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【映画評書き起こし】宇多丸、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』を語る!(2017.8.26放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

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実際の放送音声はこちらから↓

宇多丸:
ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーです。今週扱う映画は先週、「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して決まったこの映画……『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』

(テーマ曲 EXILE TRIBE『HIGHER GROUND』が流れる)

ミノワダくん、このメインテーマ、あとでもう1回かけるから用意しといて!(笑) アガるな~。EXILE TRIBEが映画や音楽など様々なメディアで展開するエンターテイメントプロジェクト『HiGH&LOW』の長編劇場版第三弾……まあ、スピンオフを含め、っていうことだね、第三弾。拮抗する5つのチームの頭文字からその名がついた「SWORD地区」に悪名高いスカウト集団「DOUBT」や武闘派集団「プリズンギャング」が襲来。さらに巨悪の九龍グループも絡み、さらに壮絶な戦いが繰り広げられていく。前作から引き続き出演するキャスト陣に加え、中村蒼、NAOTO、関口メンディーの他、津川雅彦、岸谷五朗らベテラン俳優陣も多数出演ということでございます。

ということで、『HiGH&LOW THE MOVIE 2』をもう見たよというリスナーのみなさん、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。なんですが、メールの量はですね、残念ながら「少なめ」って……どういうことっすか、琥珀さんっ! いつまでも、俺たちは待っています……まあ、今週だけなんですけどね(笑)。なんですが、その感想、賛否の比率は9割が「褒め」。残り1割が「ダメ」。まあ、要はわざわざ見に行くやつは(そもそもハイローが)好きっていうことなんでしょうけど、ちょっと少なめは残念ですね。あんだけね、僕らは祭りでやったのにね。

「大集団の喧嘩シーンや中盤のカーアクションが大迫力」「前作から数倍パワーアップしている」「回想やコメディーシーンなど前作のダメだったところが改善されている」など前作との比較から絶賛している人が多かった。一方、主な否定的な意見は「登場人物が多すぎて話がよくわからない」「とにかく話がよくわからない」(笑)。ただし、アクションシーンの出来は否定派も褒めており、また絶賛派もストーリーのわかりづらさは認めていた。だから、同じことなんですよね。「ストーリーはわからないが、アクションはすごい」。

ラジオネーム「トムトム」さん。「夏といえば祭り。ねぶた祭りや阿波踊りと並んですっかり夏の風物詩となったEXILE TRIBEによる喧嘩祭り、最高でした。ストーリーはともかく、アクションの派手さやアイデアの豊富さ、クオリティーの高さは邦画の中でズバ抜けており、中盤のカーチェイスやRUDE BOYSのパルクールバトルは一見の価値ありです。基本的にキャラクター萌えやキャラ同士の関係性を楽しむ映画なだけに、今作も魅力的なキャラクターが目白押しでした」と、いろいろと言っていただいております。「……残念な点は窪田正孝さんが多忙すぎるためか、スモーキーがもっぱら空を眺める役だった」という(笑)。ずーっと空を眺めてね。咳して空を眺めていただけですからね。

一方、ダメだったという方。「ふきぼう」さん。「『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』、ウォッチしました。説明、回想、喧嘩の三重奏でクラクラするのにUSBをめぐる右往左往が加わり、どうにかなってしまう。またSWORDの甘噛み合戦は大変お尻がムズムズしました。映画的な説明は皆無。懇切丁寧に全て言葉で教えてくれる。後半はアクションが延々と続き、いくら流麗なコレオグラフでも間延び。話を面白くする努力をしてほしい」というね。まあ、これもごもっともな感じですけどね。あ、ちなみにですね(※宇多丸註:ここで放送作家の古川耕さんが一個前のメールを改めて差し出して“ここ読め”とやってきた)、「トムトム」さん、「……西洋にジャック・リーチャーあれば東洋に琥珀あり」って、うるさいよ!(笑) 時間が今日ないんだから。俺も言いたいことがいっぱいあるんだから。はい。ということでございます。みなさん、メールありがとうございました。

