京都大大学院工学研究科の松野文俊教授(60)らのグループは29日、配管や災害現場など狭く曲がりくねった複雑な形状を走破し、内部情報を地図として自動的に反映できる新型のヘビ型ロボットを開発したと発表した。松野さんは阪神・淡路大震災で教え子を亡くした。「彼の思いを忘れずやってきた」といい、今後、プラント設備点検で実用化を目指し、災害発生時の運用を見据える。
松野さんは神戸大勤務時、阪神・淡路大震災で教え子の大学院生竸(きそい)基弘さん=当時(23)=を失った。「ドラえもんのようなロボット」開発が竸さんの夢で、松野さんは震災後、災害救助用ロボットの研究開発に取り組んできた。
今回の研究は災害時など過酷な現場で稼働できるロボット開発を目指すプロジェクトの一環で、京大、早稲田大、岡山大、金沢大の研究者らが参加する。
松野さんらによると、これまで配管内を走るロボットはあったが、カメラ映像頼りで複雑な形では操作が難しかった。
新型ロボットは直径10~12センチで、20~30個のモーターなどが節のように連結。らせん状になって、ねじれる運動で進む。圧力を感じる皮膚型触覚センサーや配管で入り口からの音の反響などをとらえるセンサーを備え、位置を正確に把握。配管では形状を示す地図を自動的に表示し、先端部のカメラで写真撮影も行う。
この日、直径約20センチ、長さ約7メートルのパイプ内を垂直に走行するなどし、がれきを想定した複雑な形の木々を乗り越える動きも実演。プラント点検でのコスト削減が期待され、防じん・防水機能などを強化することで災害時の運用も期待できるという。松野さんは「移動・情報収集だけでなく、物をつかむなど作業できるロボットにしたい」と意気込む。(小林伸哉)