太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

30過ぎても「学生さん?」と聞かれるネオテニーと育ボスブートキャンプ

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30過ぎても訪問販売に「学生さん?」と聞かれる

 ここ最近はすくなくなったのだけど、30歳過ぎまで住んでいた家賃4万円のボロアパートには訪問販売の営業がひっきりなしにきていた。基本的には居留守を使うのだけど、宅配を待っていたり、通信や水道の管理業者を装った販売員のためにドアを開けてしまうことがあった。

 訪問販売業者に最初に言われるセリフは「学生さん?」であることが多かった。当時も決して若作りしていたわけでもなかったが、学生だらけの家賃4万のアパートからぼさぼさ髪でTシャツ短パンの男が出てきたら、疲れた大学院生と思うのはわからんでもない。

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歳相応の精神性がわからない

 当時は年齢不詳感をちょっと楽しんでいたのけど、実際には「こいつはニートなんじゃないか?」という疑念がある場合に「学生さん?」と聞くらしい。ニートに売りつけるのは難しいから最初に確認しておきたいが、開口一番「無職なの?」って聞くのはまずい。とりあえず年齢不詳で所得が低そうな人には「学生さん?」と聞いて反応を見るらしい。

 35歳の現在は身体的にも中年に差し掛かってきたので流石に「学生さん?」と聞かれることはないけれど、精神性や生活水準としては学生時代からあまり成長できていない。持ち家も自家用車も結婚も育児も介護もない。技術的な課題であれば過去の経験からなんとかなるけど、「子供が熱を出した」みたいなイベントへの共感性が欠けてしまうことがある。

 性的に完全に成熟した個体でありながら非生殖器官に未成熟な性質が残ることをネオテニーと呼ぶのだけど、人間においては身体的に完全に成熟した個体でありながら、精神的に未成熟で適応しきない性質が残る状態がネオテニーなのではないか。ちなみにトラフサンショウウオ科の幼形成熟個体はアホロートルと呼ばれる。アホロートル。

育ボスブートキャンプ

トライアルとして参加した社員たちは、計6日間にわたり、子どもたちのママがまだ仕事をしている17時に退社。保育園へのお迎え、食事、遊びなど、21時頃まで子どもたちと一緒に過ごした。

 リクルートには育児しながら働く人の生活を体験することで、社員のダイバーシティを理解するための「育ボスブートキャンプ」という研修がある。30過ぎても独身だったり、配偶者に家事を任せきりである方が仕事上の成果をあげて管理職になりやすいが、フルコミットから生まれるキャパシティや付き合いを他者にも要求しがちで組織には悪影響となることがある。

 ほとんどの人々は最初に家族生活があって、次に仕事がある。そんなことさえ実感できないネオテニーな中間管理職候補が増えてしまったことから、このような育児体験研修の需要がでてきたのだろう。30過ぎても「学生さん?」と聞かれていたことを噛みしめる。せめて想像力を働かせたい。