美味いものは旬に食べなさい、魚介類は特に。――これは、海のない山梨で何故か鮮魚の卸をやっていた、私(筆者)のおじいちゃんが生前に口酸っぱく言っていたことです。
確かに、なにかの魚介類が苦手という人は、旬じゃないものを食べて「生臭いだけで味がしなかった」的なことを言うことが多いように思います。特に、牡蠣。
「ノロウイルス食らったトラウマ」を除くと、筆者調べだと牡蠣嫌いの人があげるポイントは「生臭い」「味と表現できるものが塩味しかない」「これ腐っているの?」の3つに大別できます。
それ、旬じゃない牡蠣を食べたからだよ!
他人の趣味趣向にあーだこーだ言うのは無粋ですが、食の豊かさは心の豊かさ、好き嫌いが多いのは人生の損! 旬の美味しい牡蠣を食べて、あなたに見地を広げてもらいたいの!!
突然、架空の「あなた」に対してこう思った筆者。しかし、思ったのは7月。牡蠣の旬ではまったくない。この計画冬まで寝かせるか、いや今やりたいんだどうしよう、と悩んでいたら……
なんと! 「1年中旬の牡蠣を味わえる」とうたうお店を見つけました! しかも2480円で牡蠣食べ放題もできる! やったー牡蠣まつりできる! これはうれしい!
でも、何で牡蠣の旬じゃないこんな夏に、旬の味を味わえるの? そもそも本当に美味しいの?
ということで、牡蠣嫌いの友人を連れ、調査兼牡蠣嫌い克服のため、そのお店に伺ってきました!
牡蠣天国がたった2480円で楽しめるとは…!
お店の名前は『かきっこ商店』。阿佐ヶ谷駅北口から徒歩2分、店構えはちょっと異彩を放っています。
「阿佐ヶ谷っぽい!」と筆者はワクワクしたのですが、対する友人は曇り顔。「牡蠣なん……」などぶつぶつと言っていましたが無視して店内へ。
1階はカウンターメイン、2階はテーブルメイン。外装からは想像もつかないほど清潔感にあふれています。
「牡蠣以外のメニューもあるよね?」と聞いてくる友人を完全に無視し、牡蠣食べ放題コース(2480円)を注文。
「牡蠣は食べ物じゃないし、お前は人間じゃねぇ」みたいな目で見られましたが、好き嫌いの克服にはこのくらいのスパルタが必要なのよ! みたいな笑顔で応戦。しかし、心の中は「これで美味しくなかったらどうしよう」と不安でいっぱい。
メニューの中から選んだのは、
・かきっこ焼き
・殻つき焼き牡蠣
・牡蠣とブラックオリーブのカルパッチョ
・牡蠣ポン酢
・牡蠣の燻製オリーブオイル漬け
・カキフライ
・牡蠣グラタン
・牡蠣と海老のアヒージョ
・牡蠣チリマヨネーズ
・牡蠣と白身魚のアクアパッツァ
・牡蠣とベーコンのリゾット
の11品。メニューは他にもたくさん! これだけ牡蠣まみれになれて2480円は安い!
テンションMAX時に飲むのは、やはりビールでしょう! ちなみに、テンションMINな友人はウーロン茶にしていました。
先に出てきたのが、お通しの盛り合わせ。その日に厳選された6品で、燻された香ばしい風味と身のとろける食感が素晴らしい「牡蠣の燻製」、夏らしくシンプルな「スライストマト」、口に入れた瞬間にとろける「和牛コウネの刺し」、締まった身とタンパクかつ深い味わいの「タイ刺身」、ポン酢でさっぱりいただく「センマイ刺し」、そしてカニミソより濃厚でありながらもクセのない「牡蠣味噌」。食欲にターボがかかる品ぞろいで、友人も「牡蠣以外もあるんだ! しかも全部美味い!」とテンション回復! てか気づかなかったのか、牡蠣味噌パクパク食べてたな。
牡蠣まみれの祭りが始まった!
