眼瞼痙攣(がんけんけいれん)という、目の上まぶた、下まぶたが痙攣してピクピクと勝手に動く症状が出てませんか?
目の下の痙攣が止まらないという人も居るようです。
まぶたの痙攣の治し方と原因を纏めましたので参考にしてみて下さい。
- はじめに
- 眼瞼痙攣は、まぶたの開け閉めが難しくなる病気
- 眼瞼痙攣の症状は3種類
- 眼瞼痙攣の患者さんの顔には共通点がある
- 眼瞼痙攣の診断方法
- 眼瞼痙攣の原因は3つ
- まばたきの役割
- 眼瞼痙攣の治療(運動症状)
- ボトックス治療で眼瞼けいれんを完治
- 眼瞼痙攣と間違えやすい病気
- 様々な病気と間違えやすい眼瞼痙攣
- 最後に
はじめに
目を開けにくい、まばたきが増えるなどの症状が現れる、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や、目の周辺だけでなく、頬や口の周辺の筋肉までもピクピクと動く片側顔面痙攣(けいれん)に悩んでいる方は実は少なくありません。
眼瞼痙攣は、「痙攣」という名前が付くので勘違いされやすいのですが、必ずしもぴくぴくと痙攣するわけではなく、目の開け閉めがしにくい状態のことを指します。
片側顔面痙攣という症状は、目や口を開けたり閉じたりする役割を担う顔の筋肉が自分の意志とは関係なく収縮をし、顔の頬の周りがピクピクと動く病状を指します。
眼瞼痙攣という症状と片側顔面痙攣という症状は、似たような名称ですが中身は全くの別物になります。
眼瞼痙攣は特に日常生活への影響も大きく、歩いているときに何かにぶつかって怪我をしたり、運転中にひやりとする体験をし、運転をやめてしまう人も少なくありません。
しかし、眼瞼痙攣はドライアイと症状が非常に似ているため、目の開けにくさを訴えて病院を受診しても、ドライアイや眼精疲労と間違えられてしまい、適切な治療をしてもらえない場合があります。
病院で処方された目薬を長く使っても、症状がさっぱり改善されないというケースもあります。
ところが、最近では眼瞼痙攣や片側顔面痙攣のメカニズムが徐々に解明され、治療も進歩しています。
眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療には、ボツリヌストキシン(ボトックス)治療が効果的であることがわかってきており、近年注目を集めています。
今回は、この眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の原因や症状、治療法などをご紹介しますが、特にボトックス投与による治療に重点を置いて詳しくご紹介していきます。
眼瞼痙攣は、まぶたの開け閉めが難しくなる病気
眼瞼痙攣とは、目の開け閉めが上手くできなくなる病気で、まばたきが増えたり、まぶたが垂れ下がってしまったりします。
また「痙攣」という名前ですが、必ずしも痙攣を伴うわけではありません。
眼瞼痙攣は、目の周辺の筋肉が必要以上に収縮してしまうので瞼を持ち上げるのが難しくなって、気づかないうちに片側、或いは両側の瞼が下りてしまう症状になります。
眼瞼痙攣と聞くと、「目の疲れや寝不足を感じたときに、まぶたがぴくぴくするあれでしょ?」と思う方も多いでしょうが、意外にも眼瞼痙攣は、このようなまぶたの痙攣はあまりみられません。
眼瞼痙攣の症状は3種類
眼瞼痙攣の主な症状は、運動症状、感覚症状、うつ症状の3つに分けられます。
それぞれ見ていきましょう。
運動症状
まぶたを開け閉めしにくくなったり、まばたきが増えたりします。
感覚症状
目の不快感、まぶしさ、目がしょぼしょぼするなどを感じます。
目を閉じている方が楽で、風が目に当たると特に辛く、痛みを感じることさえもあります。
光に敏感になり、明るい所にいるのが苦痛に感じます。
うつ症状
気分が落ち込み、外に出たり人に会うのが嫌になります。
この場合、目の周りの筋肉がぴくぴくすることは滅多にありません。
