マルハ、ニッスイの成長解、養殖の課題とは

日本の大手水産が描く巻き返し策

2017年9月1日(金)

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 かつて大型トロール船を率いて遠洋漁業で稼いでいた大手水産会社は、EEZ(排他的経済水域)が設定されて200カイリ時代が始まって以降、漁獲から徐々に撤退。商社機能や加工業の育成と並行し、養殖技術の開発に注力してきた。高級魚種、クロマグロの完全養殖が商業化に至るなど、成長の原動力になっている。

 しかし、養殖も漁獲で問題となっている資源の課題から離れられない。餌に利用されるイワシやサバも、養殖に適した海水面も、有限の資源だからだ。マルハニチロ、日本水産はどんな課題認識と成長の青写真を持っているのか。両社で水産業を統括する役員に聞いた。

2018年3月期までの中期経営計画では、漁業・養殖ユニットの目標が売上高366億円(14年3月期から7%増)、営業利益で25億円(同2.5倍)。水産商事ユニットが売上高684億円(同4%減)、営業利益が30億円(同11%増)。17年3月期の時点でほぼ達成していますね。

マルハニチロの中島昌之・取締役専務執行役員

マルハニチロの中島昌之・取締役専務執行役員(以下、中島):水産関連部門全体で見れば、すでに目標を上回った。マルハニチロの単体の魚の取り扱いは今24万トン、売上高で2100億円になる。

 日本の魚の消費量はなかなか下げ止まらないのが実態だ。しかし、スーパーなど流通業の集約が進んで規模が大きくなっていく中で、サプライヤーである我々水産業に対して供給の安定性や品質保証の要求水準が高くなっている面もある。この要求に応えられる会社はそう多くない。我々はまだシェアを上げていくことができると思っている。

クロマグロの国内シェアは30%

成長のドライバーとして大きいのはやはり養殖でしょうか。

中島:間違いなく養殖だ。クロマグロはグループで国内10箇所の養殖場を持っていて、今年の出荷予定量は6万5000尾、4000トン強になる。日本全体の約30%を占める。

 特に、(人工種苗から育成する)完全養殖クロマグロの出荷を2015年から始められたのは嬉しいニュースだ。1990年代に一度挫折したプロジェクトだが、10年ほど前から再開してようやく商業ベースに乗った。

完全養殖で育成中の死亡率を下げるための選抜育種はどれくらい進んでいますか。

中島:(孵化した稚魚を海上のいけすに移す)沖出しの数が7万~10万、そのうち生き残るのが1万2000~1万3000といったところだ。選抜育種は水産研究・教育機構とも情報交換をしながら進めている。現在でも利益は出るが、2割まで生存率を引き上げるメドはもうついている。

顧客からの評価は。

中島:まだ脂ののり方などにばらつきがあり、100%の出来とは言えない。完成形には徐々に近づいていると思う。餌の開発が鍵になる。

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「独り負けニッポン漁業」の目次

「マルハ、ニッスイの成長解、養殖の課題とは」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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