増える内部留保、なぜ?
9/1(金)、平成28年度の法人企業統計が財務省から発表された。
朝日新聞にも関連する記事があったので、ここに掲載しておく。
日本企業(金融業・保険業を除く)の内部留保は過去最高の406兆円に達した。
下の表より、2012年から100兆円も伸びていることがわかる。
法人企業統計 : 財務省から拝借
では、日本企業はなぜ内部留保を増やそうとするのか?
そもそも内部留保とは何か?
内部留保とは、下記のような意味だ。
内部留保とは、企業が経済活動を通して獲得した利益のうち、
企業内部へ留保され、蓄積された部分を言う。『Wikipedia』から引用
企業が経済活動を通して獲得した利益から企業外部へ支払うのは、主に株主への配当金だ。
株主への配当金を支払い、手元に残った(=企業内部へ留保された)ものを内部留保と言い、利益剰余金と呼ぶこともある。
いわば、"企業にとっての内部留保"は、"個人にとっての可処分所得"だと考えるとわかりやすいだろう。
簡単に言ってしまえば、内部留保とは企業にとって自由に使えるお金のことである。
景況感は回復基調にある
財務省の法人企業統計より、売上と経常利益は増加傾向にあり、景況感はリーマンショック以降から回復基調にある、と言える。
法人企業統計 : 財務省から拝借
さらに、実は日本企業の設備投資額は増加傾向にある。
マスコミの報道により、「日本企業の設備投資額は伸びていない」という先入観が刷り込まれているが、そんなことはない。
日本企業だってちゃんと設備投資にかけるお金を増やしているのだ。
内部留保を増やすのは環境の変化が要因
では、最初の問いに戻ろう。
日本企業はなぜ内部留保を増やそうとするのか?
それは、"VUCA(ブーカ)"と呼ばれる環境の変化が要因である。
VUCAとは、"Volatility(変動)"、"Uncertainty(不確実)"、"Complexity(複雑)"、"Ambiguity(曖昧)"の頭文字をつなぎあわせた造語だ。
これら4つの要因により、現在の社会経済環境がきわめて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表す言葉である。
新しいテクノロジーが急速に発達し、既存の枠に捉われない商品・サービスなどの選択肢がどんどん出現する変動の時代。
計画を立て筋を通して活動しようとしても、自然災害やテロなどのリスクや展望を予測しづらい不確実な時代。
消費者のニーズや行動が多様化し、従来のように画一化して商品・サービスを提供することが難しい複雑な時代。
新しい商品・サービスの出現により、法が整備されるまでの間、ルールや決まりごとのない領域が少なからずできる曖昧な時代。
そのような予測困難な状況の中、無闇に投資額を増やすのではなく、"何かあった時のために"内部留保を増やそうとするのは、自然なことだろうなぁと思う。
しかし、内部留保を貯めすぎて、新しいテクノロジーなどに投資をしなくなったら、時代に取り残されてしまう時代でもある。
"守り"の内部留保を確保しながら、"攻め"の投資を実行していくバランス感が大切な時代になったのだと感じる。