『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』、私もTOHOシネマズ日本橋で2回、見てまいりました。ちなみに映画館で見た時に、これはTOHOシネマズだけなのかな? わからないけど、上映前の「NO MORE映画泥棒」のあのくだりで、今回なんと、僕が見たのは『HiGH&LOW』バージョンになっていて。テレビシリーズと『THE MOVIE』の一作目まで毎回ついていた、立木文彦さんのナレーションね。「かつてMUGENという伝説のチームがこの一帯を支配していた。その圧倒的な勢力により、かえってその一帯は統率が取れていた……」という、その「かえって」ね(笑)。非常に印象的な「かえって」使いにオマージュを捧げた、「NO MORE映画泥棒」CMになっていて、非常にハイロー愛表現があって楽しかったりするので、ぜひこれ劇場で見ていただきたいあたりなんですけども。

ということで、『HiGH&LOW THE MOVIE』一作目。この番組では2016年9月17日に取り上げまして。実はその9月の時点で、すでに劇場公開開始から2ヶ月がたっていて、各所でこの、非常に特異なエンターテイメントの面白さについて、いろんな方が熱い語りを繰り広げていた。そんな状態ではあったんですが……まあ2ヶ月たって遅かったんだけど、それだけ時間が空いたことにより「かえって」(笑)、個人的には「応援上映」という鑑賞形態に触れることができて。それによってハイロー世界の楽しみ方の理解度も深まったという面があるので。非常にこれは2ヶ月、「かえって」よかったというのがありますけどね。

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詳しくは当番組の公式ホームページに毎回、毎週アーカイブされているみやーんさんによる公式書き起こしがありますので、ちょっとそちらを改めて参照していただければと思いますが。とにかく結果的に僕のハイロー評、かなりの割合をその応援上映レポに割いているんですね。なので、「応援上映レポばっかりやっている」みたいな声もたしかに聞くんですが。もちろん後にね、サタデーナイトラボの方でも改めて特集し直したほど、その応援上映という鑑賞形態それ自体にも興味をそそられた。これは事実なんですけども。ただね、僕はそのハイロー評の中でも言っているんですけど、要はそういう風な、能動的な楽しみ方のスタイルというのが、この『HiGH&LOW』というエンターテイメントの本質、真価を理解する上で、不可欠なものだ、という風に思ったので、まず応援上映の話から入ったというね。まあ、私の理解の順番がそれだったということなんですけど。

つまり、単体の映画作品として真正面から評すれば、話運びにしろ、演出にしろ、決して褒められたものじゃない。特にまあ、『THE MOVIE 1』はそうだった。今回はかなりブラッシュアップされているのは事実ですけども、(それでもなお)いわゆるツッコミどころだらけな作品ということになってしまう。ですけども……そういう問題じゃない。そうやって、それ自体で完結、関係した作品としてどうこうするようには、そもそもつくられていない、っていうところが大きいわけです。ぶっちゃけ、個々のキャラクターとか世界観などは、映画、テレビ、漫画、アニメまで含めた古今東西のアウトロー、不良チーム、ギャング物エンターテイメントの、記号的イメージ“だけ”を寄せ集めた、モザイクのような作品なんですね。

なので、個々のバックストーリーや設定などは、言っちゃえばものすごーく雑な回想シーンと、非常に雑な説明セリフで……「ま、こういう系のキャラですわ。わかるっしょ?」「『ゆら~っと現れる系』のキャラっすわ。わかるっしょ?」(笑)みたいな感じで、さっさと雑に済ませていくっていうね。今回の『2』でいえばたとえば、ついにハイローに合流というね、関口メンディーさん演じるフォーというキャラクター。これ、関口メンディーさんの、誰がどう見ても……私もご本人にお会いしたことがありますけども、もう本当に気がいい、みなさんご存知の通りの気がいいナイスガイですから。やっぱりキャラとしても、要は「気は優しくて力持ち」。基本、悪い人じゃないですよ、っていうのを、今回の『2』は、考えうる限り最短距離の記号的説明(笑)、「とにかく子供が好き。子供が大事」っていうね。

