インターネットを通じて不特定多数から資金を募るサービス「クラウドファンディング(CF)」が新たな商品やサービスのヒットを生む場に定着してきた。日経産業新聞がまとめた2017年上半期(1~6月)の資金調達額ランキングなどを見ると、製作側の細部のこだわりに資金提供側が共感する「マニアックな関係」が成立した時に多額の資金が集まっている。
ランキング首位の無線イヤホンや4位の携帯電話の形からロボットに変わる玩具は、「ガジェット」(小道具)に関心のある利用者が多いCFサービス「マクアケ」を通じて資金を募った。いずれもスマートフォン(スマホ)と接続して使え、40代までの男性が支持した。
イヤホン「エアー・バイ・クレイジーベイビー」はバリュートレード(東京・豊島、土山裕和代表取締役)が輸入販売する。振動板に筒状炭素分子の「カーボンナノチューブ」を採用したことで「数万円クラスの高級機種に負けない音質を実現」しているとうたった。左右のイヤホンでスマホと曲をそれぞれ操作するなど、ひと通りの操作機能もそろえる。
運動しながら音楽が聞きやすく、予定していた一般販売価格(1万9310円)の最大30%引きで入手できることで20~40代の男性を中心に支持を得た。価格は米アップルの「エアポッド(AirPods)」の1万6800円(税別)とほぼ同じ。遅れたが、資金提供者には出荷を終えた。今のところ一般販売を始める計画はないという。
バリュートレードは14年の設立で、写真を印刷できるケースなど海外の個性的なスマホ連動機器を販売している。イヤホンは中国のクレイジーベイビーの商品。スマホ用の斬新な携帯音響機器を開発しており、円盤状のスピーカーが宙に浮く製品でCFの草分けの米インディーゴーゴー(カリフォルニア州)で83万ドル(約9千万円)を集めたこともある。
ロボット玩具はKDDI(au)の携帯電話「INFOBAR」の初代デザインを使い、ボタンパネルが分かれてロボットに変形する。通話はできないが、スマホと無線通信し、着信があると発光ダイオード(LED)が点灯する。
初代INFOBARはネットの投票でauの歴代携帯電話の人気ナンバーワンだった。子供の頃から変形ロボットのアニメ好きの広報部の西原由哲グループリーダーがグッズを提案すると社内が賛同。変形玩具「トランスフォーマー」を発売するタカラトミーも応じた。「携帯電話事業者のサービスや端末が同質になる中、顧客の心を動かすコンテンツや商品を作りたかった」という。
西原氏が「とがった商品なので感度の高い人が接しやすいCFが適している」とマクアケの活用を決めた。資金提供者の8割が男性で、男性の8割が30~40代。4割が東京在住で、神奈川、埼玉、大阪、千葉と都市部の人が続くなど、想定通りの層が集まった。
テストマーケティングや話題作りの狙いもあった。目標額の100万円は目安で、集まった資金は開発費の一部に過ぎない。CFで話題となったことから、8月から受け付けを始めた数量限定の一般販売でも売り切れた。