- スポーツナビ
- 2017年9月1日(金) 21:00
サッカー日本代表は1日、埼玉県内のホテルで2018年ワールドカップ(W杯)・ロシア大会出場決定記者会見を行った。オーストラリアとの激闘から一夜明け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督と日本サッカー協会の田嶋幸三会長が登壇し、6大会連続6度目のW杯出場を報告した。
ハリルホジッチ監督はオーストラリア戦後の会見で「プライベートで大きな問題があった。そのことでこの試合の前に帰国しようと思った」と発言。次戦が行われるサウジアラビアへの遠征には帯同するが、「その後の予定は未定」とされており、その進退が注目されていた。
会見冒頭でハリルホジッチ監督は「昨日の発言は私を批判し、プレッシャーをかけていた方々に向けた発言だ」としたうえで、「私を批判する方々には残念かもしれないが、私はここで仕事を続ける」と続投を自ら明言。W杯に向けて「この時点で満足し切ってはいけない。私はまだまだ欲している。これからも、まとまって大きな仕事をしなければいけない」と決意を新たにした。
日本は6日(日本時間)、アウェーでサウジアラビアとの最終戦に臨む。
日本のベストゲームを見たと思った
登壇者:
ヴァイッド・ハリルホジッチ(サッカー日本代表監督)
田嶋幸三(日本サッカー協会 会長)
このように多くのメディアの皆さま方にお集まりいただきまして、本日は本当にありがとうございます。あらためまして、昨日W杯ロシア大会に向けた予選を突破することができたことを、日本の多くの国民の方、そして監督であるヴァイッド・ハリルホジッチ、スタッフ、選手、そしてそれを支えている家族の皆さんに感謝したいと思います。そして、メディアの方々にも感謝申し上げたいと思います。厳しい言葉、お褒めの言葉もいただき、それがわれわれの糧になって、この予選を突破できたと思っております。来年のロシアに向けて素晴らしいチームになるよう、私たちはハリルホジッチ監督をフルにサポートしていきたいと考えております。
私が昨年会長になって2日目に、このW杯予選が始まりました。初戦はUAEとの対戦で始まり、このような形で1試合を残して予選を突破できたというのは、会長という立場でうれしく、多くのプレッシャーの中でロシアへの切符を勝ち取ったのを感慨深く思っています。ただ切符を取るだけが目的ではありません。ロシアW杯で素晴らしい戦いをすることが目的であって、その目的に向かってこの1年間、チームをハリルホジッチ監督に引っ張っていってもらいたいと考えています。もちろん、サウジアラビアとの1試合を残していますので、そこでも素晴らしい試合をしてもらわなければなりません。本当にありがとうございました。
ハリルホジッチ コンバンハ。昨日の試合の後の会見のことを申し訳なく思っている。皆さんの前で長い時間、話すことができなかった。皆さんも聞きたいことがたくさんあったと思う。これまで誰も知らなかったこともその時に発言したが、素晴らしいゲームの後のお祝いに水を差すことはしたくなかった。
非常に難しい状況があってほぼパニックになって、そうした状況があった中で戦ったゲームだった。協会の関係者、選手、JFAで働いている方々にそういった姿が感じられたほどの経験だった。私はそういった経験はしてきている。このゲームに向けた準備はまったくもって簡単ではなかった。この合宿に向けた準備で、どれほどの困難があったかは皆さんもご存知の通りだ。
データでもオーストラリアに最終予選で日本が勝ったことがない、初戦を落としてW杯に出場した国がない、そのようなたくさんのことが私には影響しなかったが、もしかしたら選手たちには影響したかもしれない。私と共に働いていた人も少し焦っている部分もあった。また、私のことを攻撃しているメディアがあるということも耳に入っていた。
しかし、私のプライベートな、個人的なところは皆さんご存知ないと思う。それはあくまで個人的なことなので、誰にも話していなかった。私は仕事に集中しようとしてきた。選手たちの精神的な部分、メンタル的な部分に影響を与えたくないのでそうした。代表でデビューする2、3人の若い選手もいたので、そのようにした。
私のやり方に共に仕事をしている全員が同意していたわけではなかった。このような状況の中、歴史的な試合の準備を進めてきた。初めてオーストラリアに(最終予選で)勝ったという事実だけではなく、W杯出場を決定するゲームだったという意味でも歴史的な試合だった。