では、眼瞼痙攣の症状を抱える患者さんは、何をきっかけに病院を受診するのでしょうか。
上記でご説明した眼瞼痙攣の主な3つの症状のうち、まぶしさを感じたり、目を閉じていた方が楽に感じるなどの、感覚症状を訴えて病院を訪れる人が圧倒的に多いようです。
その次に多いのは、目の開け閉めのしにくさを感じる運動症状が見られる場合です。
眼瞼痙攣は、目を開けているのが困難になるため、歩行中や運転中のトラブルが増えるようになります。
停車中の自動車に衝突した、犬の散歩中に木や電柱にぶつかったなど、眼瞼痙攣の方は日常生活の中に大きな危険が潜んでいます。
実際に転んだり、電柱や人にぶつかったりするまでいかなくても、危険を感じたり、ひやりとすることは増えるようです。
実に眼瞼痙攣の患者さんの64%の方が、自動車の運転中に「危険を感じた」と答えています。
眼瞼痙攣の患者さんの顔には共通点がある
眼瞼痙攣の患者さんの顔には、いくつか共通する特徴が見られます。
まばたきが多く、常に目がしょぼしょぼとしていたり、目を閉じていた方が楽なため、伏し目がちになります。
また、目を薄くしか開けていなかったり、片目を閉じていたり、眉間の縦じわや、額と鼻の付け根に横じわが現れるという特徴があります。
眼瞼痙攣は、特に40代後半以降の女性が発症することが多いですが、最近では若い世代で発症するケースも増えており、若いからと油断は禁物です。
眼瞼痙攣の主な特徴をまとめると以下のようになります。
・まばたきが多い
・伏し目がち
・目を薄くしか開けていない
・眉間に縦じわ、額と鼻の付け根に横にじわがある
眼瞼痙攣の診断方法
眼瞼痙攣の疑いを感じて病院を受診すると、はじめにアンケート用紙に症状を記入し、その後いろいろな検査を受けることになります。
病院に行くのはためらうけど、もしかして眼瞼痙攣かも!?と思う場合は、まずは自己診断表でチェックすることもできます。
もしもその結果、眼瞼痙攣の症状に当てはまるものが一つでもあれば、重症化する前にすぐに眼科を受診してください。
病院を受診する際は、その自己診断表を持参するとスムーズです。
症状のアンケートや医師による問診を受けて、眼瞼痙攣の可能性があると判断された場合、瞬目負荷試験(まばたきテスト)を受けることで眼瞼痙攣と確定され、病気の進行具合を調べることができます。
まばたきテストは主に次の3点になります。
1.軽瞬テスト:リズムよくまばたきを繰り返す
2.速瞬テスト:まばたきを10秒間続ける
3.強瞬テスト:強く目を閉じてからパッと聞く運動を10回繰り返す
一見簡単そうですが、眼瞼痙攣の患者さんにはこのような動きは困難で、上手くまぶたが動かなかったり、連続して行うことができない、まばたきのリズムが乱れる、動きがぎこちなくなる、まぶたがぴくぴくと震える、などという異常が現れるので診断しやすくなります。
それでは、まばたきテストの内容をそれぞれ詳しくみていきましょう。
軽瞬テスト
このテストをすると、眼瞼痙攣の患者さんは、まぶただけを動かす軽いまばたきができません。
どうしてもまゆ毛まで動いてしまうような強いまばたきしかできなかったり、速くなってしまったり、途中で止めてしまうなどリズム良くまばたきができなくなります。
速瞬テスト
なるべく速いスピードで軽くまばたきをしてもらうテストです。
健康な方では、10秒間に30回以上のまばたきを連続させることが可能ですが、眼瞼痙攣の患者さんはまばたきがぎこちなくなったり、もっと遅くなったり、一度もできないことさえあります。
強瞬テスト
このテストでは、ぎゅっと強く目を閉じてからぱっと開けてもらいますが、その際眼瞼痙攣の患者さんの場合は、まぶたが痙攣したり、まぶたが開くまでに時間がかかることがあります。
重症化した場合は、ほとんど目を開けることができず、目の周りの筋肉が自分の意思とは関係なく収縮したりします。