これでさっさと済ませる。「もう子供が好きで戦っているんだから、こいつはいい奴です!」っていうね。それと、関口メンディーさんの(※宇多丸註:文脈を共有している範囲内の)みんなが知っているキャラクターと合わすと、「ほら、いい人でしょう?」っていうね。こういう風に済ませてしまう。つまり、キャラクターというのは、このハイロー世界の中では、あくまでも「パーツ」なんですね。パーツ。で、それらのパーツとパーツを自在に組み合わせて……たとえば、『クローズZERO』を思わせるキャラと、このちょっと『新宿スワン』と『時計じかけのオレンジ』を混ぜたようなこのキャラとか、まあチームを対立させて、こういう戦いをさせたら「燃える」よね。で、こういう粋な一言とかで和解とかさせれば、今度は「萌える」よね、っていう感じで……要は、ストーリーではなく、「関係性から生じる見せ場」をどんどん作っていく。そうやって、まさしくMUGENに遊び倒していける物語空間を作る。それが、ハイローワールドなわけですね。

という意味で、いちばん近いのは実は特撮ヒーロー物なんじゃないか? なんてことも前に言いました。戦いのたびにチームごとの「主題歌」が流れる感じとか、まさに本当に特撮ヒーローっぽい感じですし。特に複数のライダーが共演する、要するに異なる世界観同士が、モザイク的に、それこそパーツ的に共演する、「MOVIE大戦」シリーズっていうのがありますけど、仮面ライダーのMOVIE大戦シリーズ的な感じ。しかも、その中でも、アクションシーンをグイグイ進化させていこうとする意志が非常に強い、という点において、やはり坂本浩一監督作のMOVIE大戦……『アルティメイタム』とか『MEGA MAX』とかいろいろとありますけども、それに志としてはかなり近いんじゃないか? という風に思います。なのでちょっとね、実は『HiGH&LOW』、またスピンオフとか作るなら、ぜひ坂本浩一監督でスピンオフ、どうですか?っていうのはちょっと思ったりしますけどね。

で、とにかく事程左様にですね、ここも大変に重要なポイントなんですが。その関係性から生じるそれぞれの見せ場っていうのは……でも「記号、記号」って言っていますけど、見せ場は記号じゃないんですよ。非常に具体的、肉体的なアクションとして、日本映画史上でも本当に類を見ないクオリティーと言っていい(レベルのものを見せている)。本当にクオリティーが高い。アクションのみならず、美術、セット、衣装……細部に至るまでの豪華さ。あるいはカメラワークの斬新さもありますし。もちろん、LDHというその集団ならではの、身体能力の高さ。その、すごく身体能力の高い人たちが、もう見事なコレオグラフと、見事な美術、見事な衣装、見事なカメラワークでバーッとやる、その集団での動き。この集団格闘アクションが、言ってみれば「群舞」的に機能する。要するに、ミュージカルシーンでもあるというね。群舞的にも機能する、という風に言い換えてもいい。

そもそも、この格闘アクションというジャンルは、ミュージカル的……要するにミュージカル映画にどんどん近い作りになっていくものだという。その意味で、EXILE TRIBEが映画を作るという時に、このように、要するに格闘シーン=ダンスシーンのようなもの、そういうシーン、見せ場の羅列……しかも、そこにそれぞれのEXILE TRIBEの曲を流すというような、そういうような作りになるというのは、非常に理に適った話だ、ということを前回の評で私、言いました。一方で、そういう風に異常に力が入っていて、クオリティーも高い、それぞれの見せ場と見せ場をつなぐ「ブリッジ」として……通常の、いわゆる僕らが言うところの「ストーリー」は、その見せ場と見せ場の間の、あくまでもブリッジなんですよ。

しかも、それらはひたすら、さっき言ったような雑な説明とか、もしくはもう説明すらちょっとしきれないほど……ちょっと説明しきれないような事態があるわけです。たとえば琥珀さんの行動原理とか、よくもうわからないので(笑)、説明すらしきれない場合は、「なんかいい雰囲気」とか、「なんかいいこと言った風」だけ醸し出す、みたいなね。そんな感じで、言ってしまえばその、キャラクターというパーツをつなぎあわせた、関係性から生じる見せ場と見せ場、それらをつなぐためのパーツでしかないんですよ、従来で言う「ストーリー」は。なので、その「つなぎのパーツ」のところだけ取り出して冷静に批評する、通常の映画のように批評をすれば、そりゃあ「無茶苦茶だよ、この映画」っていう風にならざるをえない、ということなんですよね。

