オンリーワンを作りたい——こだわりを追及する同人的ハードウェアグループ「TOKYO FLIP-FLOP」
和装小物が入っているかのような桐箱に、5つの白いプッシュスイッチとアクリル製のスタンドが1組。一見しただけでは何か分からないが、これはスマートフォンと組み合わせる簡易レジ「レジプラ」だ。アプリに商品情報を登録し、画面に表示されている商品に対応したスイッチを押すとアプリに売り上げとして計上される。画面を左右にスワイプして商品を選び、売れた個数だけカチカチと押すだけで、簡単に売り上げの合計と受け取る金種に応じたお釣りの一覧が出る仕組みだ。
開発から製造販売まで手掛けるのは「TOKYO FLIP-FLOP」。レジプラ以外にも独創的な発想でいろいろな製品を生み出しているグループだ。その活動についてメンバーのお二人にお話を伺った。(インタビュー:越智岳人 撮影:加藤甫)
「あのー、顔が写らないようにお願いできますか?」
TOKYO FLIP-FLOPのインタビューは、普段とは少し違った言葉から始まった。「僕たち二人がコアメンバーです」と語るのは松田さんと斎藤さん。松田さんも斎藤さんもメーカー勤務という本業があり、顔出しはちょっと、ということらしい。会社勤めの傍ら、いろいろな製品を作り出していると聞けば、いったいどうやって、とますます興味が湧いてくる。
——初めに、TOKYO FLIP-FLOPというグループを作ることになったきっかけを教えてください
斎藤:私がコミケ(国内最大規模の同人誌販売会「コミックマーケット」のこと)にブースを出してグッズを販売していたんですが、人手が足りなくなってきたので彼(松田さん)を誘い、2014年ごろに自然発生的にグループが生まれました。
——メンバーは他にもいらっしゃるんですか?
斎藤:主要メンバーはこの二人で、ほかに事業を立ち上げている起業家の方がいて、アドバイザーとして入ってもらっています。あとは私の妻がグッズの梱包係をやってくれています。
松田:あと、ハードウェア関係の設計は、私の大学の同級生だったエンジニアに頼んでいます。斎藤さんは高校の1年先輩で、コミケに誘われてブースを手伝うようになったんですが、シールやスタンプなど値段もバラバラで計算が難しいと。こういう場所でも使いやすいレジがあったら、ということで、作ったのが「レジプラ」なんです。
斎藤:アプリだけでもできるんですが、物理的にカチカチとボタンを押せるものがあれば便利なんじゃないかと思ったのが、ハードウェアを作り始めたきっかけです。Makerムーブメントの流れで、ものづくりにチャレンジしやすい環境ができていたということもあり、これをコミケに持ち込んで実際に使ってみて、使いにくいところは改良を加えながら、今の形にしました。
松田:タブレットタイプの簡易レジもありますが、コミケのブースのような狭いところでは置くスペースがない。そこでスマホベースで、小型でテーブルに置けるものにしました。即売会に特化して作ったレジなんです。
(※コミケのブースは1サークルにつき横幅90cm程度のスペースが割り当てられる)
即売会という用途に絞ったレジ。自分たちが欲しいと思ったものを作ったということだが、IT系だという松田さんと組み込み系だという斎藤さん。ソフトウェアはお手のものだろうが、ハードウェアはどのように作ったのだろうか。