気象庁によりますと、台風10号は、去年8月21日に日本の南の海上で発生したあと、1週間ほど南海上で回転するように動きました。その後、29日の朝以降、進路を北寄りに変え、30日の午後5時半ごろ、岩手県大船渡市付近に上陸しました。
台風が東北地方の太平洋側に上陸したのは、気象庁が昭和26年に統計を取り始めてから初めてで、その後東北北部を縦断し、北海道の西の日本海で温帯低気圧に変わりました。
気象庁によりますと、この台風で東北と北海道などで記録的な大雨となり、岩手県では岩泉町を流れる小本川が氾濫して川沿いにあったグループホームが浸水し、逃げ遅れたお年寄り9人が死亡したほか、北海道の南富良野町を流れる空知川が氾濫して広い範囲で住宅が浸水するなど川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、死者・行方不明者は岩手県と北海道で合わせて27人に上りました。
この台風が残した教訓を受けて、国や自治体などの防災対応が大きく変わりました。
まず、避難に関する情報の名称の変更です。岩手県岩泉町では、高齢者などに避難を呼びかける「避難準備情報」を町が発表していましたが情報の意味が正しく伝わらず、グループホームでお年寄りが亡くなるなどの大きな被害につながりました。これを受けて国は、高齢者や障害者などが避難を開始するタイミングであることを強調するため、去年12月に「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更しました。
これに合わせて、直ちに避難するよう自治体が指示する「避難指示」も「避難指示(緊急)」に変わりました。
さらに、ことし6月、改正水防法などが施行され、洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある全国の高齢者施設や障害者施設などに対し、避難計画の作成や定期的な避難訓練の実施を義務づけました。
また、気象庁も、川の洪水や氾濫の危険性が高い地域をホームページで細かく色分けして示す、新たな情報の発表を先月から始めました。
全国のおよそ2万の河川が対象になり、川の流域の1キロ四方ごとに、危険性の高いほうから順に、紫、薄紫、赤、それに黄色で表示され、このうち紫は、洪水や氾濫などの重大な災害がすでに発生していてもおかしくない状況を示しています。
台風10号の教訓 高齢者などの施設 避難計画8%余にとどまる
k10011118271_201708300514_201708300515.mp4
台風などの大雨の際に、入所するお年寄りなどを素早く避難させるための計画を作成した施設の数は、ことし3月末の時点で全国で8%余りにとどまっていたことが、国土交通省のまとめでわかりました。この避難計画の作成は、去年の台風10号の被害を教訓にことし6月に義務づけられたことから、国は今後、施設への支援を強め、計画作りを加速させる方針です。
国土交通省は、グループホームや特別養護老人ホームといったお年寄りや障害者などが入所する全国の施設のうち、川沿いや山沿いなど洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある施設の避難計画の作成状況を、各都道府県を通じて3年前から毎年調べています。
29日に公表された最新のまとめによりますと、ことし3月末の時点で対象となるおよそ3万6800の施設のうち、避難計画を作成していたのは3087の施設で、率にして8.4%にとどまっていたことがわかりました。これは前の年の同じ時期の2.3%に比べて6ポイントほど増えていますが、まだ1割に満たない状況です。
お年寄りなどの入所施設の避難計画をめぐっては、去年8月の台風10号で岩手県岩泉町を流れる川が氾濫し、グループホームに入所するお年寄り9人が亡くなったことを教訓に、ことし6月に改正水防法などが施行され、洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある施設について作成が義務づけられました。
これを受けて国は、平成33年度末までに法律の対象となるすべての施設で計画を作成することを目指していて、すでに示している手引きやひな形を、さらに充実させるなど施設への支援を強め、計画作りを加速させる方針です。
