する他の大御所勢と比べても読みやすい短歌が多いと思います。門下の俵万智さんもそのあたりの影響を受けているのかもしれませんね。
寺山修司さんの短歌
一本の樫の木やさしそのなかに血は立ったまま眠れるものを
~『血と麦』
生命線ひそかに変へむためにわが抽斗にある 一本の釘
~『田園に死す』
以前の記事でご紹介した寺山修司さんの短歌です。ご紹介している短歌は、社会批判よりも自分の心情を詠んだのではないかなというものを選んでみました。そのほうが自分で作るときの参考にしやすいと思いまして。
こうして見てみると、他の歌人の方々とは違う感性をもっている方の様な気がします。静かに抱いた強い決意の様なものが感じられるのではないでしょうか。「血は立ったまま眠れる」という表現や釘で生命線を自分で変えるという感性もちょと過激で独特な感じがします。「血」を題材にしたところに、民族性などの社会性も感じますね。
今回ご紹介させていただいた短歌は、全てこの本に載っています。また、多くの歌人の短歌が抜粋して掲載されているので、参考にしたい短歌を探すのにとても便利です。よろしかったらどうぞ。
さて、今回は有名な歌人の方の作品からお手本にしやすそうな短歌を選んでご紹介してみましたがいかがでしたでしょうか。
特に俵万智さんの短歌は語句の難しさもないので参考にしやすいと思います。難しい言葉は使っていないけれど表現や題材がありきたりになっていないところに俵万智さんのすごさを感じます。
今回ご紹介した中に気に入った短歌がありましたら、是非同じ歌人の違う短歌も読んでみてください。それでは、今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。