一行がわざわざ日本を訪問したのは、民主化にともなう初めての国政選挙がことし11月に迫っているからです。
インドと中国に挟まれた人口2600万人余りの国、ネパール。ヒマラヤ山脈に沿った東西に細長い国で、その美しい光景にひかれて世界各地から観光客が訪れますが1人あたりのGDPは日本円で10万円未満と、アジアでもっとも低い発展途上国です。
選挙のやり方 教えます! 変わる日本の国際支援
今月27日に投開票が行われた茨城県知事選挙。その開票作業が行われた水戸市の体育館にネパール政府の選挙管理委員会の幹部の姿がありました。世界的に見ても優れているとされる開票作業の正確さや迅速さを、直接見て学ぼうと来日しました。一方、日本がこうした支援を行う背景には対中国を見据えた国際支援の戦略もあるのです。(ネットワーク報道部記者 栗原岳史)
一行がわざわざ日本を訪問したのは、民主化にともなう初めての国政選挙がことし11月に迫っているからです。
インドと中国に挟まれた人口2600万人余りの国、ネパール。ヒマラヤ山脈に沿った東西に細長い国で、その美しい光景にひかれて世界各地から観光客が訪れますが1人あたりのGDPは日本円で10万円未満と、アジアでもっとも低い発展途上国です。
インドと中国に挟まれた人口2600万人余りの国、ネパール。ヒマラヤ山脈に沿った東西に細長い国で、その美しい光景にひかれて世界各地から観光客が訪れますが1人あたりのGDPは日本円で10万円未満と、アジアでもっとも低い発展途上国です。
民主化ネパール 選挙管理が大問題に
一行がわざわざ日本を訪問したのは、民主化にともなう初めての国政選挙がことし11月に迫っているからです。
インドと中国に挟まれた人口2600万人余りの国、ネパール。ヒマラヤ山脈に沿った東西に細長い国で、その美しい光景にひかれて世界各地から観光客が訪れますが1人あたりのGDPは日本円で10万円未満と、アジアでもっとも低い発展途上国です。
インドと中国に挟まれた人口2600万人余りの国、ネパール。ヒマラヤ山脈に沿った東西に細長い国で、その美しい光景にひかれて世界各地から観光客が訪れますが1人あたりのGDPは日本円で10万円未満と、アジアでもっとも低い発展途上国です。
そのネパールでは、今、民主化の真っ最中です。1996年から10年にわたる内戦をへて2008年に王制が廃止され、おととしには連邦共和制とする新しい憲法が制定されました。
政府は、新憲法のもと初めての国政選挙となる議会下院の選挙をことし11月26日に行うと発表し、選挙を経て新しい首相が選出される予定です。
ネパールでは、おととし4月の大地震でおよそ9000人が死亡し、住宅の再建が進まないなど復興が大きく遅れています。新政権には大地震からの復興をどう加速させるかが問われます。
民主化の根本となる議員を選ぶため、ネパールでは、新しい憲法が制定されて以降初めて、ことし5月と6月に、20年ぶりとなる地方選挙が行われました。ところが、やってみると問題が噴出。担当者が選挙に慣れておらず、開票作業に2週間もかかってしまいました。
ネパールでは、おととし4月の大地震でおよそ9000人が死亡し、住宅の再建が進まないなど復興が大きく遅れています。新政権には大地震からの復興をどう加速させるかが問われます。
民主化の根本となる議員を選ぶため、ネパールでは、新しい憲法が制定されて以降初めて、ことし5月と6月に、20年ぶりとなる地方選挙が行われました。ところが、やってみると問題が噴出。担当者が選挙に慣れておらず、開票作業に2週間もかかってしまいました。
投票の方法が複雑だったこともあり無効票は全体の11%に。さらには、政党関係者がさまざまな方法で投票を誘導するなど公正な選挙の観点からも課題が浮き彫りになったのです。
このまま、国政選挙を迎えたらトラブルが相次いでしまう…。
この危機感から日本で学べ! ということになったのです。
このまま、国政選挙を迎えたらトラブルが相次いでしまう…。
この危機感から日本で学べ! ということになったのです。
電子投票に関心
こうした中、22日から9日間の日程で来日した政府の選挙管理委員会の幹部7人。総務省の担当者から、日本の選挙制度などについて学んだ後、今月25日に向かったのは京都市でした。京都市は、過去に3回の市長選挙で電子投票を実施した経験があるからです。
平成20年
電子投票に強い関心をもったのはネパールの事情がありました。貧困のため教育を受けられない国民が多く識字率は65%程度にとどまっています(2011年の国勢調査より)。
