料理が苦手。というか、食べるものにあまり興味がない。胃腸も弱いし、食べつけないものを食べることに恐怖もある。なので、大体おんなじようなものを、お腹が減らない程度食べられればそれで良い派だ。私にとっては、心の栄養になりそうな、感動できる音楽や本や絵の方がよっぽど優先順位が高い。
被害を受けるのは家族だ。それに関しては主婦として負い目がある。料理上手な人、旬の食材を使う人、ありもので美味しいもの作れる人、が家に居てくれたら家族はどんなに幸せだろう。と真剣に思う。「もっと美味しいものを食べたい。料理上手の子と一緒に住みたいから離婚して。」と言われたら、もう打つ手がない。と、いつか来るかもしれない「印籠の渡される日」を覚悟しながら生きている、と言っても過言ではない。
結婚をしてから10年くらいは、それでも、何とか「美味しい料理をだそう」と頑張っていた。家族の健康の管理も兼ねている主婦としての一番重要な仕事だと思っていたし。でも、恐ろしく肩肘張って頑張っていたんだろう。ちょっとしたトリガーでビックリするくらい腹をたてたりしていた。
「あんまり美味しくないね?」
「またこれ?」
「焦げてるね?」
とかのたわいもない家族の一言で頭に血が上った。細々と仕事を始めて、少しずつ仕事が増えていって、(自分では気づいてなかったけど)キャパオーバーになってた時なんか、そんな一言で床に皿ごと料理を投げ捨てたこともあった。(娘をひどくビビらせたし、皿が割れたので後片付けも大変で、全く本当になにやってんだか…状態)
そんな明らかに普通でない状態がしばらく続いてから、もう料理に関しては諦めることにした。もう、降参しました。はい。すみません。私は大した料理作れないし、作れるようになりたいとも思えないんです。こんな私で許して!!
以後、私の料理は「ネタ」と化している。私のレパートリーの少ないショボイ料理に常にツッコミが入る。そして全員で爆笑。だって本当にショボくて自分でもウケる。もう降参してるから「頑張ったのに!」「大変だったのに!」なんていう負けん気は出てこない。ただただ爆笑。
先日出した料理が「しし唐とウィンナー」。その名のとおり、しし唐とウィンナーを一緒に炒めたという一品。
娘「うわ。なにこれ。」
私「しし唐とウィンナー」
旦那「なんか村上春樹の小説にありそうやな。」
私「確かに。」
娘「しし唐とウィンナーの味がする。」
旦那「コラボらずやな。」
娘「コラボってないな。」
そこから延々と「しし唐とウィンナー」の組み合わせがいかにイケてないかをネタにして笑い続ける一家。
最近では、美味しいものが食べたいなーと思った旦那がクックパッドを見ながら料理をしてくれる時もある。餃子、カルボナーラ、ハンバーガー(バンズも作ってた)。
わーい!と大喜びで食べる。
私がガチガチに硬くなって料理を必死に作ってた時には、旦那が「料理を作ろうか?」なんて瞬間は全くなかったのに、私が降参したら「じゃあ、俺が」みたいになってきて意外だった。だって昭和の男だし、そういうこと本当にしなさそうだったから。降参したら、こんなに良い事が!と嬉しい驚き。いや、でもさすがにいつか印籠を渡されるかも、という気持ちは消えないのだけど。だけど、もしかしたら、こんな風にポンコツながらも上手くやっていけるのかもな。とも最近思っている。感謝の気持ちは忘れずに、甘えていけば良いのかなって。