前回のサイロの記事をお読み頂きありがとうございました
頂いたコメントの中に「そもそもサイロが分からない」とのご意見がありました。
生まれも育ちも北海道の自分としては、サイロは特に珍しいものではなく、郊外へ行くとよく目にする景色の中の一部でありました。
なので何の疑問もなく普通に記事にしてしまいましたが、北海道外の、特に若い方が『サイロ』が何なのか分からないとしても不思議ではないのです。
これは説明しなかった自分の不手際でした。
先日、実家が農家という方に農業についての話しを聞いていた事もあり、これは説明せねばと『サイロ~その役目』として記事にさせて頂きます。
※ 記事は少々長いです。お急ぎの方はブクマークをされて後ほどお読み頂ければ幸いです (笑)
そもそも『サイロ』とは
簡単に言うと、冬場に牛などの家畜が食べる餌の保存庫なのです。
冬場に雪に覆われる北海道では、夏場に刈り取った牧草を衛生的に保存しなければならなく、乾燥した牧草を集めて保存したものが貯蔵庫『サイロ』と言う訳です。
本州では通年を通して飼料が確保出来た為、このサイロの風景は主に北海道で普及したようです。
飼料用牧草の作り方
牧草は刈って干して集めるものだとしか認識がなかった自分ですが、話しを聞くと、これがまた手間がかかるものでした。
北海道では5月~9月頃までの間に、家畜が食べる1年分の牧草を収穫しなければいけません。
その牧草の量たるや半端ないのです。
まず刈り取った牧草はカビの発生を押さえる為に数日かけて畑に広げて天日干しをし、何度もひっくり返しながら乾かします。
乾燥が進むと機械で圧縮し、ロールにしてサイロへ保存。
サイロの中で自然発酵させていたのです。
年代別 保存方法の変換
ざっとですが年代別に見ていきますと
1950年~70年代、牧草ロールを作る機械が普及し始めると、20㎏程の牧草ロールを何百個と作り、トラクターで集めてサイロに保存していました。
70年~学校給食などで牛乳が使われるようになると、小さな農場では対応しきれず、徐々に規模を拡大した農家が増えていきました。
それに伴い大型のタワーサイロやコンクリート製の大きなサイロが次々と作られたそうです。
ひとつ300㎏大の干し草ロールを作る機械が出始めた1980年代後半から、畑にサイレージが見られるようになりました。
サイレージとは周りをポリシートでラップしたものであり、雨などの水分を弾く為、内部が湿気ることがない作りなのだとか。
このサイレージは倉庫に運ぶ必要がありません。
その場でラップができ、外気を遮断出来るだけでなく、約40日後には中で発酵し良質の牧草が出来上がる仕組みとなっているのです。
このサイレージの普及により、サイロに運び発酵させる手間もなくなったのです。
牧草の保存方法が景色を変えた
広大な牧場とサイロのある風景。
北海道の農場で見られる風景ですが、こののどかな風景も時代と共に変わってきました。
サイレージが畑に積んである風景。
今はこれが一般的になっています。
1枚目の写真のような小さなサイロは、ひと昔前、酪農を主としていない農家が、飼っていた家畜の為に使っていたと思われます。
使われなくなってどれくらい時間が過ぎたのでしょう。
もう新しいサイロが作られなくなったとしたのなら、この写真のような現役を引退したサイロはただ風化していくだけなのです。
サイロのある風景。
これから先この風景が、北海道でも珍しいものになって行くのは時間の問題なのかもしれません。
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