「この敵キャラ強すぎない?倒し方が全然想像がつかないんだけど??」
創作やったことある人とか、展開を先読みしながらマンガやドラマを楽しむ人なら一度は考えたことがあると思う。
夢の最強キャラを作ったはいいけど、
「これは倒せないから敵キャラとして成立しない」
「味方としては強すぎてストーリーがちっともハラハラしない」
多分、誰もが一度はぶち当たる問題で、頭がいい人なら問題の深刻さに気づくと思う。
欠点がないとキャラが立たない!?強くて頭のいいキャラは作っちゃいけない?
そのため、僕は持論として
「欠点こそがキャラを立てるのだ!!
肉体的に強くて、頭いいキャラはなるべく創作に出すべきじゃない。
どっちかが程よく弱いキャラじゃないと後々倒せないか、他のキャラとの兼ね合いが悪くなるから。」
と何度か言ってきた。
うまいと思うのは境界線上のホライゾンで、アレだけたくさんのキャラが出ていても肉体的に強くて、頭のいいキャラは少ない。*1
主人公の葵・トーリに至っては頭も弱いし、肉体的にも弱いし、本人も「何もできない」と言ってる。
能力的にもサポートキャラだから、彼自身が仲間のキャラを立たせる装置になっていて、彼は立場や発言で周りをリードするキャラとして存在感を発揮する。
実写で言うとMr.ROBOTがかなりキチッとしていた。
というのも、主人公は根っからのギークで、暴力にはからっきし。
作中最強のスーパーハッカーなのに、拉致されてボコボコにされたり、コンピューターのコの字も知らなそうな不良に軟禁されたり…そういう主人公だった。
この法則を無視した作品で面白いものは珍しい。
特に邦画や、日本のドラマの場合はこの法則を無視すると99%つまらない。
敵が強すぎるか、主人公側が強すぎてストーリーがハラハラしないか、「理由づけが不十分」によるご都合主義感がでてしまうから…。
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完璧な能力を持つキャラを作るなら弱点は能力以外のところにつけるべし!
ところが、真っ向から僕の持論を否定する海外ドラマを僕は見てしまった。
それが主人公「ニール・キャフリー」は身体的にも頭脳的にも最強という「ホワイトカラー」である。
普段は頭脳派だけど、暴力は嫌いだが銃も使えるし、ボクシングやフェンシングもやるし、逃亡と盗みのプロ。
むしろ、ニールを捕まえてFBIに引き入れた捜査官「ピーター・バーグ」の方がバカで脳筋で空気の読めないキャラだから、すごくストレスだった。
ピーターとニールに限らず、作中に出てくる泥棒の中でも何度も出てくるキャラはほぼFBIよりも有能な人ばかり出てくる。
ニール以外にも規格外の超人が何人か出てきて、
・マシュー・ケラー…シリーズ通じてのニールのライバル。ニールよりも頭いいし、ためらいなく人を殺す。「身体的にも頭脳的にも最強キャラ」その2。
・レベッカ・ロウ…5シリーズに出てくる女泥棒。元諜報員なので、詐欺師としてもFBIコンサルタントのニールを出し抜くばかりか、FBIの包囲網を振り切ったり、脱獄したりと高い身体能力もあるし、殺しもためらわない。「身体的にも頭脳的にも最強キャラ」その3。
・アラン・ウッドフォード…シーズン6に出てくる世界最高の窃盗団のリーダー。頭脳はもちろん、身体的にもためらいなく銃を使ったり、銃を使った盗みもこなした武勇伝を持つことから「身体的にも頭脳的にも最強キャラその4」。
身体的にも頭脳的にもFBIも出し抜けるだけの最強キャラが4人も出てくる。
なのに、ちゃんと面白い!!
最強なのに、ちゃんと勝ち方があるし、勝つたびに能力的に劣るFBIが正義側でいられる理由づけや作品のテーマ性が如実になってきて面白い。
身体的にも頭脳的にも最強キャラの弱点の作り方
ニール、ケラー、レベッカ、ウッドフォードのうち3人は欠点が「美学」なのだ。
美学はキャラ付けにも魅力にもなる反面、能力を超えた弱点を産みキャラのバランスをとるのに使える。
ニールの場合は銃も格闘もできるけど、スマートなやり方を好むから能力的には可能だけど、暴力的なことはほぼしない。
だから、同業者に好かれていたり、優秀な相棒がいたり、日頃からのスマートさや趣味の良さから女性に好かれる。味方にも足手まといにもなる誰かがかならずいる。
ニールの対極にいるのがケラーで、ケラーは自己中で即物的で手段を選ばない。
犯罪者として、生き残ることに長けていてすごく強い。
だが、常に誰かとトラブルを起こしていて、取れる手段が限られてしまうことで捕まえられたりする。
でも、この話をする上で、最も面白いキャラはレベッカじゃないかな。
レベッカの場合は、美学が「ない」。
ケラーみたいに「(自己中な範囲で)手段を選ばない」という意味ではなく、余計な個性を発揮せず完璧に依頼をこなすタイプ。
ドライに依頼をこなすタイプではあるものの、ケラーほど自己中じゃないから好きな人ができたらキチッと執着するし、必要もないのにいちいち人を殺したりしない。
残忍性や独自のこだわりがないから警戒されない反面、あくまでも便利なだけだから積極的な支援者もいない。
以上のように、能力があっても、美学(メンタル)や交友関係を使って、キャラがその場で使える能力を制約していくと…キャラクターの能力が高くても、展開がつまんないことにはなりにくい。
ホワイトカラーはこの「最強キャラを制約して面白くする」ことに長けた作品だ!
