10年も前の話で恐縮だが、毎日新聞の南アフリカ・ヨハネスブルク特派員だった筆者は2007年、北朝鮮の技術支援を得ている兵器工場がエチオピアに存在しているとの情報をある人物から入手し、エチオピアに取材に出かけた。
この工場の存在は、国連安保理によっても確認されている。工場は首都アディスアベバの西約135キロの農村地帯に存在しており、名前を「Homicho Ammunitions Engineering Industry(HAEI)」という。1987年に設立され、北朝鮮技術者の指導の下、北朝鮮製をモデルとした弾薬、砲弾などが製造されている。
厳重に警備された工場そのものにアクセスできるはずもなかったが、様々な関係者への取材から、北朝鮮がエチオピアに弾薬や砲弾の製造技術を提供する見返りに外貨を獲得している実態が浮かび上がった。
北朝鮮の核・ミサイル開発の進展ぶりを見ていると、我々の「常識」が必ずしも世界の「常識」ではないことを改めて痛感させられる。
日本のマスメディアの報道に接していると、北朝鮮は国際的に孤立しているかのような印象を持つ。北朝鮮のような「世界の孤児」が核・ミサイル開発に必要な技術や資金を入手できるはずはない、と思いがちである。
だが、北朝鮮は、我々が思っているほどには孤立しておらず、世界の様々な国から技術や資金を獲得してきた。そうでなければ、膨大な資金を要する核兵器とミサイル開発が、ここまで進んだはずがない。