こちら孤島のまどよりお便りします

円野まどの恥の多い日々の記録

【働くということ】あなたはその仕事をするために生まれたわけではないかもしれない

〒 みなさま

 

プリンの上にマロンクリームを乗せている商品を見るたびに、微笑みが止まらない円野まどですこんにちは( ´ヮ` )

皆様いかがお過ごしでしょうか。今日は働くことについて書きたいと思います。

これを読んでくださる人の中に、お勤めの方もご在宅の方もいらっしゃると思います。

このごろ仕事について考える事が増えたのですが、就職しているいないに関わらず「仕事」に関わりを持って生きる事は多いと思います。

8月は出かける機会が多く、人とさまざまな話をしましたのでそんな中「働くと言うこと」について考える事があったので、よろしければ私の雑談と思いお読みください。

重い部分と軽い部分があるので気持ちが疲れているときは注意ですぞ・・・(`・ω・´) 

 

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*登場人物

しゃん 私のパートナーで家主。基本は低温処理された態度で接するタイプ 

わたし 筆者円野まど。だらしない居候。ひきこもりであまったれ。

アイちゃん 私の数少ない知人。年上のオネエさん。呼び出しがあれば夜中でも仕事が発生する可能性のある職種

でんきゅう 私の子供と弟と親友のちょうど間くらいにいる人。マッチョな21歳。

 

