辻仁成「太く長く生きる」(30)「ニンジンがすごい! ニンジン健康法」

 

(最終)新世代賞 ポスター-(B2)毎朝、窓を開け、この景色を眺めながら深呼吸で始まる一日。

 

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 ニンジンがすごいと私の周辺で話題になっています。いまさら『ニンジン』か、と最初は半信半疑でしたが、少し勉強してみると、まんざら大げさな話ではないことがわかってきました。 

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 まず、ニンジンが健康にとてもよい私の考える根拠を列記してみます。 

 1、緑黄色野菜の中でもニンジンは100gあたり8600μgのβカロチンを含んでいます。ほうれん草、かぼちゃの2倍。βカロチンは強い抗酸化力を持っている栄養素の一つです。老化、動脈硬化、がんの予防に効くとされています。βカロチンよりも効果のあるαカロチンも含まれています。 

 2、ルテインも多く含まれているので目にいいらしい。パソコンのブルーライトから目を守る作用がルテインにはあります。 

 3、血液を固まりにくくする作用のあるクマリンも含まれています。血液、リンパ液の循環を改善してくれるようです。血栓予防効果も期待できそうです。 

 4、ペクチンなどの水溶性食物繊維は腸内で善玉菌の餌となり、善玉菌の増殖活性化を促します。 

 5、βカロチンは体内でビタミンAに変化しますので、皮膚や粘膜を健やかに保つ効果があり、皮膚の新陳代謝を高め、結局はお肌のアンチエイジング効果もあります。 

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 期待できる効果だけでもこんなに列記できるのです。私たちは酸素を取り入れてエネルギーを作っていますが、その過程で一部の酸素が、酸化力の強い活性酸素に変化してしまいます。これが増えすぎると血管や細胞を傷つけ、動脈硬化など生活習慣病を引き起こすのだとか。これを抑える働きが、話題の「抗酸化作用」ということになります。ニンジンは野菜の中でも抜群にこの抗酸化作用の力が強いそうです。 

 ここに着目したのが、ドイツのゲルソン医師。1930年代に開発したといわれる「ゲルソン療法」はニンジンを有効的に摂取し(有機ニンジンをジュースにして飲む)、自然治癒力を高めるというもの。私の知り合いで癌を患った方々がこの方法を実践しています。癌という病を「栄養と代謝の障害」と認識し、上記の効能からニンジンを食べることで自然治癒力を高め、癌の撲滅を期待する。もちろん、解明されていない点もあります。しかし同じ分、信じる要素もあると私は思いました。有機のニンジンを摂取するだけですから、プラスの要素はあってもマイナスではありませんね。  

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 知人たちはゲルソン医師の方法を勉強し、有機栽培されたニンジンを大量のジュースにして日々飲み、癌の再発を防ごうとしています(ここで注意することがあると友人が力説しました。ニンジンにはアスコルキナーゼという酵素が含まれており、これがビタミンCを破壊するので他の野菜や果物と一緒にジュースにはしてはいけない、とのこと)。 

 そして、無農薬のニンジンを使用することが大事だとか。農薬には発癌物質が含まれているので、当然のことでしょう。無農薬、有機栽培のニンジンでお試しください。ゲルソン療法が無敵かどうか厳密な医学的根拠はわかりませんが、ニンジンに着目したゲルソン医師の手法には説得力があるような気がします。癌の予防にも役だつばかりか、アンチエイジング効果や目の働きの改善に優れた効果が期待できそうなので、試さない手はありません。ゲルソン療法、ニンジン食事法などの書物はかなり出回っておりますので、書籍を取り寄せ、皆様独自の健康法をそこから導きだすのがよろしいかもしれません。 

今日のひとこと。 『まず、ニンジンを大好きになることですね。それが一番の健康法かもしれません』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に『太陽待ち』『サヨナライツカ』『右岸』『永遠者』『クロエとエンゾー』『日付変更線』『息子に贈ることば』『パリのムスコめし』『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』など多数。新刊に『父 Mon Père』(集英社)。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。

 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら

辻仁成「太く長く生きる」

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