作家・田中芳樹氏が描く、架空の王国を舞台としたファンタジー小説「アルスラーン戦記」の最終巻が脱稿されたとの報告が行われました。「創竜伝」、「薬師寺涼子の怪奇事件簿」など、数多くの作品を手がけている田中氏。その中でも「アルスラーン戦記」は、OVAやTVアニメ、ゲーム化を実現させるなど多岐に渡る活躍を見せており、「銀河英雄伝説」と並んで田中氏の代表作のひとつとして数えられるほどの人気を博しています。ですが「アルスラーン戦記」の歩みは、主人公・アルスラーンの道のりと同様に、決して穏やかなものではありません。1986年に、角川文庫から第1巻「王都炎上」が登場し、翌年には「王子二人」と「落日悲歌」が、1988年には「汗血公路」が出版され、第9巻となる「旌旗流転」が1992年にリリースされるまでは順調でした。しかし、第10巻「妖雲群行」は7年後となる1999年に刊行。続刊はまたしばらく間が空き、カッパ・ノベルスから第11巻「魔軍襲来」が2005年に登場。続く第12巻、第13巻は1~2年の間隔でリリースされましたが、第14巻「天鳴地動」は6年の歳月を待つ形に。このように長い休止状態が幾度もあったため、「未完のまま終わるのでは」といった危惧の声が上がることも何度かありました。しかしこのたび、田中氏の二次版権を管理する有限会社「らいとすたっふ」の代表を務める安達裕章氏が、自身のTwitterアカウントにて、「さきほど編集さんに原稿をお渡ししましたので、きちんとお伝えします。『アルスラーン戦記』最終巻、脱稿しました」と発表。校正やイラストなどの作業があるため、実際に出版されるのはもう少し先となりますが、そう遠くないうちに最終巻が読者の手元に届くことでしょう。ちなみに安達氏は、田中氏から『アルスラーン戦記』の結末を伝えられていた数少ない人物のひとり。その事実を背負い続けていた安達氏は、最終巻が刊行されることでようやくそのプレッシャーから解放されると思っていましたが、実際の結末を読んだところ、「…聞いてたラストと違うじゃん」と、驚きの声を上げたとのこと。30年を超える歩みが、果たしてどんな結末を迎えるのか。早くも期待が募るばかりです。