このため、5月から6月にかけて実施された地方選挙では、文字ではなく、政党のシンボルマークを投票用紙に印刷。それに判を押して投票する仕組みでした。ところが、選挙では、判を押す場所の間違いが多発し無効票が11%にものぼる要因となったのです。
また、道路事情がよくないネパールでは投票用紙を開票所に運ぶのにも時間がかかってしまいます。
こうした理由から「電子投票」に強い関心を持ったのです。
京都市の選挙管理委員会では電子投票のメリット、デメリットを中心に説明を受けました。京都市側はメリットとして挙げたのは、▽無効票が発生しないこと、▽開票所の設営が不要など簡素化できることでした。
一方、デメリットについては、▽電子投票の機器の費用が高く、紙による投票のおよそ2倍のコストがかかったこと、▽万が一、トラブルが生じると、投票ができなくなるおそれがあり最悪のケースでは、選挙が無効になってしまう危険性もあるということでした。
また、道路事情がよくないネパールでは投票用紙を開票所に運ぶのにも時間がかかってしまいます。
こうした理由から「電子投票」に強い関心を持ったのです。
京都市の選挙管理委員会では電子投票のメリット、デメリットを中心に説明を受けました。京都市側はメリットとして挙げたのは、▽無効票が発生しないこと、▽開票所の設営が不要など簡素化できることでした。
一方、デメリットについては、▽電子投票の機器の費用が高く、紙による投票のおよそ2倍のコストがかかったこと、▽万が一、トラブルが生じると、投票ができなくなるおそれがあり最悪のケースでは、選挙が無効になってしまう危険性もあるということでした。
電子投票を3回実施した京都市では、メリットもあるが、現時点では、デメリットの方が大きく効率的ではないと判断し、おととし紙による投票に戻す判断をしています。
電子投票を導入できればと意気込んでいたネパール政府一行も、メリットだけでなくデメリットもあることを理解したようでした。
視察団長を務めるナレンドラ・ダハール政府選挙管理委員は「電子投票を導入することによって、迅速に、スムーズに、投開票ができると期待できる。ただ、すぐに導入するのは難しいとわかったので、今後もさらに研究を続けていきたい」と話していました。
電子投票を導入できればと意気込んでいたネパール政府一行も、メリットだけでなくデメリットもあることを理解したようでした。
視察団長を務めるナレンドラ・ダハール政府選挙管理委員は「電子投票を導入することによって、迅速に、スムーズに、投開票ができると期待できる。ただ、すぐに導入するのは難しいとわかったので、今後もさらに研究を続けていきたい」と話していました。
日本の投開票作業を学ぶ
その2日後、一行が向かったのは、茨城県水戸市でした。この日、知事選挙の投開票が行われる現場を視察するためです。
まず、訪れたのは、小学校に設けられた投票所。投票所では、手際よく投票用紙を手渡す担当者の動きやスムーズに投票するための会場の導線などを水戸市選挙管理委員会から説明を聞いたり、スマートフォンで撮影したりしていました。
投票所で、一行が驚いていたのは、有権者が静かな環境で淡々と投票していることでした。「軍や警察の警備もないのに、どうして混乱もなく整然と投票が行われているのか、不思議だ」との感想が。
もうひとつ注目していたのがアルミ製の投票箱でした。「透明な投票箱を使わずに、有権者から疑義を持たれないのか」と、質問していました。
まず、訪れたのは、小学校に設けられた投票所。投票所では、手際よく投票用紙を手渡す担当者の動きやスムーズに投票するための会場の導線などを水戸市選挙管理委員会から説明を聞いたり、スマートフォンで撮影したりしていました。
投票所で、一行が驚いていたのは、有権者が静かな環境で淡々と投票していることでした。「軍や警察の警備もないのに、どうして混乱もなく整然と投票が行われているのか、不思議だ」との感想が。
もうひとつ注目していたのがアルミ製の投票箱でした。「透明な投票箱を使わずに、有権者から疑義を持たれないのか」と、質問していました。
市の担当者は「投票箱の中身が見えないことで疑問を持つ有権者はあまりいない。むしろ、投票の自由を確保する観点から、中身が見えない投票箱を採用している」と答えていました。このやりとりからは、置かれている社会状況や国民性の違いが垣間見えました。
その後、開票所となった水戸市の体育館も視察。
準備作業を見学しているとある意外なものに強い関心を示しました。
投票用紙を確認をする台に用意されていた樹脂製の「指サック」でした。投票用紙を数えるのに便利な指サック。ネパールにはないそうで使い方や入手方法を詳しく尋ねていました。
