大津市打出浜の大型商業施設「大津パルコ」が31日、20年の歴史に幕を下ろす。若者向けの店舗を核に、大津の中心市街地に人を呼び込み、まちに活気を生み出してきた。買い物客らは閉店を惜しみながら、「パルコ」後に開店する商業施設に関心を寄せている。
大津パルコは1996年11月2日、元大津食品地方卸売市場の跡地に開店した。若者向けに人気の「パルコ」ブランドに加え、テナントの約8割が滋賀初出店という話題性、映画館との併設もあって開店1カ月で50万人以上が訪れた。
近所に住む坂田智津子さん(74)=同市打出浜=は「(76年に)西武大津店、そしてパルコができて地域がにぎやかになった。マンションがにょきにょきと建っていった」と当時を振り返る。JR膳所駅周辺も様変わり。駅近くでギフトショップを経営する森清さん(69)=同市馬場3丁目=は「もともと高校生は多いまちだった。パルコができると大学生も増えた」と変化に驚いた。
駅からパルコまでの500メートルの坂道「ときめき坂」は、週末になると人であふれた。坂の両側には若者向けの店が徐々に増え、クレープ店には長蛇の列も。栗東市の会社員有吉友香さん(34)は「中高生のころはクレープを食べ、パルコで映画を見て、買い物をするのが楽しみだった。お年玉を握りしめて通った」。大津市職員の安孫子典子さん(46)=同市桜野町=も「有名ブランドの店もあり、最先端が滋賀にやってきた感じだった」とパルコで服選びを楽しんだ。
だが、郊外型の大型商業施設が県内各地に次々と出店すると、買い物客が分散し、売上額にも直結した。2015年度のテナント売上高は36億円で、ピーク時(98年度)の3分の1まで減少した。16年8月に大津パルコは総合不動産業の「アーク不動産」(大阪市)に譲渡されることが発表された。
今月18日から閉店セールが始まり、店内は連日多くの買い物客でにぎわっている。田中康之さん(64)、さつきさん(24)=大津市衣川=親子は「最後なので来たかった。寂しい」とぽつり。さつきさんはパルコから近い大津高の卒業生で「放課後はフードコートで食事し、プリクラを撮った。閉店は大津高生にとって大打撃では」と心配する。
「閉店という大きな危機を契機に、住民側も商業施設を支える意識を持たねば」と話すのは、地元の平野学区のまちづくりに取り組む「ひらの円卓会議」のメンバー川口博司さん(68)=同市におの浜=だ。円卓会議の会合には、すでにアーク不動産の担当者も出席しており、川口さんは「2つの大きな商業施設がここにいてくれるからこそ、この地域に価値が生まれる」と力を込める。
大津市も同社の商業施設構想には、強い関心を抱く。市はパルコの立地を中心市街地活性化に向けた重要拠点の一つとしており、今年2月、同社に「にぎわいを創出し、地域住民と連携する商業施設にしてほしい」と要望書を出した。市商工労働政策課は「商業施設と湖岸エリアがつながり、人が多く集まる場所になってくれれば」と期待した。