試合後、私はその日、日本のベストゲームを見たと思った。非常にレベルの高いゲームだった。戦術的にもフィジカル的にもそしてクオリティーも、観客も含め、みんなが歓喜している姿を見ることができた。会長もこの勝利でほっとされたことだろう。会長にも会って話をしたが、試合前は心配ごとがたくさんあったと思う。しかし私は個人的に誇りを感じている。私の個人的な問題もあったので、試合後はすぐロッカーに引き上げたいと思ったが、この喜びは選手たち、スタッフたち、もちろんサポーターの皆さんと分かち合わなければと思って残った。私にとって特別な時間となった。
2年半共に過ごしているチームに愛着がある
そのような状況だったので、試合後は記者会見に出席しないと一度は言った。なぜなら、私は発言するときに、社交辞令でなく、感じていること、考えていることを言うからだ。その状況ではよくないと思ったが、会見会場に入った時に拍手で迎えられ、非常に感動した。皆さんにとってあまり快くない状況だと申し訳なく思い、昨日は説明した。
でも昨日の会見の後、フランスを含め、世界中で報道されていた。それでこの状況を、もう少し説明したいと思っている。私の昨日の発言は、私を批判していた人、私にプレッシャーをかけていた人に向けたものだった。そして選手たちにも「何が起こっているんですか?」と聞かれた。私は、私を批判されていた方に向けて話をしたいと思う。私に敬意を払っていなかった方々、私の仕事を評価してこなかった方々、私を批判するためにいる方々、もちろん、そういう方もいるだろう。それもノーマルだと思う。
私は45年間、サッカーの世界で生きているし、日本より大きなプレッシャーの中でも仕事をしてきた。でもチームが首位の時に批判をされていた。勝ち点も1位、得失点差も最もいい数値を残している中で、私が去らなければいけない、私がオーストラリア戦の結果次第で去らなければいけないと書いていた方々に対して、私は「攻撃」と受け止めた。
チームは勝った。その試合の前に私は会長と話をした。会長からはサポートする気持ちは全く変わっていないと言っていただいたが、私は監督として結果で応えなければと思った。監督として結果を残せなければ、もちろん批判の対象となると思うが、私は日本に来てからずっとW杯出場を目指して戦ってきた。そして私にプレッシャーをかけてきた方々に対してだが、もちろんJFAがやめてくださいと言うこともあるだろうが、私からやめますという状況も考えられる。
それにはさまざまな理由があり、1つはたとえば私の個人的な状況によってやめざるを得ないということも考えられたり、あるいはサッカーと関係ない理由がある可能性も考えられる。これは初めて言うが、ほかのところからオファーがあったり、たとえば金銭的にも競技面でもよりいい条件を提案されたこともあった。だが、私は目的をもってここに来ており、それに対する忠誠心がある。そして2年半共に過ごしているチームに愛着がある。日本というこの国にも。私もここにいるし、家族もよく訪れている。会長との関係もはっきりしたものだ。
その中での責任感が私のマックスを引き出す。私が到着してから、どのように私が仕事をしてきたかは会長もその姿を見てこられたと思う。私の意欲は日本サッカーを向上させるためにすべて注ぎ込んでいる。仕事をしていく中で、もちろんミスもあるだろう。すべてが理想的に進むわけではない。でも私はこのチームでいい結果を残すためにここにいる。日本サッカーを向上させるべく、私はたくさんの人にアドバイスや言葉をかけている。私の仕事の仕方は前任者と少し違うかもしれない。私は外交的なことはやっていないので、それがいいと思う方もいれば、そこが好きでない方もいるだろうが誇りを持っている。
いつかこの美しい国を去ることがあれば、協会を去ることがあれば、誇りを感じながら去ることになるだろう。友人として去ることになると思うので、何度もまた日本にあいさつに訪れることになると思う。もしかしたら、日本代表の監督をいつかやめることがあれば、より日本の美しいところを見る時間もできるかもしれない。昨日の発言の中にはそういった意図もあった。私を批判されてきた方へのものもあった。それと同時に、皆さんに対する感謝の言葉もあった。そして私が今後、どのくらい日本代表の監督を続けられるかはもちろん結果次第だろう。よって、私からははっきり申し上げられない。
隣に会長がおられるが、私になにかあれば一番に知らせるのは会長だ。私もロボットではない。感情を隠すこともできない。よって私は外交的な話し方に欠ける発言をしてしまうこともある。もうこの年齢では変わることはないと思う。今までさまざまなところで競技面で成功を収めてきた。とある方にとっては残念かもしれないが、私はここで仕事を続ける。いつまでかは申し上げられない、分からないが。
非常に長いモノローグになってしまったが、昨日の発言でチームが動揺するのは避けたかったので、なぜそういう発言をしたのかという説明をした。