まばたきテストの際に、目の周りの筋肉だけではなく、口の周りの筋肉などにも不自然な収縮が現れた場合は、「メージュ症候群(ある病気にある症状が合併されたこと)の可能性が高くなります。
眼瞼痙攣の原因は3つ
なぜこのような不快な眼瞼痙攣になってしまうのか。
それには、ちゃんとした理由があるそうです。
本態性眼瞼痙攣
本態性眼瞼痙攣という病状をご存知の方は少ないのではと思いますが、眼輪筋と呼ばれる目の筋肉が必要以上に縮むことが原因で、自身の思いとは裏腹に勝手にまぶたが閉じてしまう病気を言います。
その原因が、他の神経学や眼科学的な異常ではないものを指します。
眼輪筋だけに止まらず、顔面の他の筋肉や、舌や咽頭などの筋肉が痙攣することもありますが、その場合は「メージュ症候群」と診断されます。
症候性眼瞼痙攣
パーキンソン病や進行性核上麻痩(下を見るのが困難になる病気)、脳梗塞などが原因で起こるもののことです。
薬剤性眼瞼痙攣
抗うつ薬や抗不安薬などの薬を長く服用することで発症するものです。
トリプタノールなどの三環系抗うつ薬、ルジオミールなどの四環系抗うつ薬によってジス卜二アという運動障害が現れる場合がありますが、最近行われた研究で、50歳未満で眼瞼痙攣を発症した患者さんが服用していた薬を調べると、その約半数がエチゾラムやベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使用していたことがわかリました。
また工チゾラムの服用を中止した患者さんの9人中7人に眼瞼痙攣の症状の改善が認められました。
本態性眼瞼痙攣、症候性眼瞼痙攣、薬剤性眼瞼痙攣の中で、一番多く見られるのが本態性眼瞼痙攣ですが、その発症原因はいまだはっきりと解明されていません。
何らかの原因により、まばたきをコントロールしている神経に不備が生じて本態性眼瞼痙攣が発病しているという説が一般的です。
眼瞼痙攣の原因ははっきりしないものの、そのきっかけや悪化する理由にはストレスが関係していることが指摘されています。
ちなみに、薬剤性眼瞼痙攣でいうと、シックハウス症候群の原因でもあると言われてる化学物質にも、何かしらの要因があるのではと研究が進めれらているそうです。
眼瞼痙攣を診断するには、まばたきテストだけでなく、脳の検査が必要となる場合もあります。
しかし脳の検査といっても、MRIやCTなどの一般的な脳検査では、眼瞼痙攣の診断はできません。
MRIやCTは脳の蛮化や、脳細胞の変性などを見つけるための検査であり、そのような症状が現れない眼瞼痙攣の場合は、どんなに重篤化していたとしてもMRIの結果は正常であることがほとんどです。
しかし、MRIやCTよりもさらに高度な技術を活用したPET検査(ポジト口ンCT)で脳の働きを調べてみると、眼瞼痙攣の患者さんは健康体と比較すると、脳の形には異常は見られないですが、脳の「視床」と呼ばれる部分については、その働きど度合いに差異があることが明らかになったそうです。
視床という器官は、見たり聞いたりする感覚を入力知覚刺激情報として脳の大脳皮質や大脳基底核といった器官に信号を伝える役割を担っています。
眼瞼痙攣を患ってしまうと、太陽の光がまぶしく感じたり、目に不快感が残ったままだったりという感覚症状のみならず、まぶたを開きにくいなどの運動調整に問題を抱えているため、このような症状と「視床の異常な活動とに何らかの関連性があると考えられています。
運動調整を行っているときの脳の役割というのは、大脳基底核と呼ばれる運動調整を主な役割とする神経核のグループと、視床と大脳をコントロールしている大脳皮質との間で情報支換をすることで、人間が正しく動けるようになっているとのこと。
しかし、眼瞼痙攣はこの脳の働きのどの部分に異常が現れることで発症するのかまでは、いまだわかっていません。
