北朝鮮ミサイル発射で緊急対応の新プロセス始動-米トランプ政権

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North Korea's official news agency released this photo of the missile launch on Aug. 29.

Photographer: STR/AFP/Getty Images
  • ケリー大統領首席補佐官が導入、初動対応を慎重にする目的で
  • 大統領のツイートは避けられたが米国の苦しい立場浮き彫りに

米国が今回の北朝鮮のミサイル発射を感知して間もなく、ティラーソン米国務長官とヘイリー米国連大使は、緊急対応策を練る国家安全保障担当補佐官らの電話会議に加わった。

  トランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長は米国を尊重し始めていると述べ、評価してから1週間足らずで行われた今回のミサイル発射は米国への挑発であり、米国は明確な対応を迫られた。このため、安全保障チームはこのような事態に備えてケリー大統領首席補佐官が導入したプロセスを始動させた。

  このプロセスの目的はまず同盟国が懸念しないよう調整することと、初動対応を大統領の思いつきのツイートではなく、慎重な思考を反映した声明にすることだった。政権内の方針に関する情報であることを理由に、事情に詳しい複数の関係者が匿名で明らかにした。

  米東部時間28日夕、電話会議はマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が大統領に提案する声明を作成した時点で、打ち切られたという。

  翌日に公表された同声明は、北朝鮮のこのところの発射は近隣諸国への「侮辱」を示しており、「全ての選択肢を検討する」ことが米国の立場だとあらためて強調した。 

  こうしてトランプ大統領の「炎と怒り」のツイートが繰り返されることは避けられた。より抑制的な対応は市場の混乱の緩和にも寄与した。しかしこの短い声明は、米当局者らが北朝鮮の行動に匹敵するような対応を明確に示せないという事実も浮き彫りにした。
 
  トランプ大統領はオバマ氏ら歴代の大統領が北朝鮮の核・ミサイル計画を早い段階で阻止できなかったとして批判してきたが、北朝鮮の兵器テストの加速に直面し、前任者らと同じ状況に陥っている。

  オバマ政権時代に核不拡散担当の大統領特別補佐官を務めていたゲーリー・サモア氏はインタビューで、「交渉の基本的な阻害要因は金委員長であり、トランプ大統領ではない」と述べ、「金委員長は米国本土を直接攻撃する能力を獲得したと示すまでは交渉に関心がない」と説明した。

  トランプ政権にとって問題なのは、取り得る選択肢が以前と変わらず、北朝鮮の核保有を認めて封じ込めることか、制裁を絡めた交渉による解決、軍事行動の3つに限られることだ。しかし軍事攻撃については、南北境界線に近いソウルや、日本などの隣国が被り得る被害を考慮すれば受け入れ難いとアナリストらは指摘する。

  国連安保理が北朝鮮への追加制裁措置を採択しても北朝鮮への影響力が限られる中で、トランプ政権はティラーソン国務長官の「平和的圧力」のアプローチに引き続き重点を置こうとした。しかしティラーソン長官自身、今年7月に、外交が失敗すれば米国には「良い選択肢はあまり多くは残されていない」と発言、ジレンマを認めている。
  
原題:Latest North Korea Missile Launch Spurred White House Game Plan(抜粋)

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金正恩委員長、29日のミサイル発射はグアム封じ込めへの「前奏曲」

更新日時
  • 引き続き米国の反応を見守ってからさらなる行動を決める-金委員長
  • 今後も太平洋に着弾するミサイル試射続けるよう指示

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は30日、日本上空を通過した29日のミサイル試射について、米軍の拠点であるグアム封じ込めのための「意味深長な前奏曲」だと表明。引き続き米国の反応を見守ってからさらなる行動を決めるとの考えを示した。

  国営の朝鮮中央通信(KCNA)が伝えた声明によれば、金委員長は中距離戦略弾道ミサイルの発射を指導。朝鮮人民軍に対し、今後も太平洋に着弾するミサイル試射を続けるよう強く促した。

金正恩委員長
金正恩委員長
出典:韓国中央通信社(KCNA)/ AFP、ゲッティイメージズ経由

  KCNAによると、今回のミサイル発射は米韓合同軍事演習に対抗する「力の誇示」の一環だった。北朝鮮は今月9日、グアム島周辺への包囲攻撃を検討していると表明。これを受け、米軍当局者らは攻撃されれば報復すると警告していた。

  北朝鮮の飛翔(ひしょう)体が日本を通過したのは2016年2月にロケットが沖縄上空を飛行して以来となった。先週末と29日の2回の発射により、一時は緩和したとみられていた緊張が再び高まり、金委員長の兵器プログラムを巡る対話への期待は後退した。

  北朝鮮は米国が「敵対的」な政策を撤回しない限り、核プログラムの交渉には応じないとしており、米韓合同軍事演習は体制転覆を狙うもので、偶発的に戦争を引き起こし得ると強く非難してきた。

  ティラーソン米国務長官は日本、韓国の外相と別々に電話会談し、ミサイル発射実験は「北朝鮮の挑発行為が激化したものであり、同国が危険な脅威であることを示している」との認識で一致した。国連安全保障理事会はミサイル発射を「強く非難する」との声明を出した。

  中国はミサイル発射への対応について安保理と協力しているが、いずれかの国による単独での北朝鮮制裁には反対だと、王毅外相が30日北京での記者会見で述べた。

  「中国と北朝鮮は隣人であり、伝統的に友好な関係を持ってきた。これは事実だが北朝鮮は国連決議に違反しており、中国は安保理のメンバーとして、また責任ある大国として、反対を明確にすることが必要だ」と語った。

  KCNAによれば、今回の発射は計画されている首都平壌からの発射計画の第一回。ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのデータベースによれば、今回のミサイルは平壌空港から発射された。  

原題:Kim Says Latest Missile Test Was ‘Prelude’ to Containing Guam(抜粋)
Kim Says Missile Over Japan Was ‘Prelude’ to Containing Guam (2)

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