きっかけは大学生のとき通っていたレストランでした。
バイキングのお店だったんですが、ものすごく安かったので友達とよく通っていました。
何度か通っているうちに、店員のおじさんとも仲良くなりました。
ある日、いつも通りバイキング料理を食べていたら、店員のおじさんが話しかけてきました。
「僕は本当は外資系上場企業に勤めているんだ。インターネットで仕事をしていいて、レストランの仕事は趣味なんだ」
完全に怪しげでした。
そのあともずっとなにか説明していましたが、話が漠然としていてまったく意味がわかりませんでいた。
でもとりあえず、ごはんをおごるから君たちも会議に出なよ、と言われたのだけはわかったので、ラッキーと思い僕たちは参加することにしました。
当日、レストランの入っている建物の3階に行ってみると、スーツ姿の人たちがたくさんいました。
そこには店員のおじさんもいて、なにかいろいろ言っていましたがやっぱり何を言っているのかわかりませんでした。
とりあえずそのセミナーに参加してみると、ニュースキンという会社の説明と、ビジネスの仕組みの説明をしていました。
そして権利収入の話もしていました。
僕と友達は、意味はよくわからなかったものの、権利収入ってなんかすごい、と軽く興奮しながら話していました。
そこにレストラン店員のおじさんがきました。
「実はレストランを経営している社長がこの仕事の社長もしているんだ。運よく話をしてもらえるらしいから、ごはんを食べながら話そう」
社長さんと話せるということで、少し緊張しながら僕たちはレストランに向かいました。
社長さんはヤクザみたいな見た目をしていましたが、周りの人たちが社長さんを
「この人見た目だけはやけに怖いからなあ(爆笑)」
といじっているのを見て、怖い人ではないのかもな、と思いました。
社長さんはすごい速さで食事を終えると、僕たちのことをいろいろと聞いてきました。
あまり詳しくビジネスの話はしてくれませんでした。
ただひとつわかったのは、学生はまだそのビジネスをすることはできないということでした。
最後に、また来てね、と言われてその日は終わりました。
その後何回かセミナーに通っているうちに、なんとなく全体像が見えるようになってきました。
ニュースキン社はネットワークビジネスというビジネスモデルで商品を売っている会社であること。
商品は健康食品や化粧品であること。
とにかく一緒にビジネスをやる仲間を集めて、自分が代理店になること。
すると権利収入が入ってくること。
そして、代理店には集めた仲間の数によってランクがあることもわかりました。
どうやら店員のおじさんはルビー、社長さんはブルーダイヤモンドというランクのようでした。
ブルーダイヤモンドの人はかなり稼いでいる、とにかくすごい人だということがわかり、僕たちは社長さんを尊敬するようになりました。
社長さんはなぜか僕たちのことをすごくかわいがってくれて、いろんな話を聞かせてくれたり、いろんなところに連れて行ってくれました。
社会人経験のない僕たちにとってはとても刺激的でした。
その後も通い続け、大学の友達も何人か連れて言ったりしましたが、僕たちのようにハマりそうな人はいませんでした。
そうこうしているうちに僕たちは大学を卒業しました。
僕はニュースキンにかかわり続けるために、そのまま大学のある県で就職しました。
友達は地元に帰ってしまいました。
社会人になってビジネスができるようになった僕は、さっそく登録してコントリビューターという、ビジネスができる状態になりました。
僕はひたすらセミナーに通ったり、人を連れていったりしました。
日本中のニュースキンビジネス成功者の話を聴く機会が何度もあって、僕は完全にハマっていきました。
僕も絶対に成功するんだと気合十分でした。
でもその気合とはうらはらに、まったくと言っていいほど結果がでませんでした。
僕は証券会社で営業の仕事をしているとはいえ、その時はまだ入社して1年目。
営業スキルはまだまだ未熟です。
人脈もまだほとんどありません。
結局、登録してから1年経っても、できたダウンラインは3人だけでした。
ひとりは、小学校時代からの友達。
もうひとりは大学時代の友達。
そしてもうひとりは大学時代のバイト先のおばちゃんでした。
エグゼクティブという、タイトルを持った代理店になるには、月に(たしか)20万円の売り上げが必要だったのに、僕の売り上げは数万円。
ダウンラインの3人も結果が出ませんでした。
そうこうしているうちに、僕は本業の仕事が忙しくなってきて、ニュースキンのセミナーには通わなくなっていきました。
誰かを勧誘するということもしなくなりました。
その後、僕は証券会社の仕事で精神を病んで、退職。
地元に帰ることになります。
その辺のことはここに書いてあります。
その数年後、地元で就職した会社の出張で、東京に行く機会がありました。
僕はふと思い立って、ニュースキンジャパンの本社がある新宿のビルに行ってみました。
そこには、成功者の証であるブルーダイヤモンドや、さらにその上のランクのチームエリートになった人たちの写真が飾ってあります。
僕は久しぶりに顔でも見たいなと思って並んでいる写真を見てみました。
当時チームエリートだった人やブルーダイヤモンドだった人たちの顔はほとんどありませんでした。
あれ、おかしいな、何かあったのかなと思い、その後ネットでいろいろ調べてみました。
どうやら、みんな当時のタイトルを維持できずにランクダウンしてしまったようでした。
僕はそのとき、ネットワークビジネスというのは成功するよりも成功を維持する方が圧倒的に難しいのだと知りました。
いくら一時的にお金を稼げても、それが10年すら続かないのであれば意味がないと僕は思いました。
ただ、僕は今でも、ネットワークビジネスが完全に悪いビジネスモデルだとは思っていません。
ちゃんとしたやり方でビジネスをするのであれば、やりがいがあって刺激的なビジネスだと思います。
ただ、残念なことに、ネットワークビジネスの世界で主流になっている手法が良くありません。
ビジネスをする人たちがもっと正しいやり方でやっていれば、こんなにネットワークビジネスのイメージが悪くなることはなかったと思います。
そして、もっと正しいやり方でやっていれば、数年しか持たないような組織になることもなかったと思います。
でもそれはどうしようもないことなんだろうなとも思います。
ネットワークビジネスをする人たちの大部分はビジネス経験もなければきちんとした営業経験もないような素人です。
そんな人たちが、とにかく早く大きな結果を出したいアップラインの人たちに誘導されて行動する。
そんな負の連鎖はもう止めようがないのだと思いますj。
僕はニュースキンで結果が出ませんでしたが、負債も抱えませんでした。
まだよかったと思います。
きっと、ネットワークビジネスで成功できる人は他のビジネスでも成功できます。
だったら他のビジネスをやった方が長く稼ぎ続けられるんじゃないかと思います。
ただ本当に、僕にとってニュースキンでの経験はプラスになりました。
その時の経験があったから、証券会社でも結果を出せたんだと思っています。
最後に、僕から言えることはこれです。
ネットワークビジネスは、ほどほどにやるならば悪いビジネスではありません。
これからやろうと思っている人は、ほどほどにやりましょう。