まあ、それとは別に、このハイローサーガ全体が、現実のHIROさん率いるLDH、EXILEサーガと、重ねて深読みしたりする楽しみもあるわけですよね。たとえば「実際の芸能界の力関係図を、HIROさんはこう見ているんじゃないか?」みたいなね。そういう風に読むとめちゃめちゃ面白い、とかっていうのはあるんだけど、そこまで細かく言及しているともうね、あと2、3時間必要になってくるので、ここは置いておくけども。とにかく僕は、前作『THE MOVIE』の一作目の締めとして、「全ての映画がこんな感じのエンターテイメントになっていったら、そりゃあ僕は大好きな映画からは離れていってしまうかもしれないけども、でもこれはこれで超楽しんでしまいました」みたいな感じのことを言いましたけど。いみじくも、実際のところ世界のエンターテイメントは……ハイローが一番手じゃなくて、全体としてもうすでに、こっちの方に流れているんですよ。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の大成功からして。

たとえばそれこそ、映画のユニバース化、映画の連続ドラマシリーズ化っていう現象もそうですし。キャラクターの記号的パーツ化、そして、それらを順列組み合わせして、その関係性から生じる見せ場をこそ楽しむ……要するに、従来の「ストーリー」は、それらを数珠つなぎにするためのあくまでもブリッジであって、やっぱり記号的であって構わない。そして、観客たちもそういう方向をこそ望んでいる、というこの潮流。このコーナーをやってきた中で、いま現在の、世界の大作エンターテイメントの流れとして、ヒシヒシと感じるあたりでございます。ということで私としては、非常にアンビバレントな部分もあるんです。映画全体がそういう風になっていったら、ちょっと嫌だな、っていう部分もありながら……今回の「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』、やっぱりね、実際に僕は見ている間中、「おい、勘弁してくれよ……おい、無茶苦茶だよ、これ!」って何度も思いました。でもね、やっぱり見終わると、結果として、「いや、やっぱりハイロー、超面白いわ! アガるわ!」となってしまった、ということは否めないあたりでございます。

まずね、ド頭。タイトルが出る前のアバンタイトルでね、SWORD地区の各チームの現在っていうのが次々に示されるあたりでもですね……お話的には、前作『THE MOVIE』一作目と本作の間にあたる、事実上雨宮兄弟のスピンオフである『THE RED RAIN』という作品がありましたけども。『THE RED RAIN』が、ジョン・ウー風の様式的なガンアクション映画として、まあ日本映画としてはなかなかがんばっているのはわかるけども、いいところもありましたけども、少なくとも『HiGH&LOW』として見る限りは、演出から何から、「うーん、コレジャナイ」感が強かった、ちょっと不満が残る1本だっただけに……やっぱり今回の『2』のアバンタイトル、SWORD地区の各チームの現在が示されるこのあたりでもうすでに、「やっぱハイローはこうでねえと!」っていう感じが、いきなりフルスロットルでやってくる、という感じで。とにかくアガる!

まず最初、無名街に巣食っているRUDE BOYSというみなさんならではの、いちばん身体能力の高いチームということで、本当に高い工場のところからのパルクールアクション。本当に普通にすさまじいアクションですし。しかもそのパルクールアクションを(ところどころ)主観カメラ使いで見せるというあたり。これはやっぱり坂本浩一監督の『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』でやっていた手法と完全に共鳴するあたりなんで、「おっ、やったな! やっぱりすごいな!」と思うあたりですし。あとはたとえば、みんな大好き鬼邪高校(おやこうこう)というね。まあちょっと『クローズZERO』的な世界観の、鬼邪高校……鬼邪高校は、テーマソングがですね、「JUMP AROUND」という、言わずと知れたハウス・オブ・ペインの名曲のカバーを使っているというあたりがもう、ズルいんですが(笑)。要するに、そりゃああの(イントロの)「デーッ! デッデッデーッ♪」が流れれば、アガるに決まっているんですけど。

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その鬼邪高校の登場シーン。完全に映画『300』風の、超スローモーションの、横長のキメ画というのをね……『300』風の画を作ろうとした日本映画としては、『クローズZERO』もそうですし、品川ヒロシさんの『漫才ギャング』『ドロップ』とかでもそれに近いようなことをやろうとはしていましたけども、『300』風のキメ画の作りとしてこんなに完成度が高いの、見たことがないです。もう、世界のどこに出しても恥ずかしくない、超かっこいいキメ画ができていましたね、はい。ちなみにですね、今回の『2』を見た方ならお分かりの通り、本作は、そのオープニングの鬼邪高校の『300』風だけではなく、ラストのラストでも、最っ高に燃える、もう1個の『300』オマージュ、これが出てくるわけですね。これはぜひ見ていただきたいんですけどね。

