鍵盤弾き、キーボードプレーヤーはバンドのフロントマンにはなれない。ボーカリストやギタリストのようにステージの前に出ていって派手にプレイしたいと思ってもなかなか許してもらえない。
キーボードの要塞に囲まれて、その中でナイフを刺したり飛んだりはねたり後ろ向きに弾いたりして注目されるのはごく少数だ(キース・エマーソンだけだ)。
そんな欲求不満の一般鍵盤プレーヤーに朗報だ。「ボーカロイドキーボード VKB-100」が製品化される。値段は4万円で12月発売。当初と違い、肩からギターのように下げて演奏するショルダーキーボードのスタイルになった。これならステージで派手に暴れまわっても大丈夫。初音ミクによるボーカルもとれるし、シンセサイザーのリードも、バッキングだってできるのだから。
とりあえず、弾いてきた動画をどうぞ。
ボーカロイドキーボードを弾いた感想に入る前に、鍵盤弾きの先人たちが過去、どうしていたのかをひも解いてみよう。
肩からかけて演奏するスタイルのキーボードは、日本ではショルダーキーボードと呼ぶが、それ以外の国では一般的にキーター(Keytar)と呼ばれる。キーボード+ギターということだ。
演奏スタイルとして最初期に有名だったのはエドガー・ウインター。ARPのキーボードコントローラーを首から駅弁売りスタイルでかけて、「フランケンシュタイン」を演奏している1973年の動画がある。
製品として最初に登場したのはモノフォニックシンセ+オルガンのMoog Liberationで1980年のこと。シンセサイザーのパネル部分が大きく不格好だったが、ジョージ・デュークなどが愛用していた。
一般販売はされなかったものの完成度が高く、MIDI登場前でありながらポリフォニックまで実現していたのが、Utopiaのメンバーだったキーボードプレーヤーのロジャー・パウエルが自作したPowell Probe。1980年前後のUtopiaのライブで使っていたが、さらにこれをカスタマイズしたものをヤン・ハマーに提供し、ヤン・ハマーはジェフ・ベックとのギターvs.シンセバトルに使用した。このProbeは残念ながら火事で消失してしまい現存していないのが残念である。
ロジャー・パウエルはロバート・モーグ博士の弟子であるとともに、ARPで研究開発にも従事。プログラマーとしても優秀で、Apple II用のデジタルシーケンサーを開発し、Utopia解散後はSGI、Appleのさまざまなオーディオプロジェクトで成果を残してきた。
Wikipediaにはキーターとそれを使ったミュージシャンがリストアップされている。近田春夫が使っているHillwood RB-1という1977年のシンセ/エレピはたしかにハルヲフォンのライブで使っている写真を見たことがあるような。
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