空飛ぶクルマ「ホンダジェット」世界一の裏側
快挙を支えた「技術屋の王国」の秘密
ホンダはトヨタ、フォルクスワーゲン、GMのように世界のビッグスリーの一角を占めるわけではない。当然、研究開発費は超巨大企業に比べて潤沢ではない。であるのに、ホンダジェットのように「世界一」「世界初」といった技術、製品が少なくない。世界の最先端技術分野で、なぜか次々と成果を生み出す「不思議力」を備えた企業だ。
経済ジャーナリスト、経営評論家として、長年にわたってホンダを丹念に取材してきた片山修氏がホンダジェットの開発から事業化までを描いたのが『技術屋の王国――ホンダの不思議力』である。ここでは、ホンダジェットが販売開始から2年弱で世界一に躍り出た理由に迫る。
内装から外装までクルマのような飛行機
ホンダの小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」は、ついに完全に離陸した――。
ホンダジェットは、2017年上半期に24機を納入し、小型ビジネスジェット機市場で米セスナを抜き、世界一の出荷数を達成した。現在、月産4機を製造し、近く6~7機に引き上げる計画だ。
ホンダジェットは、なぜ、“販売世界一”に躍り出たのか。
ホンダジェットの性能は、ずば抜けている。最高速度、最大運用高度、上昇性能、そして燃費性能は抜群だ。クルマづくりで鍛えられた軽量化技術が生かされている。さらに、室内の広さに加え、高級感のある内装を備えている。
スタイルも抜群だ。先鋭的かつ美しい外観、さらに、機体はツートンカラーで、赤、青、黄、緑、シルバーのバリエーションがある。天才的技術者で、ホンダジェット設計者の藤野道格氏は次のように言う。
「クルマでは、購入者が好きな色を選びますよね。ホンダジェットも、色を選ぶ行為を購入体験の一部にしたんです。“所有欲”や“オーナーシップ”を感じられる、“スポーツカーのような飛行機”をつくりたかったですね」
つまり“空飛ぶクルマ”コンセプトである。
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