29日に公表された最新のまとめによりますと、ことし3月末の時点で対象となるおよそ3万6800の施設のうち、避難計画を作成していたのは3087の施設で、率にして8.4%にとどまっていたことがわかりました。これは前の年の同じ時期の2.3%に比べて6ポイントほど増えていますが、まだ1割に満たない状況です。
お年寄りなどの入所施設の避難計画をめぐっては、去年8月の台風10号で岩手県岩泉町を流れる川が氾濫し、グループホームに入所するお年寄り9人が亡くなったことを教訓に、ことし6月に改正水防法などが施行され、洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある施設について作成が義務づけられました。
これを受けて国は、平成33年度末までに法律の対象となるすべての施設で計画を作成することを目指していて、すでに示している手引きやひな形を、さらに充実させるなど施設への支援を強め、計画作りを加速させる方針です。
台風10号で改善された防災対策
気象庁によりますと、台風10号は、去年8月21日に日本の南の海上で発生したあと、1週間ほど南海上で回転するように動きました。その後、29日の朝以降、進路を北寄りに変え、30日の午後5時半ごろ、岩手県大船渡市付近に上陸しました。
台風が東北地方の太平洋側に上陸したのは、気象庁が昭和26年に統計を取り始めてから初めてで、その後東北北部を縦断し、北海道の西の日本海で温帯低気圧に変わりました。
気象庁によりますと、この台風で東北と北海道などで記録的な大雨となり、岩手県では岩泉町を流れる小本川が氾濫して川沿いにあったグループホームが浸水し、逃げ遅れたお年寄り9人が死亡したほか、北海道の南富良野町を流れる空知川が氾濫して広い範囲で住宅が浸水するなど川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、死者・行方不明者は岩手県と北海道で合わせて27人に上りました。
この台風が残した教訓を受けて、国や自治体などの防災対応が大きく変わりました。
まず、避難に関する情報の名称の変更です。岩手県岩泉町では、高齢者などに避難を呼びかける「避難準備情報」を町が発表していましたが情報の意味が正しく伝わらず、グループホームでお年寄りが亡くなるなどの大きな被害につながりました。これを受けて国は、高齢者や障害者などが避難を開始するタイミングであることを強調するため、去年12月に「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更しました。
これに合わせて、直ちに避難するよう自治体が指示する「避難指示」も「避難指示(緊急)」に変わりました。
さらに、ことし6月、改正水防法などが施行され、洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある全国の高齢者施設や障害者施設などに対し、避難計画の作成や定期的な避難訓練の実施を義務づけました。
また、気象庁も、川の洪水や氾濫の危険性が高い地域をホームページで細かく色分けして示す、新たな情報の発表を先月から始めました。
全国のおよそ2万の河川が対象になり、川の流域の1キロ四方ごとに、危険性の高いほうから順に、紫、薄紫、赤、それに黄色で表示され、このうち紫は、洪水や氾濫などの重大な災害がすでに発生していてもおかしくない状況を示しています。
台風が東北地方の太平洋側に上陸したのは、気象庁が昭和26年に統計を取り始めてから初めてで、その後東北北部を縦断し、北海道の西の日本海で温帯低気圧に変わりました。
気象庁によりますと、この台風で東北と北海道などで記録的な大雨となり、岩手県では岩泉町を流れる小本川が氾濫して川沿いにあったグループホームが浸水し、逃げ遅れたお年寄り9人が死亡したほか、北海道の南富良野町を流れる空知川が氾濫して広い範囲で住宅が浸水するなど川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、死者・行方不明者は岩手県と北海道で合わせて27人に上りました。
この台風が残した教訓を受けて、国や自治体などの防災対応が大きく変わりました。
まず、避難に関する情報の名称の変更です。岩手県岩泉町では、高齢者などに避難を呼びかける「避難準備情報」を町が発表していましたが情報の意味が正しく伝わらず、グループホームでお年寄りが亡くなるなどの大きな被害につながりました。これを受けて国は、高齢者や障害者などが避難を開始するタイミングであることを強調するため、去年12月に「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更しました。