眼瞼痙攣の患者さんの脳は、「視床」が異常な活動をしていることまではわかっているのですが、「視床」の異常な活動が眼瞼痙攣の原因となるのか、そうではなく、眼瞼痙攣になると「視床」が異常な活動を始めるのか、そのどちらなのかはわからないのです。
今後もっと研究が進むことで、眼瞼痙攣の診断や治療が進歩することが期待されています。
まばたきの役割
は私たちの目にとって非常に重要まぶたは、眼球を保護する役割を担っており、通常1分間に20~30回のまばたきを繰り返します。
まばたきをすることで、目の表面にある角膜を常に涙で潤したり、結膜嚢から涙道へと涙を流すことで、細菌やほこりから目を守っています。
仕事によるストレス、或いはタバコの煙から刺激を受けると、まばたきの回数が増加することが明らかになってるとのことですが、逆に本を読んだり、パソコンやスマートフォンを操作している時は、まばたきの回数は減少傾向にあるそうです。
また、目の前で急に強く何かが光ったり、突然何かが目の前に飛んで来た場合などは、反射的に目を閉じるのが普通です。
まぶたを閉じることで眼球を守ろうとするためです。
まばたきのメカニズム
まぶたを動かす筋肉(まばたきに必要な筋肉)は、上まぶたの上眼瞼挙筋とミュラー筋、目の周りをぐるっと囲んでいる眼輪筋があります。
上限瞼挙筋は動眼神経、ミュラー筋は交感神経、眼輪筋は顔面神経が動かしています。
上まぶたを上に引き上げるには、上限瞼挙筋とミュラー筋が使われますが、上眼瞼挙筋が瞼を引き上げ、ミュラー筋が引き上げた状態を保つという役割をになってます。
眠さを感じると普通はミュラー筋と呼ばれる筋肉が弛緩して、上まぶたが下りてきます。
ちなみに、ミュラー筋そのものは交感神経でコントロールされている為、動かそうと意識しても自在に動かすことは不可能になります。
しかし、ミュラー筋がゆるんでいても、突然の大きな音にびっくりしたり、感情が爆発するような場合には、交感神経が活性化され、一瞬で目がぱっちりと大きく開きます。
ウインクなどをする際は、眼輪筋を意識的に収縮させることでまぶたを閉じますが、この眼輪筋が収縮したままになると、まぶたが自由に開けられなくなります。
眼瞼痙攣とはまさにこれで、神経や筋肉が正常に働かないことで、まばたきの機能に異常が起こり、まぶたの開け閉めが正常にできなくなるのです。
つまり、眼瞼痙攣は筋肉の病気というわけではなく、神経の異常であると考えられています。
眼瞼痙攣と局所ジストニア
眼瞼痙攣は、眼輪筋の過度な収縮によって、自分の意志と関係なくまぶたを閉じてしまう病気であると定義されています。
そして眼瞼痙攣は、局所ジス卜二アの一種です。
「局所ジスト二ア」とは、体の複数の筋肉が勝手に収縮したままになり、自分の意志とは無関係に同じ動作を繰り返したり、姿勢の異常が続くことです。
局所ジス卜二アには眼瞼痙攣だけでなく、「痘性斜頚(首がねじれたり、頭が傾いたりする」や「書痙(字を書くときに手が震えたり痛みを感じる)」が含まれますが、これらの原因もやはり解明されていません。
眼瞼痙攣の治療(運動症状)
眼瞼痙攣の運動症状に対して、次のような治療が行われます。
ボトックス治療
最近、眼瞼痙攣の治療に「ボツリヌストキシン(ボトックス)」が効果的であることがわかってきました。
ボトックスを目の周りの筋肉に投与することで、まばたきの際に使われる筋肉の緊張を緩和することができ、まばたきがスムーズになります。
1回の投与でだいたい3~4ヵ月ほど効果が持続し、この治療を受けた患者さんの約8割の方の症状が大きく改善されています。
1度受けただけでほぼ眼瞼痙攣の症状が見られなくなる方や、1年に1度の投与で日常生活に支障がなくなる方もいるほどです。
眼瞼痙攣の場合だけでなく、片側顔面痙攣の治療のためにボトックスが投与される場合も、保険が適用となります。
薬物内服治療
眼瞼痙攣の治療に内服薬を使った方法があります。
内服薬の例としては、抗てんかん薬、抗不安薬、向精神薬、抗パーキンソン薬です。
