貴重な史料が福岡空港から消えた

 貴重な史料が福岡空港から消えた。福岡から朝鮮半島へ出撃する米軍機の間近に降り立つ日本の民間機-。国内線の喫茶店にあった壁画が3カ月前、ターミナル全面改修で撤去を余儀なくされた。

 外食大手ロイヤルホールディングス創業者が喫茶営業を始めた1951年当時の空港を、米国人画家が描いた作品。空港が米軍板付基地だったことを知る市民は減り、今なお敷地の一画に米軍基地が残ると知る人はさらに少ない。

 今夏、米国で国防総省幹部と会った際、板付基地の現況を詳しく知っていることに驚いた。倉庫と小さな駐機場があること、職員3人が働いていること…。そして「地理的に重要な位置にあり、今後も基地能力を確保する。有事には福岡空港が作戦拠点になり得る」とさらりと言った。

 壁画は今、同社の研修所で保管されている。アジアの玄関口の空を軍用機が飛び交う光景が再び訪れぬよう、目を凝らしたい。 (坂本信博)

=2017/09/04付 西日本新聞朝刊=

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