これに合わせて、直ちに避難するよう自治体が指示する「避難指示」も「避難指示(緊急)」に変わりました。
さらに、ことし6月、改正水防法などが施行され、洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある全国の高齢者施設や障害者施設などに対し、避難計画の作成や定期的な避難訓練の実施を義務づけました。
また、気象庁も、川の洪水や氾濫の危険性が高い地域をホームページで細かく色分けして示す、新たな情報の発表を先月から始めました。
全国のおよそ2万の河川が対象になり、川の流域の1キロ四方ごとに、危険性の高いほうから順に、紫、薄紫、赤、それに黄色で表示され、このうち紫は、洪水や氾濫などの重大な災害がすでに発生していてもおかしくない状況を示しています。
地域の助けで素早い避難を
この避難計画を作成するうえで、施設側からは「作成のしかたがわからない」という声や、「職員の数が少なく、災害時に対応できない」などという声が国や自治体に寄せられています。
国などによりますと、このうち特に課題になるのが、施設の職員の数が少なく、入所者を素早く避難させるのが難しいという点だということです。
この課題に対し、地域の助けを借りてお年寄りを素早く避難させようと取り組みを始めた施設が福島県にあります。福島県古殿町にある特別養護老人ホーム「ふるどの荘」には、60人のお年寄りが入所しています。すぐ近くを川が流れていますが、車いすや寝たきりで素早い避難が難しい人が多いうえ、夜間は職員が4人と少なくなるため、大雨の際に手が足りず、十分な対応が取れなくなるおそれがあります。
去年の台風10号で同じように川のすぐ近くにある岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人のお年寄りが亡くなったことを受けて、「ふるどの荘」が考えたのは、入所者を避難させる際に地元の消防団に応援を要請することでした。
ことし4月、水害時の避難の際に消防団と連携することを盛り込んだ避難計画を新たに作成し、今月27日、この計画に基づいて消防団と連携した避難訓練を初めて行いました。訓練は、川の水位が上がり始め、今後、さらに大雨が降ると氾濫の危険性が高まると予想される状況を想定して行われ、職員が電話で連絡すると消防団員が車で駆けつけました。そして、職員と消防団員が2人一組になってお年寄りに肩を貸したり、担架に乗せたりして川より10メートル以上高い施設の2階の部屋に避難させていました。
「ふるどの荘」の掛田弥生施設長は「岩泉町のグループホームの被害を見て、非常に危機感を覚えた。要介護4や5の方が入居しているので、職員だけでは十分な対応ができないと思う。このような中で頼りになるのが地域の消防団の方々で、今後も訓練を繰り返し行い、いざというときに生かせるようにしたい」と話していました。
また、古殿町消防団の水野久団長は「お年寄りをどう搬送するかは頭ではわかっていても実際には一人一人異なることを訓練で学ぶことができた。災害時にはまずこうした施設の入所者を優先して避難させたうえで、その後地域に戻り対応するという形になるのかなと思っている」と話していました。
国などによりますと、このうち特に課題になるのが、施設の職員の数が少なく、入所者を素早く避難させるのが難しいという点だということです。
この課題に対し、地域の助けを借りてお年寄りを素早く避難させようと取り組みを始めた施設が福島県にあります。福島県古殿町にある特別養護老人ホーム「ふるどの荘」には、60人のお年寄りが入所しています。すぐ近くを川が流れていますが、車いすや寝たきりで素早い避難が難しい人が多いうえ、夜間は職員が4人と少なくなるため、大雨の際に手が足りず、十分な対応が取れなくなるおそれがあります。
去年の台風10号で同じように川のすぐ近くにある岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人のお年寄りが亡くなったことを受けて、「ふるどの荘」が考えたのは、入所者を避難させる際に地元の消防団に応援を要請することでした。