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*「彼女」からの連絡

しゃんの残業が80時間を越えたあたりから、仕事について考える事が増えた。

そういえばアイちゃんもすごく忙しいなあ・・・ということを思った。

姉も仕事のスケジュールがいっぱいで、数少ない知人もみんな自分の時間がないと冗談混じりに話していた。

アイちゃんとはよくお昼を一緒に食べるけれどそれは彼女の職場と私の家が近いからだ。私は自分も仕事に復帰したいと思うようになった。

まわりの心配を徐々に説得して、わずかでも何かの役に立てたらいいなと思っていたら

その矢先にひどい気管支炎になって、身体の弱さを露呈してしまうことになる。

焦りや心配を抱えていたところ、メッセージが届いた。

私の家のすぐそばに大きな公園があるのだけど、仕事で近くまで来たから公園まで出てこない?という連絡だった。

久しぶりに会うその子は目の下に真っ黒なくまを携えていた。

私だけではなく気管支炎が流行っていたようで、咳をしながら薬を取り出していた。

「休んだりはやっぱりできない?」と言うと、力なく笑って答えた。

「自分が抜けたら仕事がまわらないよ。それに、手を緩めて出来ないヤツって見られて職場にどう居続ければいいか分からない。」

私は彼女の仕事について何も知らないからきっと無責任なことを言ってはいけない

その後の人生にも何の責任もとってあげられない。

実は私は知っている。彼女が本当は私を好きではなかったことを。

そりが合わないと感じている私をふと空いた時間に思い出したのは、何も彼女の状況を知らなかったからじゃないのかな。それで気がラクだったのではないだろうか。

勘違いかもしれないけれど、話をしながらそんなことを考えていた。

「今からとしまえんに行こうよ。」

「無理だよ。今日の仕事は終わりだけど、明日の仕事がある。今月分で考えるとまだまだ時間が足りないくらいなんだ。」

「行こうよ。」

「無理だよ。」

押し問答は続いて、結局彼女は午後を休みにして私とメリーゴラウンドに乗った。

あんまり気持ちよくて三回も乗ったけど、二人とも最後の一回は余計だったねと話した。なんか感じ変わったね、と言われたけれどどうなのか自分では分からない。

「働いていないと食べていけないけど、時々手抜きだけはしようよ。大丈夫、きっとみんなしているよ。」

園内にある薄暗い食堂でそう話すと、彼女は顔を覆って数十秒黙った。泣いてしまうかな、と思っていると振り切るように手をほどいて「よし、そうするか!」と笑った。

それからしばらくして、他の人から彼女がうつ病になって休職をしたことを聞いた。

本人からの連絡はまたなくなったけれど、いつか思い出してくれた時に、彼女の邪魔にならないようなことってなんだろうと考えている。

お前に何が分かるって思われてもしょうがない。でも、どうしても休んでほしかった。

正しいことができなくてもせめて、足を引っ張らないようにいたい。

その話をしたときでんきゅうはこう言った。

「自分の選択なんだよ。どれを選ぶかは本当は誰にも命令されてないってこと、たくさんある。もちろんその逆もあるけど、けど仕事をどのくらい頑張るかは実は選択やないかな。冷たい意味の自己責任でってことじゃなくて、自分で選べる事を選べなくしているのは自分自身なこともあるよね。」

これが私の後の決断に影響を与えた。

 

*仕事と自分

そのことがあって、まずアイちゃんの体が心配になった。

私たちの中で一番働いているからだ。

お昼にスーパーで買ってきた餃子を温めながら私が作ったサラダを先に食べている彼女に、それとなく話を振ってみる。

「ああ~あたしは仕事しなくちゃ価値がないような気はしないんだけど、働きすぎていてもこれが普通なのかなって思っちゃうんだよね。」

アイちゃんはパプリカを齧りながら冷静にそう話し始める。

「みんな忙しいじゃん、人手不足倒産とかもちらほら聞き始めたよね。少子化だからなの?アッハ!知らないけど!まわり皆残業当たり前になってるっていうか、今って三人分くらいの仕事を一人でまわすのが当然みたいな空気ってあるじゃん。少なくともアタシの仕事はそうかな。だからなんか、平日は暇無く仕事してるのが普通になってはきてるよねぇ・・・。家帰っても時々明日の仕事を効率的にまわす方法とか考えてるし・・・。」

ピン!と私の家の古いレンジがあたため終了の合図を出す。

あつっとなるのがいやでなべ掴みで餃子のお皿を取り出すと、アイちゃんの横顔はいつもよりずっと真面目だった。

「よく考えたら、自分そのものでいる時間より。仕事をしている時間の人格でいるほうがずっと長いのって不思議なことよね。人生って何かしら・・・。」

その時お味噌汁を出すのを忘れていたことに気づいて、「いまさらだけど」なんて言いながら盛り始める。アイちゃんはそんな私を眺めて続ける。

「ありがとう。そっかあ。あたしは同居家族がいないから、余計そうなりやすいのかもしれないわね。職場の人格のままでいても誰かに迷惑をかけないっていうか。それが結局、ただ目の前の山をずっと切り崩している生活につながってるのかな?」

彼女は悩んでいる様子ではなくただ落ち着いて分析していたのだけど、私はなんだかそれが恐ろしい結果に繋がるような気がしてしまって不安になっていた。

「家族がいないなら大きな家か小さなアパートでも買って一緒に住もうよ。」

思わず大きな声が出る。何かが手遅れになって身近な人を失うことが怖かった。

「それも楽しそうだけどさあ、しゃんは大丈夫なの?同居のことじゃなくて、働きすぎのほう。」

前の記事で書いた通り、この頃しゃんは体調を崩していたのだけれど私はそれに気づけていなかった。ただ行き違いが続いている事を思って、言葉が出なかった。

餃子がお皿からひとつ、またひとつ消えていく。

お昼休みが終わる少し前に、彼女はお皿を洗ってくれながらこう言った。

「働きすぎたって仕事が人生だっていいのよ、そうじゃなくってこれをアタシが望んでいる事なのかが重要よね。アタシはどのアタシになりたくて生きてるのかってことが大事だわ。」

それからもし皆で大きな家を買って住むならという話を今度しようと笑って、その日は解散した。

*働くことと家族

私の家は昭和によくあった形態の構成で、専業主婦の母にちょっと強権的な父がいるというものだった。男性は外で鎧を身に着けねばならないので、女性はほがらかで、できるだけ公の場では男子をたて、仕事が円滑に進められるよう支えましょうという空気のもとで育った。

