「この国はとにかく人が少ない。だからサービスには人手をかけられず、おもてなしは期待できない。それに加えて、あらゆるモノがとても高く付く。日本とは大違いだね」
8月上旬、「特集 独り負け ニッポン漁業」の取材でノルウェーに1週間ほど滞在した。北極圏の街・トロムソの取材で1日を共にした、政府系漁業団体のノルウェー人スポークスマンの言葉が今もなお頭に残っている。
ノルウェーの人口は約500万人。同じ国土面積を持つ日本(1億2558万人)のたった25分の1しかいない。当然、スーパーに行っても店員はレジに1人か2人が待っているだけ。
高い生産性を支えるのは高い物価?
そして、確かにノルウェーでは全てが高かった。ポテトチップスが1袋で500円。マクドナルドのセットは1500円。レストランでランチを頼もうものなら、1人2~3千円の出費は覚悟しなくてはならない。水やパンなど最低限の必需品くらいは安く売っているかと思うと、そんなに甘くない。500mmのペットボトル一つ買おうにも300~400円程度は必要となる。
人が少なく品物やサービスが高い。それは生産性を求める数式の上ではよく見える。経済協力開発機構(OECD)のデータから、国内総生産(GDP)を労働参加者数で割って、2015年の労働生産性を求めた。ノルウェーは約11万7000ドルと加盟国35カ国中4位。20位で7万8000ドルの日本をはるかに上回る。
ノルウェーよりランキング上位のアイルランド(1位、約16万4000ドル)とルクセンブルク(2位、14万6000ドル)はどちらも小国で金融機関の集積国。ノルウェーは3位の米国(11万9000ドル)ともさほど違いは無い水準。国内にこれと言った大企業や金融機関を持たないノルウェーが、これだけ高い生産性を保っていることはまさに驚異的だ。
生産性は単純化すると付加価値÷人手で求められる。冒頭のコメントにあったようにノルウェーでは、とにかく人手をかけない。100万匹のサーモンを育てる養殖場をたった2人で管理。100席以上ある空港のカフェでも、2~3人の店員で回している。IT(情報技術)などで効率化を進めている側面もあるが、純粋に人がいない。人手が足りないから、サービスが不十分な点は我慢してくれと言ったスタンスだ。従って、先ほどの生産性を求める式の分母が小さくなる。だから生産性の数値を効率よく稼げている。