お通しに舌鼓を打っていると、牡蠣登場! 1品目は「牡蠣ポン酢」。居酒屋でもよく目にする品ゆえ「牡蠣嫌いなのに上司に無理やり食べさせられたことがあってな……会社辞めようと思った……お前(筆者のこと)と友達でいるのやめようかな……」とガチのトーンで話す友人におびえながらひとくちいただくと……美味しい! 取材に伺ったのは8月なので牡蠣の旬じゃない時期なのに、牡蠣の独特な味わいがギュッと濃縮されていて、かつ臭みもなく水っぽさもない!
「これ本当に美味しいから食べてみて!」と友人に勧めると、彼は恐る恐る口に運び――
「あれ? 美味しい。俺が嫌いな牡蠣と違う」
“美味しい”いただきました!!!!
つづいて、焼き牡蠣。濃厚な牡蠣の味とレモンの爽やかさが絶妙にマッチした極上の逸品で、ついつい白ワインを追加注文! 友人も「俺も飲む!」と早くも牡蠣に魅了された様子!
あああああ~~~~~~~~~~~天国じゃ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
「いや、ちょっとびっくりした。俺が食べた牡蠣は水っぽくてぐにゃぐにゃした生臭いだけの食べ物だったんだけど、ここの牡蠣はサッパリしてて少し海の風味があるアンキモみたいな感じ? とにかく美味い」と友人。よかった! 連れてきてよかった!!
そんな会話をしているうちに、どんどんとどく牡蠣料理。
「かきっこ焼き」は、焼き牡蠣の変わり種として“ねぎ味噌”“トマト&チーズ”“ガーリックバター”などのソースを掛けた美味しくて楽しい逸品。
「カキフライ」「牡蠣のチリマヨ和え」などなど、たくさん頼んだ結果――
テーブルの上が牡蠣の宝石箱や!!!!!!
それでもまだまだ牡蠣は届く!
「牡蠣と海老のアヒージョ」は、牡蠣・海老・トマトの香りが油に染みこみ、サツマイモの甘みと相俟って麻薬のような魅力を発する逸品。
個人的なイチオシが、この「牡蠣のアクアパッツァ」。白身魚とともに、塩とパセリのシンプルな味付けで蒸し焼きにされた一皿ですが、すべての素材の魅力が引き出されている上に、皿に残ったおダシもスプーンですくって飲みたくなるほどいい味の出ている珠玉の逸品です!
「牡蠣のグラタン」「牡蠣のリゾット」は、どちらもボリュームたっぷりでクリーミー&炭水化物の魔力ぎっしり。オーダーしてから少し時間がかかるので、「そろそろ満腹だから〆ようかな」と思ったタイミングで、お早めにご注文を。大丈夫です、満腹でも食べられてしまうほど美味です!
なぜ一年中「旬の牡蠣」が食べられるのか?
しかしなぜ、こんなに美味しい牡蠣を通年で提供できるの? 旬じゃない牡蠣ってまずいんでしょ? お店の人に聞いたところ――
「うちは、もともと広島の店なんです。市場で入札する資格も持っていて、いい物が手に入るのでそれをお手頃な価格でお客さんにお出ししようと。ウチは牡蠣を特殊な方法で保存するノウハウがあり、いつでも旬の牡蠣の味を提供することができるんです。おススメは焼き牡蠣やフライですね」とのこと。
また、「旬じゃない牡蠣は不味くて仕方ないです(笑)。そんなもの、お客様には提供できません!」と断言しておりました。
旬じゃなくても旬の牡蠣を味わえる『かきっこ商店』さんに、みなさんもゼヒ足を運んでみてくださいね!
余談ですが、この日から牡蠣にハマったらしい友人が連日牡蠣を食べに行こうと連絡してくるのが若干というかものすごくウザいです。
紹介したお店 かきっこ商店
著者・SPECIAL THANKS
ライター/シマヅ
1988年生まれ。フリーライター。 武蔵野美術大学造形学 部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタ ビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。