ロハコといえば、ヤフーの協力のもとアスクルが手がける日用品ショッピングサイトとして有名だが、現在はWebサイトの他、ショッピングアプリも運営している。今回は、アプリ導入における苦労話やアプリで解決できたお客様の買い物の悩みなどの取り組みについて語った。
7月18日、Repro、ロケーションバリュー、FROSKの3社共催によるセミナー「アプリの虎」が開催された。ロハコを運営するアスクルの土屋 文明氏、田中 久美子氏により「小売がアプリをつくった3つのワケ」と題した講演を行った。
ロハコは、「くらしをかるくする」をコンセプトに、ヤフー株式会社協力のもと、アスクルが運営するインターネット通販サイトである。 累計のお客様が380万人超、累計アプリダウンロード数は160万件にものぼる。 そしてロハコによる売上は2014年から2016年末までの2年間で4倍に成長した。
アプリ導入へシフトするための意識改革
ロハコアプリを導入するに当たって、アスクルでは2つの課題があったという。 1つは、社内でのモバイル、アプリ化への意識が低いという点。
そこで、意識改革をすべく、社内資料のスクリーンキャプチャーはPC画面ではなく、全てスマートデバイスの画面にするルールを設定した。 また、今までいろいろなデバイスで行ってきたテストマーケティングを、はじめはアプリからスタートするよう変更した。 そして効果が出たら、他のデバイスでも実施するフローに変更したという。
そのほか、外部の人を呼んで勉強会を実施した。「社内の人よりも、社外の人がアプリについて言ったほうが、説得力が増すので圧倒的にアプリの重要性が伝わるかなと思った」と田中氏は話す。
2つめは、アプリのダウンロード数アップに活用する広告予算がなかった点。 そのため、既存のWebサイトからアプリストアへの誘導販促を企画した。 また頻繁に利用しているお客様に対する販促施策として、アプリを絡めた。 そのほか、テレビCMでアプリの利用シーンを入れて、ロハコはアプリでも利用できる認知を促進した。
インタビューして分かった買い物に対する課題
以前、ロハコのターゲット層である30~40代の働く女性を対象にインタビューを行った。 その時、2点ほど気づいたことがあったという。
1つは、短時間で忘れずに買い物したいということ。 平日は買い物をする時間がなく、そして、何を買いたかったのか思い出せず、買い忘れをしてしまうというもの。 そのため検索では買い忘れを防止することができないため、見ていて気がつく状態でなければならない、ということが分かったという。
2つめは、日用品はついで買いをしているということ。 日用品は食品のついでに購入されており、土日のレジャー的な買い物のついでに購入されるものというものだった。 日用品だけでは起点力不足であるため、起点となるようなプロダクトを前面に押し出すことで、購買のルーティーンに入っている状態ということに気が付いた。
もしかしたらこの課題、全てアプリで解決できるのではないかと思ったそうだ。 1つめは、“探さない” で購買ルーティーンをサポートすること。 いつもの商品は履歴から簡単に再購入でき、またはプッシュ通知による買い忘れを防止して、時間短縮をサポートする。
2つめは、“見たくなる“ で購買起点力をアップすること。 お客様に「ついで買い」や「まとめ買い」を想起し、見ていて楽しい眺め買いをサポートする。 「『時短』と『眺める』をクリアーすると、買い物が『楽しい』という答えにたどり着いた」と土屋氏は説明する。
アプリを活用したプッシュ通知施策
ロハコにおいても、お客様との距離が縮まる施策を実施し、お客様との距離が縮まるコミュニケーションを大切にしている。 その一例として、プッシュ通知についても、一部セグメントを細かく設定しているものもある。
例えば、猫用品を見ているお客様に対して、2月22日の「猫の日」に、「今日は猫の日だにゃ 抽選でフィリックス商品が最大22%OFF!」というプッシュ通知を配信したら、開封率が増加したという。
また、20~50代の男性に対して、金曜日と土曜日の夜に、「1週間お疲れさまでした 新登場のビールはいかが」とプッシュ通知を配信したところ、インスタグラムに「1人暮らしにはおかえり、お疲れ様が1番の癒し」という反応が投稿されたという。
「こういったものは、一方的なコミュニケーションとして捉えられがちなのですが、プッシュ通知はコミュニケーションできるツールだと当社では捉えている」と田中氏は語る。
クーポン利用率は86%に増加、売上14倍に
アプリを使う上で、お客様にインセンティブを感じてもらえるよう、「2時間限定アプリクーポン」を実施した。
プッシュ通知やアプリ内メッセージからクーポンを告知したところ、クーポンの利用率は86%と、ロハコで提供する他のクーポン利用率より大きく差をつけた。 また、売上は平時の14倍と、コスト効率の良い施策となったという。
「こういう時間限定の施策は、メルマガではできないリアルタイム性のある施策なので、ぜひプッシュ通知などを活用して実施していただければ」と田中氏は語った。
一般的な配達の不在率は20.0%だが、Happy On Timeの利用で不在率2.5%を実現
続いて、1時間単位で受け取り時間の指定ができる「Happy On Time」のサービス施策。 プッシュ通知から簡単なお知らせが届き、配達状況がアプリ上またはWebサイトから確認できる。 また、10分前になると「そろそろ到着します」というお知らせのプッシュ通知がスマホに届く。
「一般的な宅配の不在率が約20.0%ですが、Happy On Timeでは不在率が2.5%まで抑えることができました」と田中氏は説明した。
「ロハコアプリも導入した当初は苦労し、失敗もしました。実は今のアプリは2代目になります。様々な失敗を乗り越えて、学んだことをアプリに反映していきました。 非常に迷われている方、運用に迷われている方もいらっしゃると思いますけど、私達とともにアプリを盛り上げていければいいかなと思っている」と話し、講演が終幕した。