身体的にも頭脳的にも最強なニールに制約を課すことで、弱い犯罪者が出てきても互角になってハラハラするように調整されている。
例えば、人質や足手まといがいたり、融通がきかないピーター・バーグには内緒で違法捜査や盗みをしないといけなかったり…。
アニメで言うと…攻殻機動隊とか、精霊の守り人といった神山健治作品が近いことをやってると思う。
最強キャラが主人公だけど、その主人公よりも地位が高い人から攻撃される。
「9課の弱点は数」と草薙素子もいうように、少数精鋭部隊 が活躍する話はかっこいいけど、政治的な圧力を前にするとどうしようもなくなってしまう。
シリーズの大半はトリックスターや、カリスマ性のある主人公によるヒーロー活劇のだけど、そのヒーローも地位やツテがないと政治的な圧力や社会の理不尽に飲まれてしまう(生き方やしたいことがあったらその煮え湯さえも飲み干して突き進むべし)…という話が多い。
また、メンタル面の制約もうまく使っていて、草薙素子はシリーズ最大の敵キャラに恋心やシンパシーを持ってしまったり…、バルサはバルサで「不殺の誓い」を立ててるから無敵キャラだけど、無敵になりきらない形になってる。
…邦画・日本のドラマはどうなのかというと…あんまりうまくこの辺のバランス装置を使えてない気がする。(あと、一部の人気ラノベもそうだけど…)
まず、「社会的地位または経済的な余裕がきちっとしたキャラ」が敵キャラに回ることが多いから…「ツテが使えない」とか「敵をたくさん作ってる」という追い込まれ方はしにくい。
…だから、「日本のドラマは敵も味方も貧乏なやつや本当に困ってるマイノリティが出てこないトレンディドラマしかない」って言い続けているんだけどさ…。
逆に味方も味方で、無敵キャラの足を引っ張るキャラも、強く衝突するから足を引っ張ったり、無敵キャラをいい感じに制約するキャラも少ない。
対立 や反対意見を言うキャラを出るけど、それは「バランサー」ではなく、「主人公の反対意見を言うことで、説明役・聞き役に回るキャラ」を設置しているだけのしょぼーいトリック。
挙句の果てに、味方のキャラが強すぎると、おっちょこちょいなやつがおっちょこちょいで足を引っ張って笑えるシーンにしてしまうとか、駆け引きに水を差すだけにしか見えないとかそういう形になってしまうことも多い。
メンタル面の制約は多少使ってると思うけど、それはライトノベルでよく使われる「お人好し」って言葉に集約されていると思う。
逆に、残忍なキャラや倫理観の欠落したキャラが出てこないから「お人好し」と比較するキャラが弱すぎて「お人好しキャラがただ単に融通が効かないやつにしか見えない」という、悪目立ちが起こってしまう。
だから、ラノベが悪も知らないくせにお人好し語ってて子どもっぽく感じるし、日本のドラマについては「悪はおろか変人もマイノリティも描いてないからトレンディドラマしかないし、トレンディであることに複雑な事情もない美男美女によるお遊戯回だ」と言ってる。
…そういう意味で、よくシナリオが練られた作品があるアニメや海外ドラマは参考になる作品が多く、探し回る価値が大いにあると思う。
ラノベにもそういう作品は一部だけあるから、根気強く探せば見つかると思う。
でも…日本のドラマについては、おすすめできないなぁ…。
探しても探しても、バトル系・駆け引き系の創作としてユニークな作品が見つからないから「だったら海外ドラマやアニメ見たらいいや」ってなってしまう。
ただ笑えるものを見たいだけなら、テレ東という救済もあるけど…テレ東は駆け引きや設定がすごいドラマは作らないし…。
・・・色々言ってみたし、考えてみたけど、同時にこういう考えをドラマ見ながらではなく、お話を書こうとして悩んだ人の9割は俺に言いたいだろうなぁ~
「いろいろ考えて、色々ディスってるのは自由だよ?だけど、お前何も書いてないじゃん!」
色んな作品をみて、自分なりの研究をしたい人はAmazonプライムビデオをどうぞ。
ちなみに、作品のリンクを貼った作品の多くは、プライム会員になると見放題になる作品です(ホワイトカラーだけは9月半ばで見放題が一度終わってしまうけどね)
*1:頭脳も格闘もできるキャラいるけど、序盤にはほぼ出てこない。また「頭がいい」の解釈を大きく歪められたキャラほど読み進めないと出てこない