投票用紙を確認をする台に用意されていた樹脂製の「指サック」でした。投票用紙を数えるのに便利な指サック。ネパールにはないそうで使い方や入手方法を詳しく尋ねていました。
午後9時、開票作業が始まりました。市内の投票所から集められた投票用紙は10万枚余り。およそ300人の職員が整然と投票用紙を仕分け、開票作業はおよそ1時間半で終了。すぐに選挙結果が発表されるとその速さに驚いていました。
視察団長のダハール氏は「投票も開票も、非常にシステマティックに、スムーズに行われ素晴らしかった。選挙を迅速にスムーズに行うことによって国民の信頼と政党に対する信頼が生まれてくるのだと思う。今回、日本で学んだことを生かして、さらにシンプルな速いシステムにできるよう検討していきたい」と話していました。
視察団長のダハール氏は「投票も開票も、非常にシステマティックに、スムーズに行われ素晴らしかった。選挙を迅速にスムーズに行うことによって国民の信頼と政党に対する信頼が生まれてくるのだと思う。今回、日本で学んだことを生かして、さらにシンプルな速いシステムにできるよう検討していきたい」と話していました。
変わる日本の国際支援
ネパール側の要望を受け、日本のODA=政府開発援助の事業として実現した今回の視察、実は、日本が進める国際支援の一環でもあるのです。
「技術立国」のイメージが強かった日本に対して途上国側からの要望は、橋や道路の建設といったハード面の支援がほとんどでした。ところが、2000年代から、巨額の資金を背景に、中国が途上国で大規模なインフラ事業を展開するようになります。
「技術立国」のイメージが強かった日本に対して途上国側からの要望は、橋や道路の建設といったハード面の支援がほとんどでした。ところが、2000年代から、巨額の資金を背景に、中国が途上国で大規模なインフラ事業を展開するようになります。
そのため、日本政府は、インフラ整備といったハード面だけでなく、人材育成などのソフト面の支援も強化しようとしています。
日本のODAの基本理念などを定める政府の指針の名称が「政府開発援助大綱」から、おととし「開発協力大綱」に変わったこともその表れ。金銭的な支援だけではなく、ノウハウを伝達するなど、日本しかできないオンリーワンの支援を目指すものです。選挙管理もそのひとつで、これまでにも、エジプトやカンボジアなどから、政府幹部を日本に招いたり、現地に専門家を派遣したりして、民主化にともなう選挙を支援してきた実績があります。
この支援、途上国からも注目されているそうです。JICA=国際協力機構の国際協力専門員で、途上国への民主化支援が専門の橋本敬市さんは「日本の迅速で、正確で、効率的な選挙は、どこの国の人が見ても、感銘を受けます。日本に対しては技術立国としてインフラ整備に対する期待が高かったのですが民主主義の理念を広めていくということは新たな支援になると思います。今後も、途上国の民主化のための支援は日本が力を注ぐ分野になります」と話していました。
11月にネパールで行われる初めての国政選挙に、日本の支援がどのような形で貢献できるのか、注目されます。
News Up 選挙のやり方 教えます! 変わる日本の国際支援
今月27日に投開票が行われた茨城県知事選挙。その開票作業が行われた水戸市の体育館にネパール政府の選挙管理委員会の幹部の姿がありました。世界的に見ても優れているとされる開票作業の正確さや迅速さを、直接見て学ぼうと来日しました。一方、日本がこうした支援を行う背景には対中国を見据えた国際支援の戦略もあるのです。(ネットワーク報道部記者 栗原岳史)
民主化ネパール 選挙管理が大問題に
そのネパールでは、今、民主化の真っ最中です。1996年から10年にわたる内戦をへて2008年に王制が廃止され、おととしには連邦共和制とする新しい憲法が制定されました。
政府は、新憲法のもと初めての国政選挙となる議会下院の選挙をことし11月26日に行うと発表し、選挙を経て新しい首相が選出される予定です。
ネパールでは、おととし4月の大地震でおよそ9000人が死亡し、住宅の再建が進まないなど復興が大きく遅れています。新政権には大地震からの復興をどう加速させるかが問われます。
民主化の根本となる議員を選ぶため、ネパールでは、新しい憲法が制定されて以降初めて、ことし5月と6月に、20年ぶりとなる地方選挙が行われました。ところが、やってみると問題が噴出。担当者が選挙に慣れておらず、開票作業に2週間もかかってしまいました。