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もちろんですね、事実上の主人公たちである、山王連合の登場シーン。まず、トンネルの向こうから、バイクに乗ってやってくるコブラ。ガンちゃん(岩田剛典)演じる、コブラのワンショットからしてもうめちゃめちゃかっこいいですし。で、最初にコブラ1人だけが来るのかなと思ったら、そのコブラの後ろから、メンバーの乗ったバイクが、パーッとシンメトリカルに広がっていくこの絵面。さらに、その突進し合う両軍を、もう『ハクソー・リッジ』ばりのダイナミックな移動俯瞰ショットでグワーッと捉えてからの、コブラの一言。「テメーら、後悔すんぞ」、からの……!

(テーマ曲 EXILE TRIBE『HIGHER GROUND』が流れる)

フォエフォエッ!(笑) これですよね! EXILE、ハイロー祭り、始まんぞーっ! SWORD地区、アガってんぜ!っていうことですよね……バカか、俺は(笑)。とにかく、まあさっき言ったね、ラストシーンのあたりも、コブラのある一言からの、ちょっと絶妙な間があってからの、メインテーマ、ドーン!っていうね。まあ、そのラストも同じで、こんな感じで非常に音楽的な、問答無用で乗せていってしまう演出、編集テンポ。これはまさにハイローの真骨頂じゃないかという風に思います。で、ですね、まあ先ほどから言っているように、今回の『2』、メールにもいっぱいあった通りです。ぶっちゃけ前半は特にですね、「いわゆるストーリー」は、なかなか理解がしづらいです。はっきり言って、話はもう無茶苦茶です。ただね、『1』と比べて、ウェットなシーンとか、あと必要以上の外しギャグシーンとかは、さっきのメールにもあった通りです、分量が相対的に減っていて、テンポ感をわりと損なわず……そこはブラッシュアップされているんですが。

ただ、いわゆるストーリーラインを追っていくと、本当に気が狂いそうになりますね。よくわかんない。まあ、じゃあ前作がわかりやすかったか?っていうと、そんなことは全くないんですけど(笑)。まあ要は、いちばんの問題は……大きく言って2つ、理由はあって。まずは単純に、新しいキャラクターが続々、次々登場するからっていうね。途中でね、「ちょっと新顔が多すぎるから説明して」っていうね(笑)、言ってみればちょっと劇中のセルフ・ツッコミっぽいセリフがあるぐらいで。劇中のセルフ・ツッコミといえば、旧メンバーの中でも、たとえばテッツくんがドレッドを切っちゃって、「誰だかわかんねえよ」って言われるとか。あとWHITE RASCALSの若干の人事異動についてとか、そういう要するに、観客が見ていて違和感を感じるようなあたりを、さっさと言葉にして片付けてしまう(笑)。このあたりもハイローイズムですよね。物語的な整合性を取るよりも早く、「なんなの、それ?」みたいなことを突っ込ませて、片付けてしまうというね。

で、とにかく次から次へと新キャラが登場する。と、同時に、ここなんですよね。雨宮兄弟のスピンオフである『RED RAIN』から続くストーリーライン。雨宮兄弟、琥珀さん、そして琥珀さんと一緒にいる九十九さんを中心に、九龍グループを潰せる情報が入ったUSBメモリをさあ、どうするんだ? という話ね……ただね、どうすんだもこうすんだも、『RED RAIN』のラストでUSBを預かった琥珀さんがね、さっさと漫画喫茶でもなんでも行って、まずはコピーを作るなり、信用できるメディアにデータを送るなり何なりすりゃよかったんですよ。別に鍵がかかるWi-Fi環境がありゃ、どこでもいいだろ!っていう(笑)。逆にあの、最後にワーッと(カーチェイスを)やっているあの、作りかけの道路? まだ完成していない道。あそこ、どんだけWi-Fi環境が整っているんだ?っていうね(笑)。

