JR各社は、2017年も「秋の乗り放題パス」を発売すると発表しました。青春18きっぷの秋バージョンとも言えるきっぷで、JR全線に連続する三日間乗り放題となります。この記事では、「秋の乗り放題パス」の詳細と、青春18きっぷとの違いについて紹介します。
2017年も発売される「秋の乗り放題パス」
2017年の「秋の乗り放題パス」の概要は以下の通りです。
- 利用期間: 2017年10月7日(土)~10月22日(日)のうち連続する3日間
- 発売期間: 2017年9月16日(土)~10月20日(金)
- 値段: おとな 7,710円 こども 3,850円
- 利用可能な列車・路線
- 全国のJR線の普通・快速列車の普通車自由席、BRT(バス高速輸送システム)、JR西日本宮島フェリー
- 普通・快速列車として運転される列車の普通車指定席には、別途指定席券を購入することで乗車可能
- 普通・快速列車として運転されるライナー列車は、ライナー券を別途購入で乗車可能
- 普通・快速列車のグリーン車自由席は別途グリーン券購入で乗車可能(グリーン車指定席は乗車不可)
- 特例で乗車可能な列車・路線
- 奥羽本線 青森~新青森の特急列車(※1)
- 石勝線 新得~新夕張の特急列車(※1)
- 宮崎空港線 宮崎~宮崎空港の特急列車(※1)
- 青い森鉄道 青森~八戸の通過利用(青森・野辺地・八戸で下車可能)(※2)
- あいの風とやま鉄道 富山~高岡の通過利用(富山・高岡で下車可能)(※2)
- IRいしかわ鉄道 金沢~津幡の通過利用(金沢・津幡で下車可能)(※2)
- 秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券
- 北海道新幹線の奥津軽いまべつ~木古内間(普通車指定席の空いている席)と、道南いさりび鉄道線木古内~五稜郭の普通列車を連続して利用できるオプション券
- 値段:おとな 2,300円 こども 1,150円
- 利用期間: 2017年10月7日(土)~10月22日(日)
- 発売期間: 2017年9月16日(土)~10月22日(日)
※1: 区間外にまたがって乗車する場合は、乗車区間の乗車券・特急券が必要, ※2: 下車可能駅以外で下車する場合は、三セク区間の乗車券が別に必要
詳しくは、JR各社から発表されているリリースをご覧ください。JR東日本のプレスリリースへのリンクを貼っておきます。
「秋の乗り放題パス」及び「秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券」の発売について(平成29年8月31日, JRグループ)
「秋の乗り放題パス」って、どんなきっぷなの?
「秋の乗り放題パス」を利用したことがない方向けに、どんなきっぷなのかを詳しく解説します。
一言でいえば「青春18きっぷの秋バージョン」!
「青春18きっぷ」を利用したことがあれば、この「秋の乗り放題パス」は青春18きっぷの秋バージョンだと考えればわかりやすいです。
青春18きっぷは、例年、春(3月1日~4月10日)、夏(7月20日~9月10日)、冬(12月10日~1月10日)の3回発売されますが、秋だけは発売されません。それを補完するのが、この「秋の乗り放題パス」です。
ただし、あとで説明しますが、青春18きっぷとは若干の違いもあります。
どんな列車に乗車できるの?
「秋の乗り放題パス」は、どんな列車に乗車できるのでしょうか?
基本的には、「JR全線の普通列車・快速列車に乗車できるフリーきっぷ」 と覚えておけばよいでしょう。1日あたりたった2,570円でJR全線に乗車できます ので、少し遠出するだけで、あっという間に元が取れてしまいます。
一方、新幹線や特急列車には一切乗車できません。特急券などを別途購入したとしても、「秋の乗り放題パス」を乗車券代わりに利用することはできないのです。この点は注意しておきましょう。
また、私鉄や地下鉄、第三セクターの鉄道など、JR以外の路線にも乗車できません。JR線と直通運転をしていても、JR線以外の区間の運賃が別途必要になります。
一部の三セク路線には乗車可能
「秋の乗り放題パス」では、特例として、一部の三セク(第三セクター)路線に乗車することができます。東北新幹線や北陸新幹線の開業に伴って、従来はJR線だった路線が、第三セクターの鉄道会社に移管されています。その影響で、他のJR線と接続していない、孤立したJRの路線ができてしまっています。JR東日本の大湊線・八戸線や、JR西日本の氷見線・城端線・七尾線などが該当します。
このような「孤立したJR線」に乗車できるようにするために、一部の三セク路線への乗車を認めています。具体的には以下の3線区です。
- 青い森鉄道 青森~八戸の通過利用(青森・野辺地・八戸で下車可能)
- あいの風とやま鉄道 富山~高岡の通過利用(富山・高岡で下車可能)
- IRいしかわ鉄道 金沢~津幡の通過利用(金沢・津幡で下車可能)
注意しなくてはならないのは、前述のように、あくまで孤立したJR路線に「秋の乗り放題パス」だけで乗車できるようにすることが目的ですので、特例で認められた区間を超えて乗車したり、区間内であっても指定されたJR線との接続駅以外で下車したりすることはできません。その場合は、別途、三セク路線の乗車券が必要となります。
例えば、青森から三セクの「青い森鉄道」に乗車して、大湊線への接続駅の野辺地や、八戸線への接続駅である八戸で下車することはできますが、それ以外の「青い森鉄道」の駅で下車することはできないのです。
少し難しいルールですが、対象となる三セク路線は、現在のところ上記の3つだけですので、これらの路線に乗車する場合には、この特例が適用されるかを気にしておけばよいでしょう。
一部区間の特急列車には乗車可能
「秋の乗り放題パス」では、特急列車には乗車できないと書きましたが、こちらもごく一部ですが例外があります。普通列車が走っていない、あるいは、普通列車の本数が極めて少ない区間に限って、「秋の乗り放題パス」での乗車を認めている のです。