しかし、これらの内服薬が眼瞼痙攣に対して本当に効果があるかどうかは、現時点では明確になっていないそうです。
クロナゼパム(リボトリール)、塩酸トリフェキシフェニジル(アーテン)などの薬は、効果が見られることがありますが、それはあくまで一時しのぎに過ぎません。
薬を使うことで一時的に改善が見られるのは、弱っている神経を薬の力で無理に動かしているだけなので、長期に渡って薬を服用すると、反対に症状を悪化させることになりかねません。
ボトックス投与との併用であれば、薬の服用は否定しませんが、内服薬だけでの治療は危険が伴います。
クラッチメガネなどの利用
眼瞼痙攣の場合、片目を閉じたり、マスクをしたり、額や眉毛に手を当てたり、歯を噛みしめることで、まぶたが開きやすくなったり、開いたままを維持しやすくなることがあります。
それを利用し、「クラッチメガネ」という器具を使って上まぶたを上げた状態で固定することができます。
手術などをせずに手軽に症状を改善させることができる手段として注目されています。
手術治療
まぶたの皮膚のたるみを取り除く手術である上眼除皮膚切除法や、目を閉じる力を緩めるために行われる「眼輪筋切除術」が眼瞼けいれんの治療に応用される場合があります。
ボトックス投与や、薬を服用しても、まだ痙攣の症状が強く目を開けていられない場合は、眼輪筋切除術が選択されます。
眼輪筋切除術の他に、ミュラー筋タッキング術と上眼瞼挙筋短縮術という方法もあります。
手術と聞くと怖いですが、眼瞼痙攣の症状がある程度重い場合、ボトックス投与では間に合わず、手術を行った方が良いケースがあります。
ミュラー筋と上限瞼挙筋が伸びて、まぶたを開けていられない症状の場合は、手術によりこれらの筋肉を短くすることで、まぶたを開けやすくします。
ボトックス治療で眼瞼けいれんを完治
ボトックスは、どんな治療法?
「ボトックス」は、ボツリヌス菌がもっている蛋白質になります。
このボトックスを緊張した筋肉に対して注射してやると、脳から出る命令を阻害するので、筋肉が弛緩して結果的にリラックスした状態を生み出すことが可能だと明らかになってるとのこと。
最近では、顔のしわを改善する目的で美容にも使われており、私たちにとってもよく聞く言葉となりました。
ボトックスは1981年に初めて治療に使われていて、その時は斜視と呼ばれる病状を治すためにボトックスが注射されたそうです。
ボトックスの効果
ボトックスを筋肉が緊張しているところに投与することにより、筋肉の異常な緊張をゆるめることができます。
まぶたを動かすには、神経から筋肉へ情報が伝達されることが必要ですが、この情報を伝達するのはニューロンから放出されるアセチルコリンという化学物質です。
アセチルコリンが過剰に放出されることで、筋肉が異常に強く収縮してしまいます。
まぶたを動かす筋肉にボトックスを投与することで、アセチルコリンの放出を抑えることができるので、筋肉の異常な緊張を緩和することができます。
ボトックスの作用は投与した部分だけに限られ、全身の筋肉がゆるんでしまうことはありません。
眼瞼けいれんの治療とボトックス投与
ボトックス注射で眼瞼痙攣を治すには、左右の目の眼輪筋に沿って筋肉内注射を行うとのこと。
注射と聞くと痛くないのかと心配になるでしょうが、非常に細い注射針が使用されるので、そこまでの痛みは感じません。
ボトックス投与の効果は、投与から2~3日ほどしてから現れ、その後4ヵ月ほど続きますが、効果のピークはだいたい2週間~2ヵ月目あたりです。
ボトックスの効果が弱くなってくると、再び眼瞼痙攣の症状が少しずつ現れるようになり、だいたい3~6ヵ月ほど経ってから再度投与されることが多くなります。
ボトックス投与の効果と患者さん本人の満足度は非常に高く、眼瞼痙攣では約8割、片側顔面痙攣では約9割の患者さんに症状の改善が見られています。
ボトックス投与に副作用はある?