ことし4月、水害時の避難の際に消防団と連携することを盛り込んだ避難計画を新たに作成し、今月27日、この計画に基づいて消防団と連携した避難訓練を初めて行いました。訓練は、川の水位が上がり始め、今後、さらに大雨が降ると氾濫の危険性が高まると予想される状況を想定して行われ、職員が電話で連絡すると消防団員が車で駆けつけました。そして、職員と消防団員が2人一組になってお年寄りに肩を貸したり、担架に乗せたりして川より10メートル以上高い施設の2階の部屋に避難させていました。
「ふるどの荘」の掛田弥生施設長は「岩泉町のグループホームの被害を見て、非常に危機感を覚えた。要介護4や5の方が入居しているので、職員だけでは十分な対応ができないと思う。このような中で頼りになるのが地域の消防団の方々で、今後も訓練を繰り返し行い、いざというときに生かせるようにしたい」と話していました。
また、古殿町消防団の水野久団長は「お年寄りをどう搬送するかは頭ではわかっていても実際には一人一人異なることを訓練で学ぶことができた。災害時にはまずこうした施設の入所者を優先して避難させたうえで、その後地域に戻り対応するという形になるのかなと思っている」と話していました。
専門家「全国共通の課題」
お年寄りの避難に詳しい専門家は、グループホームなどの高齢者の施設は川沿いや山沿いなど景色がよい反面、災害の危険性が高い場所に作られることが多く、災害時にどう素早く避難させるかは全国共通の課題だと指摘しています。
お年寄りなどの避難に詳しい岩手県立大学社会福祉学部の狩野徹教授によりますと、グループホームや特別養護老人ホームなどのお年寄りが入所する福祉施設は、景色がよく一定の広さの土地が確保しやすい山沿いや川沿いに設置されることが多いということです。
このため、去年8月の台風10号でお年寄り9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者グループホームのように、すぐそばに川や斜面があって水害や土砂災害の危険性が高い施設が多く、大雨の際に同じような災害が起きてもおかしくないと指摘しています。
そのうえで、多くの施設では夜間に職員の数が少なくなるなど緊急時に職員だけでは十分な対応ができないことが多いとして、日ごろから地元の消防団や大学、高校などと連携し、若い人が手助けするなど地域全体でお年寄りの避難を支援する仕組み作りを進める必要があるとしています。
狩野教授は「施設の職員の数は避難を基準に決められているわけではないため、災害時にはどうしても職員の数が足りず、特に夜間の避難は厳しい現状にある。災害時は自分で自分の身を守るということが原則だが、自分では身を守れない人がいるということをしっかりと認識し、地域全体で支えていくことが必要だ」と話していました。
お年寄りなどの避難に詳しい岩手県立大学社会福祉学部の狩野徹教授によりますと、グループホームや特別養護老人ホームなどのお年寄りが入所する福祉施設は、景色がよく一定の広さの土地が確保しやすい山沿いや川沿いに設置されることが多いということです。
このため、去年8月の台風10号でお年寄り9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者グループホームのように、すぐそばに川や斜面があって水害や土砂災害の危険性が高い施設が多く、大雨の際に同じような災害が起きてもおかしくないと指摘しています。
そのうえで、多くの施設では夜間に職員の数が少なくなるなど緊急時に職員だけでは十分な対応ができないことが多いとして、日ごろから地元の消防団や大学、高校などと連携し、若い人が手助けするなど地域全体でお年寄りの避難を支援する仕組み作りを進める必要があるとしています。
狩野教授は「施設の職員の数は避難を基準に決められているわけではないため、災害時にはどうしても職員の数が足りず、特に夜間の避難は厳しい現状にある。災害時は自分で自分の身を守るということが原則だが、自分では身を守れない人がいるということをしっかりと認識し、地域全体で支えていくことが必要だ」と話していました。
内閣府 事例集をHPで公開
この避難計画の作成について、内閣府などは、実際に担当者を施設に派遣し、計画作りを一緒になって進めたということで、そのポイントや手順などをまとめた事例集をホームページで公開しています。
内閣府などは、ことし4月から岩手県と岡山県の施設に担当者を派遣し、避難場所や避難経路の選定や避難に要する時間、それに避難を始めるタイミングなどについて、一緒に計画作りを進めました。
