国家予算の26%をつぎ込んだ「人造石油」計画

山本五十六を苦しめた「エネルギー問題」とは

戦前昭和をのぞくと、現代日本の問題が見えてくる(撮影:梅谷秀司)
日本人はなぜあの戦争を止められなかったのか、あの戦争にいったいどれだけのカネがつぎ込まれたのか。
太平洋戦争に突入する前夜の日本、「戦艦大和」の建造計画を阻止するために山本五十六が海軍に招じ入れた若き天才数学者・櫂直(かい ただし)を主人公にしたマンガ『アルキメデスの大戦』の作者・三田紀房さん。
山本五十六をダマして「水からガソリンを製造する」実証実験を霞が関の海軍省で行った詐欺師・本多維富を歴史の闇から発掘した歴史ノンフィクション『水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬』の著者、山本一生さん。
2017年8月、2人の異色対談が実現した。架空の天才と希代の詐欺師が照らし出す戦前昭和をのぞくと、現代の日本、そして北朝鮮問題が見えてくる――。

国家予算の26%をつぎ込んだ「人造石油」研究

三田紀房(以下、三田):『水を石油に変える人』ですが、非常に面白かったです。いわゆる「水からガソリン」事件のあらましは知っていたので、イカサマ行為が露見して詐欺師らが捕縛されるのは、もうわかっている。でも面白くて読んじゃう。まるで「刑事コロンボ」を見ているような感覚。犯人は最初にわかっているのに最後まで楽しく読める。そんな上級推理サスペンスのような1冊でした。

山本一生(以下、山本):『アルキメデスの大戦』を読ませていただき、フィクションなんだけど、よく史実を勉強されているなと思いました。そして最後をどうまとめるのかが非常に気になる。まだ太平洋戦争どころか日中戦争も始まってないんだけど、この漫画のなかの日本はどうなるのか、そして物語の最後がどうなるのか、この先、三田さんがあの時代をどう料理するのか、それが楽しみです。

三田:ありがとうございます。『アルキメデスの大戦』では、日本海軍の航空燃料について触れる場面が出てくるのですが、当時の燃料事情についてお聞かせ願えませんか?

山本:戦前の日本は石油の9割を海外に依存していて、そのほとんどをアメリカからの輸入に頼っていました。そこで自給率を高めようと、石炭液化、いわゆる人造石油と呼ばれるものに手を出し、深みにはまっていきます。

三田:人造石油については山本先生の『水を石油に変える人』にも書かれていますね。

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  • NO NAME5c3a1375f5d3
    当時の石油事情を知りたいなら「海賊と呼ばれた男」を読まれたらいかがでしょうか。
    石油メジャーの誕生、寡占状態、政府の石油政策など、参考になると思いますよ。
    ベストセラーになった小説ですから、地方の図書館でも蔵書になっております。
    今、創業家と、もめている出光興産の話ですけどね。
    経営者側が新規増資をして、30パーセント以上保有している創業家の議決権を無効にして昭和シェル石油と経営統合する事になりそうです。
    up1
    down1
    2017/8/30 12:01
  • NO NAMEff6d8891fe7a
    三田さんの認識では、石油備蓄 200日はトラウマからだと言っているが、そうは思わない。中国による南シナ海支配が強まり、周辺海域の自由航行が阻害されたら、即石油の入手難に陥るからだ。この人も平和ボケなのだろうか。
    水から石油はいくらなんでも、と思ったら、タールの水素添加とあり、提唱した人は完全に詐欺師。国の弱みにつけ込んでいる。
    山本五十六を賛美しているが、これは営業。司馬史観的には、やはり東郷平八郎の方が数段上。
    up2
    down2
    2017/8/30 11:09
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