遺族年金とは、一家の大黒柱である被保険者が死亡した場合に、残された遺族の生活が困窮しないように支給される公的年金の1つです。突然、世帯主が亡くなった家庭は、今後の生活が目処が見えなくなり不安になることも多いでしょう。
そこをサポートしてくれるのが「遺族年金」です。頼もしい制度である一方で、遺族年金の制度は非常に複雑なため種類別に解説を行いたいと思います。
本体受け取りができる年金支給額の平均を知りたい場合は、「2017年最新|年金支給額の平均は国民年金5.5万円・厚生年金14.7万円」をご参照ください。
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遺族年金の種類と受給条件
遺族年金は「遺族基礎年金」、「遺族厚生年金」、「遺族共済年金」の3種類で構成されています。
平成27年10月に「遺族共済年金」は「遺族厚生年金」に一元化されたため、現在は、「遺族基礎年金」、「遺族厚生年金」の2種類が存在しており、平成27年9月末までに亡くなった被保険者がいる家庭は引き続き「遺族共済年金」を受け取っている状況です。この3種類が遺族年金の基本となります。
この他、上記3種類を受給できない方に向けた遺族給付制度として「寡婦年金」や「死亡一時金」が支給されるケースや忘れがちな遺族年金でもある労災保険の「遺族補償年金」が支給されるなど複雑な制度がありますので順に解説を行いたいと思います。
遺族年金の種類と対象者の一覧
| 死亡者 | 支給対象者 | 遺族年金の種類 |
| 自営業 | 18歳未満の子供がいる「妻」 | 遺族基礎年金 |
| 子供がいない「妻」 | 寡婦年金または死亡一時金 | |
| 会社員・公務員 | 18歳未満の子供がいる「妻」 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
| 子供がいない「40歳未満の妻」 | 遺族厚生年金 | |
| 子供がいない「40歳から65歳の妻」 | 遺族厚生年金+中高年齢寡婦を加算 |
遺族基礎年金とは?受給額と受給期間(平成29年8月最新)
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格を満たしている人が亡くなった時に支給されるもので、自営業の方も会社員の方も支給される遺族年金の1つです。
遺族基礎年金の原理原則は18歳未満の子供を支えることを目的としており、子供がいない世帯には支給されないという点に注意が必要です。それでは、いつまでいくら遺族基礎年金がもらえるのか受給条件を確認してみましょう。
国民年金が未納の場合、遺族基礎年金が受給できません。詳しくは、「年金(国民年金)未納は危険|延滞金・強制徴収などデメリットを解説」をご参照ください。
| 遺族基礎年金の条件 | 詳細 |
| 給付条件 |
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| 給付対象 |
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| 給付額 |
779,300円+子の加算によって給付額が決まる
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| 支給期間 |
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遺族厚生年金とは?受給額と受給期間(平成29年8月最新)
遺族厚生年金とは、厚生年金加入者が亡くなった場合に遺族に対し支給される公的年金ですが、こちらは18歳未満の子供がいない方でも支給対象となるのが最大の特徴です。
主に会社員の方が対象となる年金で、現在は遺族共済年金と一元化されていますので公務員の方も対象になっています。そのため、利用者が多い遺族年金とも言えるでしょう。
それでは、いつまでいくらの遺族厚生年金がもらえるのか受給条件を確認してみましょう。
| 遺族厚生年金の条件 | 詳細 |
| 給付条件 |
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| 給付対象 |
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| 給付額 | 夫が本来受け取る予定だった厚生年金の3/4 |
| 支給期間 |
妻の場合:一生涯支給される
子供・孫の場合:18歳の年度末まで(障害等級1級または2級の場合は20歳まで)
夫・父母・祖父母の場合:60歳以降から一生涯
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遺族厚生年金は、妻の年齢が40歳から65歳までの間、年額584,500円を加算して支給されます。これを「中高齢寡婦加算」と呼びますので支給条件を記載をさせていただきます。
| 給付条件 |