このうち、近くに川が流れ、大雨で浸水する危険性が高い岩手県久慈市のグループホームでは、平屋建てのため建物内の避難ができないほか、夜間、指定された避難場所に入所者が移動するのに50分程度かかるため、「避難勧告」や「避難指示(緊急)」が発表されるのを待つのではなく、「避難準備・高齢者等避難開始」が出たら、すみやかに避難を始めるなどとしています。
また、岡山県備前市の2階建ての特別養護老人ホームは土砂災害警戒区域の中にありますが、60人の入所者全員を指定された避難場所へ移動させるのにはかなりの時間がかかるうえ、途中の道路も土砂災害の危険性があるため、むやみに動かず、施設の2階のがけや斜面から離れた場所などに避難することを決めたということです。
事例集は、内閣府のホームページで確認することができます。
内閣府などは、ことし4月から岩手県と岡山県の施設に担当者を派遣し、避難場所や避難経路の選定や避難に要する時間、それに避難を始めるタイミングなどについて、一緒に計画作りを進めました。
このうち、近くに川が流れ、大雨で浸水する危険性が高い岩手県久慈市のグループホームでは、平屋建てのため建物内の避難ができないほか、夜間、指定された避難場所に入所者が移動するのに50分程度かかるため、「避難勧告」や「避難指示(緊急)」が発表されるのを待つのではなく、「避難準備・高齢者等避難開始」が出たら、すみやかに避難を始めるなどとしています。
また、岡山県備前市の2階建ての特別養護老人ホームは土砂災害警戒区域の中にありますが、60人の入所者全員を指定された避難場所へ移動させるのにはかなりの時間がかかるうえ、途中の道路も土砂災害の危険性があるため、むやみに動かず、施設の2階のがけや斜面から離れた場所などに避難することを決めたということです。
事例集は、内閣府のホームページで確認することができます。
台風10号の教訓 高齢者などの施設 避難計画8%余にとどまる
台風などの大雨の際に、入所するお年寄りなどを素早く避難させるための計画を作成した施設の数は、ことし3月末の時点で全国で8%余りにとどまっていたことが、国土交通省のまとめでわかりました。この避難計画の作成は、去年の台風10号の被害を教訓にことし6月に義務づけられたことから、国は今後、施設への支援を強め、計画作りを加速させる方針です。
国土交通省は、グループホームや特別養護老人ホームといったお年寄りや障害者などが入所する全国の施設のうち、川沿いや山沿いなど洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある施設の避難計画の作成状況を、各都道府県を通じて3年前から毎年調べています。
29日に公表された最新のまとめによりますと、ことし3月末の時点で対象となるおよそ3万6800の施設のうち、避難計画を作成していたのは3087の施設で、率にして8.4%にとどまっていたことがわかりました。これは前の年の同じ時期の2.3%に比べて6ポイントほど増えていますが、まだ1割に満たない状況です。
お年寄りなどの入所施設の避難計画をめぐっては、去年8月の台風10号で岩手県岩泉町を流れる川が氾濫し、グループホームに入所するお年寄り9人が亡くなったことを教訓に、ことし6月に改正水防法などが施行され、洪水や土砂災害の危険性の高い場所にある施設について作成が義務づけられました。
これを受けて国は、平成33年度末までに法律の対象となるすべての施設で計画を作成することを目指していて、すでに示している手引きやひな形を、さらに充実させるなど施設への支援を強め、計画作りを加速させる方針です。
台風10号で改善された防災対策
地域の助けで素早い避難を
この避難計画を作成するうえで、施設側からは「作成のしかたがわからない」という声や、「職員の数が少なく、災害時に対応できない」などという声が国や自治体に寄せられています。
国などによりますと、このうち特に課題になるのが、施設の職員の数が少なく、入所者を素早く避難させるのが難しいという点だということです。
この課題に対し、地域の助けを借りてお年寄りを素早く避難させようと取り組みを始めた施設が福島県にあります。福島県古殿町にある特別養護老人ホーム「ふるどの荘」には、60人のお年寄りが入所しています。すぐ近くを川が流れていますが、車いすや寝たきりで素早い避難が難しい人が多いうえ、夜間は職員が4人と少なくなるため、大雨の際に手が足りず、十分な対応が取れなくなるおそれがあります。