ネパールでは、おととし4月の大地震でおよそ9000人が死亡し、住宅の再建が進まないなど復興が大きく遅れています。新政権には大地震からの復興をどう加速させるかが問われます。
民主化の根本となる議員を選ぶため、ネパールでは、新しい憲法が制定されて以降初めて、ことし5月と6月に、20年ぶりとなる地方選挙が行われました。ところが、やってみると問題が噴出。担当者が選挙に慣れておらず、開票作業に2週間もかかってしまいました。
投票の方法が複雑だったこともあり無効票は全体の11%に。さらには、政党関係者がさまざまな方法で投票を誘導するなど公正な選挙の観点からも課題が浮き彫りになったのです。
このまま、国政選挙を迎えたらトラブルが相次いでしまう…。
この危機感から日本で学べ! ということになったのです。
このまま、国政選挙を迎えたらトラブルが相次いでしまう…。
この危機感から日本で学べ! ということになったのです。
電子投票に関心
こうした中、22日から9日間の日程で来日した政府の選挙管理委員会の幹部7人。総務省の担当者から、日本の選挙制度などについて学んだ後、今月25日に向かったのは京都市でした。京都市は、過去に3回の市長選挙で電子投票を実施した経験があるからです。
電子投票に強い関心をもったのはネパールの事情がありました。貧困のため教育を受けられない国民が多く識字率は65%程度にとどまっています(2011年の国勢調査より)。
このため、5月から6月にかけて実施された地方選挙では、文字ではなく、政党のシンボルマークを投票用紙に印刷。それに判を押して投票する仕組みでした。ところが、選挙では、判を押す場所の間違いが多発し無効票が11%にものぼる要因となったのです。
また、道路事情がよくないネパールでは投票用紙を開票所に運ぶのにも時間がかかってしまいます。
こうした理由から「電子投票」に強い関心を持ったのです。
京都市の選挙管理委員会では電子投票のメリット、デメリットを中心に説明を受けました。京都市側はメリットとして挙げたのは、▽無効票が発生しないこと、▽開票所の設営が不要など簡素化できることでした。
一方、デメリットについては、▽電子投票の機器の費用が高く、紙による投票のおよそ2倍のコストがかかったこと、▽万が一、トラブルが生じると、投票ができなくなるおそれがあり最悪のケースでは、選挙が無効になってしまう危険性もあるということでした。
また、道路事情がよくないネパールでは投票用紙を開票所に運ぶのにも時間がかかってしまいます。
こうした理由から「電子投票」に強い関心を持ったのです。
京都市の選挙管理委員会では電子投票のメリット、デメリットを中心に説明を受けました。京都市側はメリットとして挙げたのは、▽無効票が発生しないこと、▽開票所の設営が不要など簡素化できることでした。
一方、デメリットについては、▽電子投票の機器の費用が高く、紙による投票のおよそ2倍のコストがかかったこと、▽万が一、トラブルが生じると、投票ができなくなるおそれがあり最悪のケースでは、選挙が無効になってしまう危険性もあるということでした。
電子投票を3回実施した京都市では、メリットもあるが、現時点では、デメリットの方が大きく効率的ではないと判断し、おととし紙による投票に戻す判断をしています。
電子投票を導入できればと意気込んでいたネパール政府一行も、メリットだけでなくデメリットもあることを理解したようでした。
視察団長を務めるナレンドラ・ダハール政府選挙管理委員は「電子投票を導入することによって、迅速に、スムーズに、投開票ができると期待できる。ただ、すぐに導入するのは難しいとわかったので、今後もさらに研究を続けていきたい」と話していました。
電子投票を導入できればと意気込んでいたネパール政府一行も、メリットだけでなくデメリットもあることを理解したようでした。
視察団長を務めるナレンドラ・ダハール政府選挙管理委員は「電子投票を導入することによって、迅速に、スムーズに、投開票ができると期待できる。ただ、すぐに導入するのは難しいとわかったので、今後もさらに研究を続けていきたい」と話していました。
日本の投開票作業を学ぶ
その2日後、一行が向かったのは、茨城県水戸市でした。この日、知事選挙の投開票が行われる現場を視察するためです。
まず、訪れたのは、小学校に設けられた投票所。投票所では、手際よく投票用紙を手渡す担当者の動きやスムーズに投票するための会場の導線などを水戸市選挙管理委員会から説明を聞いたり、スマートフォンで撮影したりしていました。
投票所で、一行が驚いていたのは、有権者が静かな環境で淡々と投票していることでした。「軍や警察の警備もないのに、どうして混乱もなく整然と投票が行われているのか、不思議だ」との感想が。