まあ、とにかく琥珀さんがよくわかんないんで。そこはさすが琥珀さん!なんですよ。『RED RAIN』のラストでは、海外にこれから渡航する(のであろうということが暗示されている)。「USB預かって、海外に行って……何をするんだろう?」って(普通観客は)思うわけ。なのに、相変わらず琥珀さんは、何をしたいんだかわからない。たぶんね、USBメモリの使い方がわかんなかったんだろうね(笑)。で、結局わかんなくて帰ってきて、「これ、返すわ」っていう、そういう話だと思うんだけど……で、最初ね、飛行機から下りてきた瞬間に、みんな(思うであろうのは)「どうしたんスか、琥珀さんっ! その髪型は……」っていうね(笑)。髪型もなんかよくわかんない。もちろん、キャラとしてはいい人に戻ったんだけど、あらゆる意味でやっぱり、「どうしちまったんスか、琥珀さんっ!」感は相変わらずで(笑)、俺たちを裏切らない。さすが、MUGENは俺たちを裏切らない、仲間を裏切らない。

で、なにをどうしたらいいのかわからない、その『RED RAIN』組のストーリーが、中盤で一応片付くまでは、SWORD地区の話が並行して語られる。主にWHITE RASCALS、ROCKY側と、DOUBTというチームの、極悪人ということらしい蘭丸という新キャラクター……これ、演じてらっしゃる中村蒼さんは、ちょっと『ディストラクション・ベイビーズ』の柳楽優弥くんを思わせる、まあ美形狂犬役というかね、意外なほどハマッていて。「ああ、こんな役もできるんだな、中村蒼さん」ってびっくりしましたけども。まあ、そちらを中心とした抗争……っていうかそれ、結構大がかりな血なまぐさい抗争なのに、終盤でそれをあっさりと「ケンカ」ってくくるのに、またいい意味でずっこけてしまいましたけど(笑)。「ケンカ……まあ、ケンカですよね」っていう感じでね。

まあ、ハイロー的には本流である、そのSWORDのチーム同士の抗争話。この2つの、「結果的にはあんまり関係なかったね」っていう2つのエピソードが、途中までは交互に語られる。で、そこに説明もない新キャラが大量投入されるため、初見ではやっぱり、さっき言ったように『RED RAIN』側の話が中盤で片付くまでは、お話としてはなかなかついて行けないところが、僕も正直、多かったです。それこそね、仮面ライダーのMOVIE大戦方式で、SWORDの話、『RED RAIN』組の話、最後に合流してのMOVIE大戦!みたいな感じに、ちょっと整理するやり方もあったのかな? なんて思いますけども。まあ、とにかく、話はわかりづらいんですが、ここまでで言うとやっぱり、『RED RAIN』側のカースタントを含む、アクションがなにしろすごいんですよ。

まず、今回初登場の、小林直己さん演じる源治という、ヤクザの若頭役なんですが、これがとにかく素晴らしい! 僕はJ Soul Brothersの小林直己さん、前からあの方の全身のフォルム、顔貌も含めた「カタチ」が本当に美しいなと思っていて。まあ、めちゃめちゃ好みなんですわ、本当に(笑)。本当に好きだったんですけど、プラス、今回は非常にその、小林さん独特のストイックな雰囲気が、完全にターミネーター、それもT-1000的なね、ターミネーター感。非人間的なまでに強靭な刺客、という役柄に、本当に他の人は無理だよというレベルで、ハマッていると思います。はい。『ブラック・レイン』オマージュな、日本刀を地べたにガーッとやって火花が散る、というのもかっこいいですし。あと、衣装もご自分のアイデアで、ああいうちょっと和風な雰囲気のするスーツだったり。あと、車のドアで攻撃をかわそうとするAKIRAさん演じる琥珀さんめがけて、躊躇せずにガラスにパンチをゴーン!ってやって、琥珀さんをボーン!って殴るとかですね。

あと、あえて顔を何度も打たせて、無表情なあたりとか。もちろんT-1000を思わせるような、ムクッと立ち上がるあの立ち上がり方とか。中盤では、『マトリックス2』ばりの、車への飛び乗り攻撃とかもあって……とにかくもう、小林直己さんは最高でございます。他にも、USBを奪った車を面倒くさそうに見送る九十九さん……と、思いきや、ダッシュで九十九さん、追いかけてきて、フロントガラスにズドーンと乗っかって、からの、車内にドーン!と乱入するまでを、それこそ韓国映画の、素晴らしいカーチェイスでしたよね、『アシュラ』ばりの、疑似ワンカットで捉えたショットとかですね。とにかく、車と格闘を組み合わせたアクション、少なくとも日本映画としては、かつてないレベルでアイデアとか技術が投入されていて、非常に見応え満点でございます。