去年の台風10号で同じように川のすぐ近くにある岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人のお年寄りが亡くなったことを受けて、「ふるどの荘」が考えたのは、入所者を避難させる際に地元の消防団に応援を要請することでした。
ことし4月、水害時の避難の際に消防団と連携することを盛り込んだ避難計画を新たに作成し、今月27日、この計画に基づいて消防団と連携した避難訓練を初めて行いました。訓練は、川の水位が上がり始め、今後、さらに大雨が降ると氾濫の危険性が高まると予想される状況を想定して行われ、職員が電話で連絡すると消防団員が車で駆けつけました。そして、職員と消防団員が2人一組になってお年寄りに肩を貸したり、担架に乗せたりして川より10メートル以上高い施設の2階の部屋に避難させていました。
「ふるどの荘」の掛田弥生施設長は「岩泉町のグループホームの被害を見て、非常に危機感を覚えた。要介護4や5の方が入居しているので、職員だけでは十分な対応ができないと思う。このような中で頼りになるのが地域の消防団の方々で、今後も訓練を繰り返し行い、いざというときに生かせるようにしたい」と話していました。
また、古殿町消防団の水野久団長は「お年寄りをどう搬送するかは頭ではわかっていても実際には一人一人異なることを訓練で学ぶことができた。災害時にはまずこうした施設の入所者を優先して避難させたうえで、その後地域に戻り対応するという形になるのかなと思っている」と話していました。
国などによりますと、このうち特に課題になるのが、施設の職員の数が少なく、入所者を素早く避難させるのが難しいという点だということです。
この課題に対し、地域の助けを借りてお年寄りを素早く避難させようと取り組みを始めた施設が福島県にあります。福島県古殿町にある特別養護老人ホーム「ふるどの荘」には、60人のお年寄りが入所しています。すぐ近くを川が流れていますが、車いすや寝たきりで素早い避難が難しい人が多いうえ、夜間は職員が4人と少なくなるため、大雨の際に手が足りず、十分な対応が取れなくなるおそれがあります。
去年の台風10号で同じように川のすぐ近くにある岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人のお年寄りが亡くなったことを受けて、「ふるどの荘」が考えたのは、入所者を避難させる際に地元の消防団に応援を要請することでした。
ことし4月、水害時の避難の際に消防団と連携することを盛り込んだ避難計画を新たに作成し、今月27日、この計画に基づいて消防団と連携した避難訓練を初めて行いました。訓練は、川の水位が上がり始め、今後、さらに大雨が降ると氾濫の危険性が高まると予想される状況を想定して行われ、職員が電話で連絡すると消防団員が車で駆けつけました。そして、職員と消防団員が2人一組になってお年寄りに肩を貸したり、担架に乗せたりして川より10メートル以上高い施設の2階の部屋に避難させていました。
「ふるどの荘」の掛田弥生施設長は「岩泉町のグループホームの被害を見て、非常に危機感を覚えた。要介護4や5の方が入居しているので、職員だけでは十分な対応ができないと思う。このような中で頼りになるのが地域の消防団の方々で、今後も訓練を繰り返し行い、いざというときに生かせるようにしたい」と話していました。
また、古殿町消防団の水野久団長は「お年寄りをどう搬送するかは頭ではわかっていても実際には一人一人異なることを訓練で学ぶことができた。災害時にはまずこうした施設の入所者を優先して避難させたうえで、その後地域に戻り対応するという形になるのかなと思っている」と話していました。
専門家「全国共通の課題」
お年寄りの避難に詳しい専門家は、グループホームなどの高齢者の施設は川沿いや山沿いなど景色がよい反面、災害の危険性が高い場所に作られることが多く、災害時にどう素早く避難させるかは全国共通の課題だと指摘しています。
お年寄りなどの避難に詳しい岩手県立大学社会福祉学部の狩野徹教授によりますと、グループホームや特別養護老人ホームなどのお年寄りが入所する福祉施設は、景色がよく一定の広さの土地が確保しやすい山沿いや川沿いに設置されることが多いということです。
このため、去年8月の台風10号でお年寄り9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者グループホームのように、すぐそばに川や斜面があって水害や土砂災害の危険性が高い施設が多く、大雨の際に同じような災害が起きてもおかしくないと指摘しています。
