まさに、水を得た魚のよう。
かつて在籍していたグループでは、クセのある節回しで勢いをつけながら伸びやかな歌声を大きく響かせる唱法で知られていたが、ソロとなり、独りで数々のステージに立つことで経験を積み、また、様々なタイプの曲を歌っていくことで、その歌に緩急や陰影や表情や説得力が施されていった。それは、あたかも“新たな自分”を発見したかのような、いや、“本来の自分”を見つけたかのような…。
大阪を拠点に活動していたガールズグループ、Especiaを昨年2月に卒業した脇田もなり。一時は歌うことも諦めかけた彼女だったが、意を決して上京し、ひょんなことから現レーベルと邂逅。昨年9月にソロとしてステージ・デビューを果たした後、11月にはシングル「IN THE CITY」でソロ・デビューを果たす。その後も多くのライヴで研鑽を積み、さらに2枚のシングルをリリースした後、7月には待望のアルバム『I am ONLY』をリリース。“決意の再デビュー”より一年足らずで早くもアルバムを完成させたのだ。
そこには、西寺郷太、ikkubaru、はせはじむ、マイクロスター、矢舟テツロー、新井俊也(冗談伯爵)、Illicit Tsuboi、YUI(バクバクドキン)、長谷泰宏(ユメトコスメ)、そして福富幸宏といった豪華な制作陣がその腕を振い、個性を競い合いながら作り上げた珠玉の楽曲群が並んでいる。
それらに対峙する脇田もなりも、決して臆することなく、自身の力量を存分に発揮している。独特の節回しで伸びやかに歌声を響かせる、いわゆる“もなり節”を随所に効かせつつも、時に抑制された語り口となり、時にゆらゆらと夢うつつを彷徨うような口調となり、時に郷愁や哀愁を滲ませ、時にいたずらっぽく言葉遊びに興じる。あたかも“七色”の声をモノにし、複雑で重層的な情感を変幻自在に描き出しているかのようだ。
ソロ・デビューより一年弱でアルバムリリースに漕ぎ着けたことももちろん賞賛に値するが、それ以上に、これほど素晴らしい作品を作ったことに驚きを隠せない。そしてさらに、9月8日にはバンドを従えての初ワンマンライヴを行なうまでとなった。
そんな彼女にアルバムについて、ライヴについて伺った。
──アルバム『I am ONLY』がリリースされました。今の率直なお気持ちは?
そうですね。少しずつ新しいファンの人も増えてきて、「曲がいいね」とか言っていただいて…。でも「脇田もなりってアッパーな曲しか歌えない」っていうイメージがあったみたいで、逆に「高いところを歌った方がすごいいいのに」といった声も聞こえてきたりしたので、なんかそのイメージは変えたいと思っていたんですよ。だから、アルバムにメロウな曲を入れたり、ヒップホップとかゆるふわな感じとか入れたりして、それが盤になってリリースされると、「え?脇田もなりってこんな歌も歌えるの!?」みたいな反響が私のところまで届いていて、「やった!」と思いました(笑)。辞めなくてホントによかった、アルバムを出せてホントによかった、って思いました。
──どんなアルバムになりましたか?
私がこれからもっと上に行くための“スタート”となるアルバムです!え?合ってるかなぁ(笑)。何て言ったらいいんですか?(笑)あんまり聞かれたことがなくて(笑)。
──え、そうなんですか???それは答えを用意しておいた方がいいと思います(笑)。
そうですね(笑)。逆になんだと思いますか?
──先日何かでおっしゃってましたが、ジャケットが4色に分かれてるじゃないですか。そんな風に自分の声がいろんな色で表現できているアルバムだ、と。ですよね?
そうです!そうです!自分の中の人格が4つあります!みたいな(笑)。
──ですよね。まあ人格もそうですけど、あと、前のグループだとある意味1色だった声色が、今は4色かさらに多くの色が出せるようになった、というか…。
はい。もっと、それ以上の声が!(笑)