具体的には、以下の3区間です。
- 奥羽本線 青森~新青森の特急列車
- 石勝線 新得~新夕張の特急列車
- 宮崎空港線 宮崎~宮崎空港の特急列車
注意点としては、特例として認められた区間内の相互発着の場合に限ってのみ有効であること です。認められた区間の外にまたがって特急列車に乗車する場合は、全区間の乗車券と特急券が必要になります。
北海道新幹線に乗車できる「秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券」
青函トンネルを挟む区間については、北海道新幹線が開業したことにより、在来線の列車がなくなり、新幹線のみの運転となってしまいました。この区間を「秋の乗り放題パス」で乗車したい場合には、「秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券」(2,300円)を別途購入することで乗車できます。
具体的には、
- 北海道新幹線の奥津軽いまべつ~木古内間(普通車指定席の空いている席)
- 道南いさりび鉄道線木古内~五稜郭の普通列車(全線利用のみ・途中下車不可)
を連続して利用する場合に利用できる「オプション券」として販売されています。オプション券1枚につき片道の利用が可能です。
青森から函館までを乗り継ぐ場合には、前後のJR線を含めて、以下のような乗り継ぎになります。
- 青森~津軽二股(津軽線,「秋の乗り放題パス」で乗車可能)
- 津軽二股~奥津軽いまべつ(徒歩)
- 奥津軽いまべつ~木古内(北海道新幹線,「秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券」で乗車可能)
- 木古内~五稜郭(道南いさりび鉄道線, 「秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券」で乗車可能)
- 五稜郭~函館(函館本線, 「秋の乗り放題パス」で乗車可能)
道南いさりび鉄道線は、木古内~五稜郭(函館)までを乗りとおすことが条件です。途中下車する場合には、別途、道南いさりび鉄道線の運賃が必要になります。
青春18きっぷとの違いは?
きっぷの効力としては、青春18きっぷとほぼ同等ですが、いくつか違いがあります。ここでは、「秋の乗り放題パス」と「青春18きっぷ」の違いをまとめてみました。
秋の乗り放題パス | 青春18きっぷ | |
---|---|---|
有効期間 | 連続する3日間 | 5回分 |
複数人での利用 | 不可(1名のみ) | 可能(同一行程) |
1日あたりの値段 | 2,370円 | 2,570円 |
こども用 | あり(半額) | なし |
北海道新幹線オプション券 | こども用半額 | こども用なし |
まず大きく違うのは、「秋の乗り放題パス」の有効期間が3日連続 となるところです。青春18きっぷでは、利用可能期間内であれば連続した日でなくても利用できるのですが、「秋の乗り放題パス」では連続3日間のみ有効という点が異なります。
また、青春18きっぷでは、複数名で1枚の青春18きっぷを利用することが可能でした。例えば、同一行程を2名で旅行する場合、1枚の青春18きっぷを2回分利用して旅行することが可能です。一方、「秋の乗り放題パス」では1名のみの利用 となります。
1日あたりの値段は、「秋の乗り放題パス」のほうが若干ですが高くなっています。その代わり(なのかわかりませんが)、青春18きっぷにはない「こども用」の設定があり、おとな用の半額で購入できます。同様に、北海道新幹線オプション券についても、「秋の乗り放題パス」では半額の「こども用」の設定があります。
青春18きっぷと比べると、有効期間などの制限が多いですが、こども用の設定があり、家族などで利用する場合には有利な条件になっていますね。
おすすめの利用法は?
「秋の乗り放題パス」のおすすめの利用法ですが、JR全線に乗車可能ですので、好きなところへ行くのがよいでしょう(笑)。
それだけではあんまりなので、上手に活用するポイントをいくつかご紹介します。
3日間連続利用を活かそう!
前述の通り、「秋の乗り放題パス」は有効期間が3日間連続となっていますので、それをうまく活かした旅程を考えましょう。2泊3日の行程で、行きたい場所、乗りたい列車をうまく組み込むようにしたいですね。
とはいっても、普通列車・快速列車だけで3日間で乗車できる範囲は限られてしまいます。途中で観光もしたいとなるとなおさらです。そのような場合は、全行程を「秋の乗り放題パス」で回ることにこだわらず、新幹線や航空機、高速バスなどを利用することで行動範囲が劇的に広がる と思います。
例えば、東京から青森までを「秋の乗り放題パス」だけで行こうとすると、不可能ではありませんが、ただ列車に乗っているだけで終わってしまいます。往路で東北新幹線に乗車して一気に青森まで行ってしまえば、残りの三日間で観光しながら「秋の乗り放題パス」で東京まで帰ってくることができます。もちろん、前日夜発の夜行バスを利用してもいいですね。
青春18きっぷの時期より空いている
「秋の乗り放題パス」が利用できる10月の上旬~中旬は、会社員や学生は長期休暇の期間ではありませんし、「秋の乗り放題パス」の知名度が青春18きっぷよりも低いこともあって、青春18きっぷのシーズンよりも全般的に列車が空いています。
ローカル線で、のんびりとした旅をしたい方は、「秋の乗り放題パス」での汽車旅が狙い目です。とはいえ、10月の3連休はさすがに混雑すると思いますので、平日に時間を取れる方は、平日の旅行がおすすめですね。(ただし、都市圏でのラッシュには巻き込まれないようにしましょう)
以上、青春18きっぷの秋バージョンともいえる「秋の乗り放題パス」の詳細と、青春18きっぷとの違いについてご紹介しました。この秋も、早めに計画を立てて、有意義な汽車旅をしたいものですね。