福井大子どものこころの発達研究センターに、福井県の寄付で新しく児童青年期を専門とする精神科医の育成部門が設置され、31日、活動を開始した。日本の児童青年精神医学の第一人者で、教員に就任した杉山登志郎客員教授が記者会見し「国際的な基準で診断する専門医育成研修プログラムを日本で初めて導入する。福井県の児童青年精神医学分野の発展に寄与したい」と抱負を述べた。
背景には県内の精神科医不足がある。全国的に精神疾患がある人の増加が指摘される中、県内の精神科医は86人(2014年)で、人口10万人当たり10・9人。全国の11・9人を下回っており、特に日本児童青年精神医学会の認定医は昨年度末まで県内はゼロだった。
精神疾患の発症の多くは、児童青年期とされており、県では、専門医による適切な診断、治療が不可欠と判断。さらに児童虐待対応件数も増加しており、虐待を受けた児童の専門的なケアも急務で「子どもの心の問題に対応できる人材育成が重要」とし、福井大のセンターに部門設置を依頼した。
設置されたのは「児童青年期こころの専門医育成部門」。設置期間は5年間で、事業費として毎年約3500万円を寄付。5年後には6人程度の専門医を確保したい考え。
会見には育成部門の教員4人のうち、杉山客員教授、鈴木太准教授、牧野拓也特命助教の3人が出席。杉山客員教授は、児童青年期精神科の現状について「これまでは子どもの約10%を想定して診察体制を整えてきたが、最近は15%が最低限だ」と述べ、専門医の体制構築が重要との認識を示した上で「科学的な診断が日本では十分に行われてこなかった。きちんと診断できる医師を育てたい」と話した。
杉山客員教授らによるキックオフシンポジウムが同日、行われ、福井大医学部の医師や教育機関の関係者ら約80人が参加した。