中国が米朝に仕掛けた「二重凍結」というワナ

この国の意図は、危機解決ではない

二重凍結を米朝に迫る中国の意図とは(写真:Petar Kujundzic/ロイター)

北朝鮮の独裁者、金正恩氏は、米国は「何千倍もの代償」を支払うことになると言い、ドナルド・トランプ米大統領は、「世界が見たことのないような炎と怒り」に北朝鮮は見舞われると警告する。激烈な言葉と軍事的威嚇の応酬が過熱する中、危機を平和的に解決する方法はあるのだろうか。

一部では「二重凍結」がその答えとされる。米韓による合同軍事演習の凍結と引き替えに、北朝鮮は核・ミサイルによる挑発を凍結するという案で、中国が最初に提案し、次いでロシアが支持した。

二重凍結には本質的な欠陥がある

一見、これは理にかなった妥協案のように見える。核・ミサイルの発射実験ができなくなれば、北朝鮮の軍事力は現状に据え置かれる。韓国との合同軍事演習を停止しても、米国の圧倒的な軍事的優位性が揺らぐようには見えない。

だが、米国は中国の提案を一蹴した。すでに国連安保理決議に違反している行動を止めるだけで、北朝鮮が見返りを受けることになるからだ。これは危険な前例となりかねない。

また二重凍結には2つの本質的欠陥がある。1つ目は、協定違反の代償が均等ではないこと。金政権が核開発を再開した結果、本格的な核兵器を持つに至ったら、米韓が被る損失は深刻かつ取り返しのつかないものとなる。

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  • NO NAME5423e687c818
    中国は制裁を口にしながらも、肝心の「石油禁輸」には踏み切っていないどころか、輸出量は増えている。ロシアは、「外交的解決を図るべき」といいながら、ひそかに北朝鮮にミサイル技術を提供している。こういうイカサマを続けているのは、日米に対する「鉄砲玉」として北朝鮮が彼らにとって都合がいいからである。

    中露とも、北朝鮮カードを持つことによって、日米に政治的妥協を強いることが可能となる。中国が何とかしてくれると思ったトランプ政権はいまだに、対中経済制裁を発動できずにいる。さらには南シナ海の軍事要塞化への目くらましとして、北朝鮮カードは有効である。

    西側から経済制裁を受けているロシアにとっても同様で、北朝鮮カードをちらつかせながら、米国に譲歩を迫るわけである。こういう狡猾な中露外交の本質を、もっと国連の場で明らかにし、日米が訴えていくことが必要だろう。
    up18
    down2
    2017/9/3 08:19
  • NO NAME97854192a923
    危険な意見かも知れないが、そろそろこの問題に決着をつける時期ではないか。北を叩き潰す(または首をとる)か、南北統一。いつまでも譲歩していると本当に手がつけられなくなるだけ。決断の時!
    up9
    down4
    2017/9/3 09:16
  • NO NAMEd821fa463be5
    目の前に蓋をしてさえいない落とし穴があっても、それをワナとは言いません
    up2
    down0
    2017/9/3 12:29
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