災害時の仮設住宅 プレハブだけでなく恒久住宅も検討を

災害時の仮設住宅 プレハブだけでなく恒久住宅も検討を
南海トラフ巨大地震など大規模な災害が起きた際の仮設住宅の建設について、国の検討会は避難生活が長期にわたることを見越し、従来のプレハブ住宅だけでなく恒久的に使える住宅の建設など幅広い選択肢を検討すべきとする新たな提言をまとめました。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震クラスの大規模災害が起きた際に被災者の住まいをどう確保するかについて、有識者による国の検討会は去年11月から議論を進め、29日提言を公表しました。

この中で、大規模災害では入居期間が原則2年とされる仮設住宅での生活が長期化することが想定されるとして、プレハブだけでなく建築基準を満たした恒久的な住宅の建設も選択肢の1つとして検討すべきだとしています。

東日本大震災では、災害公営住宅の建設の遅れなどによって発生から6年4か月が過ぎた先月末の時点で、2万1000人以上が広さや居住性の面で劣るプレハブ仮設住宅などでの生活を余儀なくされていて、こうした教訓を踏まえた内容となっています。

一方で、地方自治体は住宅の供給を迅速に行うため、平常時から用地の選定や業界団体との協定といった準備を進める必要があるとしてます。

また、必要とされる仮設住宅がいずれも最大で南海トラフの巨大地震では東日本大震災の17倍にあたるおよそ205万戸、首都直下地震では8倍にあたるおよそ94万戸と推計され、建設の用地や人手の確保が難しくなることも予想されています。

このため提言では「賃貸住宅や空き家などを今まで以上に積極的に活用するなど、多様な選択肢を用意し、復旧から復興まで切れ目なく支援すべきだ」としています。

提言について小此木防災担当大臣は会見で「関係する省庁や自治体と連携し、できるところから対応したい。被災者の住まいの多様な選択肢については、今後1、2年かけて検討していく必要がある」と述べました。

座長「多様な選択肢が不可欠」

検討会の座長を務めた防災科学技術研究所の林春男理事長は「南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような大規模な災害が発生した場合、非常に多くの人の住まいが必要になるため、プレハブの仮設住宅だけや民間の賃貸住宅の借り上げだけといった単純な解決策ではなく、すべての選択肢をうまく組み合わせることが不可欠だ」と話しています。

そのうえで、恒久的に使える仮設住宅の建設について「復興までの長い時間を考えるとあまりむだが出ないような住まいのあり方を当初から考えておく必要がある」と指摘しています。

東日本大震災 6年を過ぎても2万人が生活

仮設住宅は災害救助法などに基づき、できるだけ早く供給することや入居期間が原則2年とされ、これまで建設に時間がかからないプレハブ住宅が多くを占めていました。

しかし、東日本大震災では発生から6年過ぎても2万1000人以上がプレハブなどの仮設住宅で不自由な暮らしを余儀なくされていて、狭さや寒さ、カビの発生などに加え、耐久性の低い「木のくい」で基礎が作られているため、次第に腐食して補修にかかる費用も問題になっています。

こうしたことを教訓に、去年4月の熊本地震では基礎に耐久性の高いコンクリートを使った木造の仮設住宅が一部で建設されました。

20年以上住み続けられるため「災害公営住宅」に移行することも可能で、長期的な避難生活を見据えた仮設住宅として全国から注目を集めましたが、地震活動が活発だったことを理由に特例で認められたケースでした。

一方で、恒久的に使える木造の仮設住宅はプレハブに比べて工事期間が1週間から2週間ほど長くかかるほか、大量の木材や建設作業員の確保が難しいという課題もあります。

今回の提言でも、都道府県が業界団体などとの協定締結や、地域の事情に応じた住宅の仕様の検討などを平常時から進めておくべきとしています。

住民「生活に配慮した住宅を」

東日本大震災で借りていた家が全壊し石巻市の仮設住宅で暮らしている丹野美代子さん(77)は、心臓などに持病があるため病院の近くの災害公営住宅に入居を申し込んできましたがこれまでに3回外れ現在の場所での生活が6年余りとなっています。

仮設住宅の部屋はおよそ5畳で、介護用のベットが半分を占め収納スペースもほとんどないため窮屈だったほか、洗面所と台所の間の段差で転ぶこともあり不便を感じてきました。

また、プレハブでは壁が薄いため、隣の部屋のテレビの音や寝返りして壁をける音などでよく眠れない日が続いたということです。

一方、最近は仮設住宅に暮らす世帯が減るにつれて夜の明かりが減り、防犯面などでも不安を感じているといいます。

丹野さんはことし10月に災害公営住宅への入居が決まったということですが「最初は雨露をしのげてありがたかったが、仮設での生活がこんなに長期化するとは思わなかった。復興が早く進むならプレハブでも我慢できるが、長期化するならば、入所者の生活にも配慮した仮設住宅を作って頂くのがよいとおもう」と話していました。
災害時の仮設住宅 プレハブだけでなく恒久住宅も検討を

