アルベルト・アインシュタインが書いた3通の手紙がオークションにかけられた。この中には、第二次大戦前夜のナチスに対するイギリス首相の宥和政策を公然と非難する手紙も含まれている。
天才物理学者が手紙を書いた相手は、親友ミシェル・ベッソである。彼はスイス系イタリア人の技術者で、特殊相対性理論の最初の構築にアインシュタインと共に貢献した人物だ。
これらの手紙はこのほど、ロサンゼルスのネイト・D・サンダースのオークションにかけられた。
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最初の手紙は1938年10月に書かれた。
消印はニュージャージー州プリンストン。アインシュタインは手紙の冒頭で、自分がより多くのユダヤ人をアメリカに入国させるための宣誓供述書をもっと出さなかったことへの苛立ちを表現している。
さらに、イギリス首相ネヴィル・チェンバレンが、ヒトラーのチェコ併合を見て見ぬふりをしたことに疑問を呈している。
「あなたはイギリスやチェンバレンを信頼していますか? ああ、なんと世間知らずなことよ!(O sancta simpl) 願わくば、ヒトラーがロシアを攻撃して憂さを晴らしてくれればいいのですが、そうなると彼は東ヨーロッパを犠牲にしてしまう」
アインシュタインは手紙の中でチェンバレンのことも書いている。
「でも、わたしたちはまたしても、長い目で見たら洞察力では勝てないということがわかるでしょう。首相はフランスで左派を窮地に追い込み、フランス国内でもまた、ソ連よりもヒトラーのほうがましだと考える人たちに力を与える手助けをしてしまったのです」
アインシュタインは、量子力学についてもふれ、確率という点において自然界の法則は、たとえ成功しても、究極の間違った方向なのだと言っている。
アインシュタインが量子力学のいくつかの要素に関して懐疑的だったことは有名で、特に"不気味な遠隔作用"の概念は、原子以下の粒子はたとえ遠く離れていてもたちまちにして互いの運命に影響を及ぼしているらしいという、量子もつれによって定義されるということに疑問をもっていた。
手紙は、2万5000ドルから入札が始まった。
ヒトラーについてふれたこの手紙以外に、最初の妻ミレヴァ・マリッチとの離婚についてや、ノーベル物理学賞を受賞してからの経済的な見通しについて書かれた手紙は4万2250ドル、統合失調症の息子の問題を詳しく書いた3通目の手紙は2万5000ドルから入札が始まった。
via:Einstein's Letter Warning of Hitler Goes Up for Auction/ translated by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
>ソ連よりもヒトラーのほうがましだと考える人たちに力を与える手助けをしてしまったのです
結果論でいうとさて・・・
2. 匿名処理班
あの宥和政策は防衛設備や軍備を整えるための時間稼ぎでもあったはずだし
備えておかないといざという時言いなりにならざるを得ない事もあるんだよね
3. 匿名処理班
頑固ジジイの最後。
4. 匿名処理班
最初の手紙 管理人さんの説明が変だなと思って消印を拡大してみたら、1938年だった、
ごめんね、重箱の隅をツツイテ、
アインシュタインは物理学者だから、世界情勢の見通しなんかは不問にしようよ。
5. 匿名処理班
アインシュタインはナチが政権を取って直ぐに革命のための武器を隠し持っているという容疑でゲシュタポの家宅捜索を受け、それらしい道具はパン切りナイフだけ、更に追い討ちをかけるように財産の没収、更には実質的な市民権を失うなどユダヤ系というだけでナチに目の敵にされ実際に公然と被害に遭っている。
アインシュタインがナチ党とヒトラー、その取り巻きを憎むのは当然だろう。