あと、前半部だと、MIGHTY WARRIORSの根城である「FUNK JUNGLE」というあのクラブでのライブシーン。ここね、やっぱりミュージックビデオとかを作る側からすると、あそこにいる客たち、エキストラの、量のみならず1人ひとりの質の高さ……つまり、ちゃんとそれぞれが曲に反応して、かっこよく、ある程度自由に、でも曲に反応して乗っている。これね、それぞれにちゃんとわかっている人をあの人数揃えないと、無理です。なので、LDHじゃないとできないシーンです。クラブにおけるラップライブシーンとしても、世界的にもトップレベルの映像が撮れていると思います。本当にかっこよかった。すごいです。あと、今回ですね、まさに圧巻の、列車倉庫での……クライマックスは列車倉庫での大乱闘シーンへとなだれ込んでいくんですけど、その直前に、みんな大好き村山さんと日向のタイマン寸前、からの……言ってみれば『ロッキー3』のラスト的な、「勝敗の行方は当人たちだけが知っている」というこのバランスの粋さ。これも素敵でしたけども。

で、そこからクライマックスに入って……あまりにも見どころが多すぎて、ちょっと言ってられないぐらいなんですけど。とにかく基本、「劣勢だ!」って思ったところに、加勢が加わる(という構造の繰り返し)。で、そこで見せ場、ドーン! 曲が流れるっていう。たとえば鬼邪高校の、敵をこうやって積み上げておいてからの、村山さんがボーン!って駆け上がって、ドーン!っていうキック。あれもそういう、(鬼邪高校)らしい見せ場。達磨一家だったらね、達磨一家はやっぱり「山車イズム」ですから……今回はあっと驚く、「そう来るか!」(笑)っていう山車イズムで来るんで。これはぜひ、劇場で見てください。RUDE BOYSはもちろんね、トニー・ジャーばりの身体能力を生かしたアクション、これもすごいですし。でも、いちばんすごいのは、やっぱりMIGHTY WARRIORS。いちばん最後に参戦するMIGHTY WARRIORS、なにもしてないのに、みんなふっ飛ばされていますから(笑)。たぶんね、MIGHTY WARRIORSの、イマドキ不良のかっこよさ感に、古臭い不良チームが圧倒されて、「ヤベッ、かっこいい!(ドーン!)」って飛ばされている(笑)っていうね。

で、とにかくこのMIGHTY WARRIORSが参加してからの、「ワンカット風」ではあるんだけど、とにかくずーっとひと続きで続くアクションの、群舞としての完成度の高さ。もう圧巻ですね。これを見るだけでもう、入場料分は全然あります。まあ、勝敗が割と全体にグレーなのもハイローイズムなんですけど……さっきも言ったようにですね、コブラが『300』オマージュで、スパルタ魂を本当の極道相手にぶつけた結果、最終的にSWORD地区は大変なことになってしまう。メキシコ麻薬戦争ばりの大変なことになるらしい、っていうのが、『3』への流れっていうことで。本当に『3』が楽しみになる流れでございました。本当はこの、アクション監督の大内(貴仁)さんとか、美術監督の橋本(創)さんとかの仕事ぶり、もっと細かくいろいろと検討したいぐらいなんですけども。

とにかくやっぱりね、これは楽しかったですよ。応援上映やったらまた行きたいぐらいの素晴らしさでございました。僕は……残念ながらやっぱりハイローファンだわ。はい。『ハイロー2』、ぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画はジム・ジャームッシュ監督の最新作『パターソン』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

(ガチャ回しの時間)ハイロー2、あの高嶋政宏さん演じる組長役のね、やりたい放題か!(笑)っていうあの演技っぷりもすごかったですけどね。はい。ということで、来週のウォッチ候補作品7作品を発表いたします……。(以下、ガチャ回しへ)

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◆過去の宇多丸映画評書き起こしはこちらから!