災害時の仮設住宅 プレハブだけでなく恒久住宅も検討を

南海トラフ巨大地震など大規模な災害が起きた際の仮設住宅の建設について、国の検討会は避難生活が長期にわたることを見越し、従来のプレハブ住宅だけでなく恒久的に使える住宅の建設など幅広い選択肢を検討すべきとする新たな提言をまとめました。

南海トラフ巨大地震や首都直下地震クラスの大規模災害が起きた際に被災者の住まいをどう確保するかについて、有識者による国の検討会は去年11月から議論を進め、29日提言を公表しました。

この中で、大規模災害では入居期間が原則2年とされる仮設住宅での生活が長期化することが想定されるとして、プレハブだけでなく建築基準を満たした恒久的な住宅の建設も選択肢の1つとして検討すべきだとしています。

東日本大震災では、災害公営住宅の建設の遅れなどによって発生から6年4か月が過ぎた先月末の時点で、2万1000人以上が広さや居住性の面で劣るプレハブ仮設住宅などでの生活を余儀なくされていて、こうした教訓を踏まえた内容となっています。

一方で、地方自治体は住宅の供給を迅速に行うため、平常時から用地の選定や業界団体との協定といった準備を進める必要があるとしてます。

また、必要とされる仮設住宅がいずれも最大で南海トラフの巨大地震では東日本大震災の17倍にあたるおよそ205万戸、首都直下地震では8倍にあたるおよそ94万戸と推計され、建設の用地や人手の確保が難しくなることも予想されています。

このため提言では「賃貸住宅や空き家などを今まで以上に積極的に活用するなど、多様な選択肢を用意し、復旧から復興まで切れ目なく支援すべきだ」としています。

提言について小此木防災担当大臣は会見で「関係する省庁や自治体と連携し、できるところから対応したい。被災者の住まいの多様な選択肢については、今後1、2年かけて検討していく必要がある」と述べました。

座長「多様な選択肢が不可欠」

検討会の座長を務めた防災科学技術研究所の林春男理事長は「南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような大規模な災害が発生した場合、非常に多くの人の住まいが必要になるため、プレハブの仮設住宅だけや民間の賃貸住宅の借り上げだけといった単純な解決策ではなく、すべての選択肢をうまく組み合わせることが不可欠だ」と話しています。

そのうえで、恒久的に使える仮設住宅の建設について「復興までの長い時間を考えるとあまりむだが出ないような住まいのあり方を当初から考えておく必要がある」と指摘しています。

東日本大震災 6年を過ぎても2万人が生活

仮設住宅は災害救助法などに基づき、できるだけ早く供給することや入居期間が原則2年とされ、これまで建設に時間がかからないプレハブ住宅が多くを占めていました。

しかし、東日本大震災では発生から6年過ぎても2万1000人以上がプレハブなどの仮設住宅で不自由な暮らしを余儀なくされていて、狭さや寒さ、カビの発生などに加え、耐久性の低い「木のくい」で基礎が作られているため、次第に腐食して補修にかかる費用も問題になっています。

こうしたことを教訓に、去年4月の熊本地震では基礎に耐久性の高いコンクリートを使った木造の仮設住宅が一部で建設されました。

20年以上住み続けられるため「災害公営住宅」に移行することも可能で、長期的な避難生活を見据えた仮設住宅として全国から注目を集めましたが、地震活動が活発だったことを理由に特例で認められたケースでした。

一方で、恒久的に使える木造の仮設住宅はプレハブに比べて工事期間が1週間から2週間ほど長くかかるほか、大量の木材や建設作業員の確保が難しいという課題もあります。

今回の提言でも、都道府県が業界団体などとの協定締結や、地域の事情に応じた住宅の仕様の検討などを平常時から進めておくべきとしています。

住民「生活に配慮した住宅を」

東日本大震災で借りていた家が全壊し石巻市の仮設住宅で暮らしている丹野美代子さん(77)は、心臓などに持病があるため病院の近くの災害公営住宅に入居を申し込んできましたがこれまでに3回外れ現在の場所での生活が6年余りとなっています。

仮設住宅の部屋はおよそ5畳で、介護用のベットが半分を占め収納スペースもほとんどないため窮屈だったほか、洗面所と台所の間の段差で転ぶこともあり不便を感じてきました。

また、プレハブでは壁が薄いため、隣の部屋のテレビの音や寝返りして壁をける音などでよく眠れない日が続いたということです。

一方、最近は仮設住宅に暮らす世帯が減るにつれて夜の明かりが減り、防犯面などでも不安を感じているといいます。

丹野さんはことし10月に災害公営住宅への入居が決まったということですが「最初は雨露をしのげてありがたかったが、仮設での生活がこんなに長期化するとは思わなかった。復興が早く進むならプレハブでも我慢できるが、長期化するならば、入所者の生活にも配慮した仮設住宅を作って頂くのがよいとおもう」と話していました。