そのうえで、多くの施設では夜間に職員の数が少なくなるなど緊急時に職員だけでは十分な対応ができないことが多いとして、日ごろから地元の消防団や大学、高校などと連携し、若い人が手助けするなど地域全体でお年寄りの避難を支援する仕組み作りを進める必要があるとしています。
狩野教授は「施設の職員の数は避難を基準に決められているわけではないため、災害時にはどうしても職員の数が足りず、特に夜間の避難は厳しい現状にある。災害時は自分で自分の身を守るということが原則だが、自分では身を守れない人がいるということをしっかりと認識し、地域全体で支えていくことが必要だ」と話していました。
お年寄りなどの避難に詳しい岩手県立大学社会福祉学部の狩野徹教授によりますと、グループホームや特別養護老人ホームなどのお年寄りが入所する福祉施設は、景色がよく一定の広さの土地が確保しやすい山沿いや川沿いに設置されることが多いということです。
このため、去年8月の台風10号でお年寄り9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者グループホームのように、すぐそばに川や斜面があって水害や土砂災害の危険性が高い施設が多く、大雨の際に同じような災害が起きてもおかしくないと指摘しています。
そのうえで、多くの施設では夜間に職員の数が少なくなるなど緊急時に職員だけでは十分な対応ができないことが多いとして、日ごろから地元の消防団や大学、高校などと連携し、若い人が手助けするなど地域全体でお年寄りの避難を支援する仕組み作りを進める必要があるとしています。
狩野教授は「施設の職員の数は避難を基準に決められているわけではないため、災害時にはどうしても職員の数が足りず、特に夜間の避難は厳しい現状にある。災害時は自分で自分の身を守るということが原則だが、自分では身を守れない人がいるということをしっかりと認識し、地域全体で支えていくことが必要だ」と話していました。
内閣府 事例集をHPで公開
この避難計画の作成について、内閣府などは、実際に担当者を施設に派遣し、計画作りを一緒になって進めたということで、そのポイントや手順などをまとめた事例集をホームページで公開しています。
内閣府などは、ことし4月から岩手県と岡山県の施設に担当者を派遣し、避難場所や避難経路の選定や避難に要する時間、それに避難を始めるタイミングなどについて、一緒に計画作りを進めました。
このうち、近くに川が流れ、大雨で浸水する危険性が高い岩手県久慈市のグループホームでは、平屋建てのため建物内の避難ができないほか、夜間、指定された避難場所に入所者が移動するのに50分程度かかるため、「避難勧告」や「避難指示(緊急)」が発表されるのを待つのではなく、「避難準備・高齢者等避難開始」が出たら、すみやかに避難を始めるなどとしています。
また、岡山県備前市の2階建ての特別養護老人ホームは土砂災害警戒区域の中にありますが、60人の入所者全員を指定された避難場所へ移動させるのにはかなりの時間がかかるうえ、途中の道路も土砂災害の危険性があるため、むやみに動かず、施設の2階のがけや斜面から離れた場所などに避難することを決めたということです。
事例集は、内閣府のホームページで確認することができます。
内閣府などは、ことし4月から岩手県と岡山県の施設に担当者を派遣し、避難場所や避難経路の選定や避難に要する時間、それに避難を始めるタイミングなどについて、一緒に計画作りを進めました。
このうち、近くに川が流れ、大雨で浸水する危険性が高い岩手県久慈市のグループホームでは、平屋建てのため建物内の避難ができないほか、夜間、指定された避難場所に入所者が移動するのに50分程度かかるため、「避難勧告」や「避難指示(緊急)」が発表されるのを待つのではなく、「避難準備・高齢者等避難開始」が出たら、すみやかに避難を始めるなどとしています。
また、岡山県備前市の2階建ての特別養護老人ホームは土砂災害警戒区域の中にありますが、60人の入所者全員を指定された避難場所へ移動させるのにはかなりの時間がかかるうえ、途中の道路も土砂災害の危険性があるため、むやみに動かず、施設の2階のがけや斜面から離れた場所などに避難することを決めたということです。
事例集は、内閣府のホームページで確認することができます。