もうひとつ注目していたのがアルミ製の投票箱でした。「透明な投票箱を使わずに、有権者から疑義を持たれないのか」と、質問していました。
まず、訪れたのは、小学校に設けられた投票所。投票所では、手際よく投票用紙を手渡す担当者の動きやスムーズに投票するための会場の導線などを水戸市選挙管理委員会から説明を聞いたり、スマートフォンで撮影したりしていました。
投票所で、一行が驚いていたのは、有権者が静かな環境で淡々と投票していることでした。「軍や警察の警備もないのに、どうして混乱もなく整然と投票が行われているのか、不思議だ」との感想が。
もうひとつ注目していたのがアルミ製の投票箱でした。「透明な投票箱を使わずに、有権者から疑義を持たれないのか」と、質問していました。
市の担当者は「投票箱の中身が見えないことで疑問を持つ有権者はあまりいない。むしろ、投票の自由を確保する観点から、中身が見えない投票箱を採用している」と答えていました。このやりとりからは、置かれている社会状況や国民性の違いが垣間見えました。
その後、開票所となった水戸市の体育館も視察。
準備作業を見学しているとある意外なものに強い関心を示しました。
投票用紙を確認をする台に用意されていた樹脂製の「指サック」でした。投票用紙を数えるのに便利な指サック。ネパールにはないそうで使い方や入手方法を詳しく尋ねていました。
投票用紙を確認をする台に用意されていた樹脂製の「指サック」でした。投票用紙を数えるのに便利な指サック。ネパールにはないそうで使い方や入手方法を詳しく尋ねていました。
午後9時、開票作業が始まりました。市内の投票所から集められた投票用紙は10万枚余り。およそ300人の職員が整然と投票用紙を仕分け、開票作業はおよそ1時間半で終了。すぐに選挙結果が発表されるとその速さに驚いていました。
視察団長のダハール氏は「投票も開票も、非常にシステマティックに、スムーズに行われ素晴らしかった。選挙を迅速にスムーズに行うことによって国民の信頼と政党に対する信頼が生まれてくるのだと思う。今回、日本で学んだことを生かして、さらにシンプルな速いシステムにできるよう検討していきたい」と話していました。
視察団長のダハール氏は「投票も開票も、非常にシステマティックに、スムーズに行われ素晴らしかった。選挙を迅速にスムーズに行うことによって国民の信頼と政党に対する信頼が生まれてくるのだと思う。今回、日本で学んだことを生かして、さらにシンプルな速いシステムにできるよう検討していきたい」と話していました。
変わる日本の国際支援
ネパール側の要望を受け、日本のODA=政府開発援助の事業として実現した今回の視察、実は、日本が進める国際支援の一環でもあるのです。
「技術立国」のイメージが強かった日本に対して途上国側からの要望は、橋や道路の建設といったハード面の支援がほとんどでした。ところが、2000年代から、巨額の資金を背景に、中国が途上国で大規模なインフラ事業を展開するようになります。
「技術立国」のイメージが強かった日本に対して途上国側からの要望は、橋や道路の建設といったハード面の支援がほとんどでした。ところが、2000年代から、巨額の資金を背景に、中国が途上国で大規模なインフラ事業を展開するようになります。
そのため、日本政府は、インフラ整備といったハード面だけでなく、人材育成などのソフト面の支援も強化しようとしています。
日本のODAの基本理念などを定める政府の指針の名称が「政府開発援助大綱」から、おととし「開発協力大綱」に変わったこともその表れ。金銭的な支援だけではなく、ノウハウを伝達するなど、日本しかできないオンリーワンの支援を目指すものです。選挙管理もそのひとつで、これまでにも、エジプトやカンボジアなどから、政府幹部を日本に招いたり、現地に専門家を派遣したりして、民主化にともなう選挙を支援してきた実績があります。
この支援、途上国からも注目されているそうです。JICA=国際協力機構の国際協力専門員で、途上国への民主化支援が専門の橋本敬市さんは「日本の迅速で、正確で、効率的な選挙は、どこの国の人が見ても、感銘を受けます。日本に対しては技術立国としてインフラ整備に対する期待が高かったのですが民主主義の理念を広めていくということは新たな支援になると思います。今後も、途上国の民主化のための支援は日本が力を注ぐ分野になります」と話していました。
11月にネパールで行われる初めての国政選挙に、日本の支援がどのような形で貢献できるのか、注目されます。