ボトックスの投与後、副作用が現れる患者さんもいます。
副作用の主な症状は、以下の通りです。
・目の周囲に皮下出血が現れる
・まぶたが閉じにくくなる
・目が乾く
・声がかすれる
・まぶたが下がる
・物が二重に見える
・ピントが合いにくい
・まぶたが引っ張られる
・まぶたが重い
・発疹
・涙が出る
・表情を上手く作れない
副作用と聞くと怖いですが、これらの副作用はどれも一時的なものに過ぎません。
初めてボトックスを投与したあとは副作用が出やすい傾向がありますが、2回目の投与からはあまり副作用が見られなくなるのが一般的です。
しかし、ボトックスを投与する前にきちんと説明を受け、よく理解した上で投与するかどうかを決めてください。
そして副作用が現れ、その症状が強い場合は早めに医師に相談してください。
ボトックス投与が受けられる病院
ボトックス投与が受けられる病院は限られています。
ボトックスとは、ボツリヌス菌から取った毒素のため、誰でも扱えるわけではありません。
治療には専門知識が絶対に必要なので、所定の講習を受講した医師だけがボトックス投与を行うことができるようになっています。
ボトックス投与は必ず安心できる病院で、専門家から受けるようにしてください。
眼瞼痙攣と間違えやすい病気
眼瞼痙攣はドライアイの症状によく似ていると先に説明しましたが、それ以外にも間違えられやすい病気がありますのでご紹介します。
眼瞼ミオキミア
左右どちらかの上まぶたや下まぶたの筋肉の一部が、ぴくぴくと痙攣するものです。
これは病気とは言えず、健康な人でも過労や睡眠不足などを感じるときに起こることがあります。
疲れが取れれば、通常では数日~数ヵ月で自然に治まります。
眼瞼失行症
眼瞼失行症とは、一度閉じたまぶたを開くときに困難に感じる病気です。
一度目を閉じてしまうと、なかなか目を開けることができなくなり、それが歩いているときなどに起こると、物や人にぶつかるリスクが高まり非常に危険です。
まぶたを指で軽く触れると、その刺激でまぶたが開く場合があるので、もしも突然目が開かなくなったら、焦らず落ち着いてまぶたに触れてみてください。
この、まぶたに触れることで目を開けることを「知覚トリック」と呼びます。
ドライアイ
先でも触れましたが、眼瞼痙攣の症状はドライアイの症状に非常に似ているため、医師でも間違えるケースがあり得るようです。
眼瞼痙攣を発症すると、まぶたの開け閉めが上手くできなくなることによって目が乾きがちになり、ドライアイを発症することが多いからという理由もあります。
しかし、ただのドライアイの場合は、人や物にぶつかったり、運転が怖くなるようなことはまずありませんので、日常生活に支障が出るようなケースはドライアイだけを発症しているわけではないと言えるでしょう。
重症筋無力症
重症筋無力症とは、神経から筋肉への情報伝達が阻害される病気です。
最初に上眼瞼挙筋が侵されることが多く、眼瞼下垂の症状が見られるようになります。
そして眼科を受診し、重症筋無力症と診断されます。
重症筋無力症は、重症化すると、食物を飲み込みにくくなったり、噛むことができない、会話がしにくい、歩行が難しくなるといった日常生活を送ることが出来ない状態に至ることがあります。
重症筋無力症の検査は、血液中の抗アセチルコリン受容体抗体を調査することで確認が可能ということです。
しかしながら、重症筋無力症かどうかを判別するには専門医でも難しいそうで、理由としては調査結果が眼瞼痙攣と似ている為に、見分けを付けるのが難しいからだそうです。
様々な病気と間違えやすい眼瞼痙攣
たとえ症状が似ていても、治療法は病気によってまったく異なるので、的確に見分けることが重要です。
そうでなければ、無意味な治療を施術する結果になるでしょう。
それは嫌ですよね。
眼瞼痙攣を患っているのに、誤ってドライアイと診断されていしまう事例は結構な数あるそうで、その結果を見ても専門の眼科医だったとしても正確に診断することは難易度が高いことが分かるかと思いいます。
最も多く間違えられるドライアイの場合は、まぶたが開けにくくなったり、リズムよくまばたきができなくなるという症状はありませんので、そのような症状で見分けることができます。
最後に
眼瞼痙攣自体は命に関わるような病気ではありませんが、放置すると目が開かなくなって歩行中や運転中に事故に巻き込まれ、自分が怪我をするのはもちろん、相手に怪我をさせてしまうことにもなりかねません。
またもしももっと重篤な病気が隠れていたら非常に危険です。
たかが眼瞼痙攣と軽く見るのではなく、必ず専門医に相談してください。