“北 複合微生物工場の大部分が稼動を中断”

北朝鮮が1990年代半ばの‘苦難の行軍’の時期に、食糧増産のために全国的に建設した‘複合微生物肥料工場’の大部分が、現在稼動中断の状態であると内部消息筋が伝えた。

この消息筋は“1996〜1997年にかけて咸鏡道キョンソン郡に建設された複合微生物肥料工場は、建設された後1年間だけ生産をして、その翌年からは生産が中断した。今は空き地だけが残っている”と語った。

北朝鮮のメデイアは最近も、北朝鮮は`複合微生物技術の先進国’と伝え、複合微生物技術と自然農法に対して’食糧危機を解決するだけでなく、生態環境を保護することに大きな意義を持つ’と評価した。韓国のメデイアも北朝鮮の新しい微生物生産技法を肯定的に報道したことがある。

だが消息筋は、“全国的に状況は同じだ。複合微生物工場の大部分が、建設されてからいくらも生産ができなかった。金正日の支持だから仕方なく生産していたが、1年経ってうやむやになった。今は工場の状態は廃墟のようだ”と言った。

北朝鮮は‘苦難の行軍’の時期に、穀類の収獲を増やすことができる肥料が不足すると、全国に110以上の‘複合微生物肥料工場’を建設した。

複合微生物というのは、有用微生物の発見者である琉球大学の比嘉照夫教授が名付けた一種の自然農法だ。一般の堆肥に比べて100倍以上の栄養物質を含んでいると知られ、京畿道のイチョンなど、一部の地域の親環境農法にも利用されている。

北朝鮮の農業科学院などが、90年代半ばに穀類の生産が急減すると、金正日総書記が土壌の酸性化が原因だと指摘して、土を火に焼いて畑に振り撤く方法や、堆肥と土を交ぜたものに化学肥料を少し交ぜて、畑に振り撤く方法、夏季に草を刈ったものを畑に振り撤く方法を取り入れた生産運動を展開した。

だがこのような措置が特に効果をおさめず、金正日総書記は“全国的範囲で複合微生物肥料を大量に生産して、穀類の生産を増やしなさい”という方針を下した。朝鮮総連を通じて複合微生物肥料の生産のための工場の建設を推進して、1997年6月に完工した‘愛国複合微生物センター’を含めて、1年間で全国に100以上の複合微生物肥料工場を建設した。

複合微生物を作り上げるためには、飴粉が投入されなければならないが、原料が高くて大部分で一般の穀類(トウモロコシと米)を投入した。だが、食べ物がなくて人が飢え死にする状況で、3年後に効果が出る複合微生物の生産のために穀類を投入する余裕はなかった。

両江道恵山市の‘愛国複合微生物肥料工場’の労働者出身の脱北者、キム・ヨンファ(仮名)氏は、“1トンの醗酵原液を作るのに350kgのトウモロコシを消費しなければならなかった。とうもろこし350kgあれば、1人が充分に1年間暮らすことができるではないか。1997年から2年間工場を動かし、38t以上のとうもろこしを使った”と語った。

キム氏は“従業員たちには特別に食糧の供給をしたが、トウモロコシ粉から醗酵液まで、こっそりと盗んだ”と言い、“周囲の人たちは私たちに、‘トウモロコシで肥料を作ると言うが事実なのかと聞き、一様に憤慨した”と証言した。

キム氏は“微生物を生産しても、これを運ぶ車と油がなかった。これを保管する容器も、紛失したり破損したものが多くて保存も難しく、液体なので撤く時も大変だった”と語った。

キム氏は当時、農場員たちが3年後になれば、土の中で窒素を生産する菌が育つようになると説明しても、住民たちは信じなかったと言う。とうもろこしの供給も続かず、生産された微生物を農場に振り撤くことにも関心がなく、結局、工場の稼動を中断したと明かした。

北朝鮮の土壌の酸性化を指摘する南側の専門家たちの意見もある。北朝鮮の土壌には有機質の肥料が必要だという指摘だ。食糧難で穀類を原料にする複合微生物団地は、現実から非常に乖離していると脱北者たちも言う。

北朝鮮の農業科学院出身のイ・ミンボク氏は、“1979年から土壌の酸性化が深刻で、金正日の教示まで下った。微生物団地には、一部改善効果があり得るが、農業の国「、治山治水、化学肥料や有機質肥料の生産環境の構築など、総合的な対策がない限り、癌患者によもぎ水を与えるにすぎないことになる”と語った。

内部消息筋は“1996年から急に複合微生物肥料といって騷いだが、実際の効果がないため、1999年から無くなった”と述べ、“平壌の愛国複合微生物センター、ラソンの微生物工場などの大規模な施設以外には、多くが建物だけが残っている状態”と伝えた。

北朝鮮が複合微生物肥料に関心を持ったのは、十分な堆肥と化学肥料を生産することができなかったからだ。韓国政府は今年、北に化学肥料を30万t、来年には40万t(協力基金1千511億ウォンを割当)を支援する予定。

金正日総書記は2004年5月にも、全世界的に化学肥料の生産が、減少しつつあると言い、微生物肥料の利用を強調したと労働新聞が報道した。盧武鉉大統領はこのような金正日総書記を、“金委員長は自らの体制に対する明らかな所信を持っていた”と評価したのである。