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遺族共済年金とは?受給額と受給期間(平成29年8月最新)
遺族共済年金とは、公務員の方を対象にした遺族年金制度です。
先ほどお伝えした通り、現在は遺族厚生年金に一元化されていますので、新規での支給は行なっておりません。現在、遺族共済年金を受け取っている方は平成27年9月30日までに主たる収入を得ていた遺族の方が引き続き受給をしている状況です。
そのため、平成27年10月1日以降は遺族厚生年金と同じ扱いになりますので支給条件いついては遺族厚生年金の箇所をご確認ください。
遺族年金制度における遺族給付制度の種類と受給条件
遺族給付制度とは、保険料の支払いを行なっていたものの遺族年金の支給条件に満たないが故に遺族が年金の受け取りが出来ない場合の救済策として「寡婦年金」と「死亡一時金」の2種類が用意されています。
それぞれ、どちらかしか受け取ることが出来ないので受給条件を確認してみましょう。
寡婦年金(かふねんきん)とは?受給額と受給期間
寡婦年金とは、遺族基礎年金も遺族厚生年金も受給資格の無い方を救済する仕組みとなっています。
夫が自営業で国民年金のみの加入であり、18歳未満の子供がいない場合に支給される年金となっています。自営業を営みながらも国民年金もしっかりと納めていた夫の年金が掛け捨てにならないように配慮された制度となっています。
それでは、いつまでいくらの寡婦年金がもらえるのか受給条件を確認してみましょう。
| 寡婦年金の条件 | 詳細 |
| 給付条件 |
※死亡した夫が、障害基礎年金の受給権者や老齢基礎年金を受けたことがある場合は対象外 |
| 給付対象 | 妻 |
| 給付額 | 夫が本来受け取る予定だった老齢基礎年金の3/4 |
| 支給期間 | 妻の年齢が60歳から65歳までの間 |
死亡一時金とは?受給額と受給期間
死亡一時金とは、寡婦年金とは異なり1回だけ支給される一時金になっており、25年間保険料を納め続けた一方で一度も受給することなく亡くなってしまった場合に活用できる制度です。
それでは、いくらの死亡一時金がもらえるのか受給条件を確認してみましょう。
| 死亡一時金の条件 | 詳細 |
| 給付条件 |
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| 給付対象 | 妻→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順で優先順位が高い順で支給される |
| 給付額 | 保険料を納めた期間よって変動し12万円から36万円が基準。36月以上納めた場合は1月につき8500円が加算 |
| 支給期間 | 1回のみ |
労災保険の遺族補償年金とは?
遺族補償年金とは、労働者災害補償保険(労災)の遺族補償年金です。
勤務中の事故や不慮な出来事など仕事が原因で死に至った場合に受け取ることが可能になる制度です。
加えて、社会復帰などを促進させるため「遺族特別支給金」、「遺族特別年金」、「遺族特別一時金」のいずれかが支給される仕組みです。
遺族補償年金の受給額
| 遺族数 | 遺族補償年金 | 遺族特別支給金 | 遺族特別年金 |
| 1人 |
給付基礎日額の153日分 遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分 |
300万円 |
給付基礎日額の153日分 遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分 |
| 2人 | 給付基礎日額の201日分 | 算定基礎日額の201日分 | |
| 3人 | 給付基礎日額の223日分 | 算定基礎日額の223日分 | |
| 4人以上 | 給付基礎日額の245日分 | 算定基礎日額の245日分 |
遺族特別支給金とは
遺族特別支給金とは、業務上や通勤時の災害により労働者が無くなった場合に、受給対象者に一律300万円支給されます。受給権者が2人以上あるときは、受給権者の人数で按分した金額が支給額となります。
遺族特別年金とは
遺族特別年金とは、遺族補償年金の受給権者に対して支給されます。遺族補償年金の受給権者が2人以上あるときは、受給権者の人数で按分した金額が支給額となります。
遺族特別一時金とは
遺族特別一時金とは、遺族補償一時金または遺族一時金の受給権者に対して支給されますが、労働者の死亡時点で遺族補償年金又は遺族年金の受給資格者がないときに算定基礎日額の1000日分を支給する制度です。
まとめ
遺族年金の種類および受給条件を解説しました。
主たる収入である世帯主が亡くなった場合に生計を維持させる非常に頼もしい制度ですが、制度自体が非常に複雑であるために理解することが大変です。
まずは、基本となる「遺族基礎年金」、「遺族厚生年金」の受給条件を把握するところからはじめてみましょう。