もちろんそれが時代に合っているとは思っていないけれど、心のどこかでそれを是とする部分があったのかもしれない。しゃんが忙しい時私は家事を頑張っていた。

彼もその頃よく「忙しいのは皆同じだから、自分だけ怠けるわけにいかない。」というような事を言っていた。

皆、それぞれの毎日を課されていて、それを頑張ってこなしているのだ。

だから私がしたことは、批判されることかもしれないし、そうでなくても間違っているだろうと思う。

あるとき青白いを通り越して青黒くなっている彼の表情に気づいて、休めないという彼を無理やりに休ませた。

彼は迷惑をかけられないと何度も拒否をして、口論にもなった。

私はひどくわがままな態度で休まなければ許さないと言う態度を崩さなかった。

病院に連れて行った。そして病気が分かって、診断書が渡された。

実際に病気だったのだから仕方がないといえば仕方ないけれど

職場の人には迷惑がかかっていることだろう。申し訳なく思う。

私が思ったところで、それは何にもならないし、心でも身体でもまた誰かがしゃんと同じように体調を崩してしまったらどうしようと思う。

彼も同じ事を心配しているけれど、考えないようにいつも伝えている。

私がしていることは「自分さえよければそれでいい」ということなのかもしれない。

それでも私は、彼を失わないためにできることは何でもしたかった。

「誰も悪くないよね。」

自己弁護かもしれないけどそう思った。

一人の人間がしなくてはいけない仕事が多い事は個人の問題ではない。

国がなんとかできることでもない。助けくらいにはなれるかもしれないけど。

 

そうかと思えば残業代がなければ家族を養えないという話も聞く。

もう社会がそういう状態になっているのかもしれない。

だとしたら、どうすれば一人の人間が自分の人生を守れるのかな?ということを考える。答えはぜんぜん浮かばない。

休めば?と言われて休める状態じゃないのも分かっている。

だから、身近な人にはいつもこう伝えている。

「あなたを応援してる。でも、あなたを失いたくない。」

そのために自分は何ができるんだろうって、たくさん考え続けている。

*それから

しゃんが一時的に仕事から離れたことで、その分の給与は減ったのだと思う。

変わらない生活を送っているのであまり実感はないのだけど、きっと少し減った。

けれど一緒に料理を作るようになったり、話をしたり、湖でボートに乗っているうちに私たちは随分長い間、「何かの役割を与えられてない自分」で会話していないことに気がついた。

また仕事をばりばりするようになっても、その事を忘れないでいようねという話をしたあと何かのはずみでしゃんが大笑いをした。

内容を聞くとすごくくだらなくてオチもないことででもなんだか無性にツボにはまったらしくてみじかい間だけどそれは楽しそうに笑っていた。

私はその時、彼がそのうちに泣いてしまいそうに見えた。

ここ数年、ずっとこんな彼を見ていなかったことに気づいて私も泣きそうだった。

私は体が弱くて、普通には働けないかもしれないけど大切なひとを潰さないように出来る事があるならなんでもしたいと思った。

アイちゃんの知り合いがうつ病で通院していることを聞いた。

通院の日に付き添ったら、驚くほど心療内科は混んでいたそうだ。

私のまわりの多くはおそらく、うつが甘えだとは思っていない。

けど、自分がなるとも思っていないだろう。それは、怖い事に思った。

長い間調子がおかしかったのに、忙しいのが落ち着いたらと病院に行かず重病が発見された話も目にする。

その人たちは心遣いのできるひとなのだろう。

まわりに迷惑をかけまいと、自分を削っていった。

幸福の王子の話を思い出した。

生きるのが初めてだから、なんだか扱いが難しいこともあって、たまにすごく戸惑ってしまうけれど、みなさんにすごく伝えたい事がある。

しなないように生きてください。

そうしたら、できることがたくさんあるから。どうかしなないように生きてほしい。

あなたがあなたらしく、私がわたしらしく生きていける事を心から願っています。

お話を聞いてくださりありがとうございました。

それではまたお便りします!

 

円野まど