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朝永振一郎さんの繰り込み理論とはどのようなものですか。

mitsuaki07412さん

2012/8/1501:02:54

朝永振一郎さんの繰り込み理論とはどのようなものですか。

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zas_legrusさん

2012/8/1509:04:52

当時、量子力学や不確定原理の効果を考慮して計算を行うと「無限大」の数値が出てきてそれ以上計算できなくなる事が物理学者の頭を悩ませていました。計算で予測出来ない理論は役立たずなので何とか「無限大」を回避する方法を模索していたのです。通常「無限大」A-「無限大」Bの計算は出来ませんが、朝永振一郎博士はこういった「無限大」を含む式の答えを定義値として扱ってみることにしました。たとえば電子の電荷を計算しようとすると、電子の本来の電荷Aが「無限大」で遮蔽効果Bが「無限大」で差を計算できないのですが、実験で得られている電子の電荷をこの式の答えとして扱うことで、今まで計算できなかった他の多くの計算式を計算可能に出来ることを発見しました。「無限大」を「無限大」で打ち消すことから「繰り込み」理論と呼ばれました。要は「無限大」に付きまとわれて何も計算できなかった理論に対していくつかの「計算できないもの」をあきらめることで「計算できる」ものがあることを発見したわけです。その後「繰り込み可能」性は理論の「対称性」と深く関わっていることがわかり場の理論を発展させる大きな手がかりになりました。

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onetarou2010さん

2012/8/1511:47:56

下の方々の文は正しいのですが、難しい……

ので、僕も書いてみますね。


繰り込みの方法というのは、場の理論における無限大の解消法です。

素粒子の記述を可能とする候補として、場の理論が構築されたわけですが、この理論には至るところに発散が現れ、多くの人がさじを投げました。

場の理論は、場と、その場の基本的運動を記述する運動項、その場がどう反応するかの相互作用項で構成されます。
これらから出発して、反応の散乱振幅などを計算しようとすると全部発散して意味のある答えが出てこないのです。

特に相互作用の結果、粒子がループを撒くような反応があったりする振幅は悉く発散しました。

朝永さんは、それでも場の理論の可能性を信じ、これらの無茶な発散は紫外効果(高エネルギーでの振舞い)を適切に扱っていないからだと考え、とりあえずの処方箋として、発散は紫外効果から来る寄与でどうにかなって悉く消え去っている、としたのです。

つまり、発散が出るたびに、それを相殺する項を導入し、それを無視したのです。

相当無茶な考え方ですよね?実際、そういった相殺項を無限に登場させなければならない場の理論もあり、それはさすがにやりすぎです。

でも実は有限な相殺項だけで相殺が済んでしまう理論もあったのです。これを繰り込み可能な理論と言います。これくらいなら許されそうですよね?実際その背景には非常に物理的な背景があるのですが、それが理解されるにはウィルソンさんの登場を待たねばなりませんでした。

繰り込み可能な理論の代表例に、U(1)ゲージ理論と呼ばれるものがあるのですが、この理論はなんと電磁気相互作用の実験結果を非常に精密に再現してしまったのです!

朝永さんが無理繰り導入した相殺項の考え方で、なんとか扱える理論があって、それが電磁気相互作用を記述してしまったというのは当時の人にとってはまるっきりの偶然でした。

即ち言ってしまえば、朝永さんやファインマンの考えた繰り込みの方法と言うのは、とりあえず現れた邪魔な発散をよくわからないところでどうにかなってると開き直って、全部無視するという非常にad hocな考え方なのです。

結果がよかったからいいものの……やっぱり物理学者にはきちっとした所も、アバウトなところも必要なんですね

但し、このように低エネルギーの物理が、繰り込み可能な相互作用だけを持つ理論でうまく記述できてしまうという幸運としか思えない事実は、実はウィルソンの繰り込みの考察を経ると、非常に当たり前(は言い過ぎかもですが、物理的に十分納得できる)ものなのです。

繰り込みに興味がおありなら、一通りファインマンの方法を勉強した後、ウィルソンの繰り込み群の方法にも是非手を伸ばしてください。そこまでやって初めて繰り込みという手法の(あるいは、繰り込み可能な理論のみを考えることの)物理的正当性が留保されるのですから。

nbr32nknshさん

2012/8/1511:18:23

[mitsuaki07412SI]

電子場と電磁場の相互作用を記述する理論を量子電磁力学といいますが,量子電磁力学で反応の起こる確率を摂動論という近似法を用いて計算すると,最低次はいいのですが,その次のオーダーを計算すると発散,すなわち無限大が現れ,答えが出せなくなります.そこでその無限大をどう処理すればよいかか1940年代の素粒子論最大の問題でした.朝永氏はこの問題を「自己無撞着引き算法」という方法で解決しました.同様な理論は,シュヴィンガーやファインマンによっても独立に提起され,「繰り込み」と呼ばれるようになりました.
これは形式的には「無限大引く無限大」なので,数学者からは長い間無意味だと言われてきましたが,そうではなくてちゃんと物理的意味のある計算法なのです.パラメータαを含む関数の積分が発散していたとしても,その被積分関数からそれのα=0の値を引き算したものの積分は収束するということはよくありますね.この積分値は元の積分とは定数だけ違っているかもしれませんが,有限というわけです.そしてそのパラメータ依存性は元の積分と同じですね.つまり定数部分の情報が失われただけで,ほとんどの情報はちゃんと残っているわけです.そこでこの定数部分をうまく処理すればいいのですが,うまいゴミ処理場があったのです.それは,量子電磁力学の理論に含まれている2つのパラメータ,すなわち電子の質量と荷電の大きさです.理論に入れておくこれらのパラメータの値を,それらの観測値と同じにとらなくてはならない理由はありません.実際それは「輻射補正」という補正を受けるべきものなのです.そこで,この輻射補正を計算することを諦めて,この部分をゴミ処理場として使おうというのが,繰り込み理論のアイデアです.
そして,ダイソンによって証明されたように,この方法は完全にうまくいきました.

のちに量子電磁力学以外の理論では必ずしも繰り込みはうまく機能しないことがわかりました.弱い相互作用(ベータ崩壊などを記述する)の理論です.しかしそれでは困るので,それを繰り込み可能にした電弱理論というものが提起されました.これには最近話題になっているヒッグスが必要なのです.つまりヒッグス粒子がなければ,弱い相互作用を繰り込み可能にできなくなるわけです.

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